東京都が自治体初となる「コロナ債」を発行した。コロナ債の用途は新型コロナウイルス対策に限定されており、ESG (環境・社会・ガバナンス) の観点からも投資家のニーズが高い。コロナ債を買うことで社会貢献できること、「ESG債」も人気が出ていること、債券投資の意義の変化について解説したい。

「コロナ債」とは ?

「コロナ債」とは ? 個人でも投資で社会貢献・資産形成する方法
(画像=Fokussiert / stock.adobe.com)

東京都は2020年12月8日、自治体としては初となる「コロナ債」を発行した。資金用途を新型コロナウイルスへの対策に限定し、コロナ禍で経営が悪化している中小企業への融資などに充てる。

5年債で利率は0.01%、発行額は5年債としては過去最大の600億円だ。当初は300億円の計画だったが、投資家からの需要が強かったことから600億円に増額した。投資家はコロナ債を買うことで、実質的にコロナで苦しんでいる企業を支援することになる。

コロナ債は、医療現場や企業への支援などの目的から国内外で広がっている。アフリカ開発銀行、欧州投資銀行、米州開発銀行など国際機関がいち早く起債したほか、チリやインドネシアなど国家による発行も相次いでいる。

国内では、三菱UFJフィナンシャル・グループが20年6月に機関投資家向けに約600億円起債したのが初めてのコロナ債だ。同グループは9月には個人投資家向けに1500億円のコロナ債も発行している。グリーン分野、ソーシャル分野に加え、コロナ禍による経済的被害からの回復を使途としている。今後も、コロナの感染拡大やESGの観点から、起債が増える可能性が高そうだ。

拡大するESG債券市場

コロナ債のように、社会貢献する目的の債券の発行が増えている。ESGやSDGsという観念が定着してきており、「ESG債」の世界の発行額は約100兆円にまで拡大している。

ESG債とは、資金用途が環境事業向けの「グリーンボンド (環境債) 」、社会貢献事業向けの「ソーシャルボンド (社会貢献債) 」、環境・社会貢献両方向けの「サステナビリティボンド」の3種類である。

一番市場が拡大しているのがグリーンボンドだ。世界的にカーボンニュートラルのグリーン社会への取り組みが加速してきていることが背景にある。日本ではすでに日本電産やトヨタファイナンス、東北電力などが起債した。

英クライメートボンド・イニシアチブ (CBI) によると、2020年の世界での発行額は前年より35%多い3,500億ドル (約36兆円) になると予想している。

債券投資の意義に変化 ?

債券には金利 (クーポン) が付いているため、株式投資よりもリスクが少なく安全性が高い金融商品として、長期資金の分散投資に重要なアセットである。

大きく分けると、国や地方公共団体などが発行する公共債と、企業などが発行する民間債に分かれる。さらに、日本国内の発行体が国内にて円建てで発行する国内債と、発行体・発行場所・通貨のいずれかが外国の債券である外国債がある。一般的には公共債より民間債、国内債より海外債のクーポンの方が高い。

債券は、一般的には銀行預金よりクーポンが高く、安定資産であることが最大のメリットだ。デメリットとしては、発行体の信用リスクがあり発行体が倒産したりすると元本を失う可能性があること、民間債など流動性が低いものがあり途中売却が難しいものもあるということが挙げられる。

いずれにしても、コロナの影響もあって世界的に金利は低下し、現在の金利ではクーポンの魅力が薄れているのは確かだ。前述のとおり、東京都のコロナ債のクーポンは0.01%である。

ただ、日本の国民年金を運用し世界一の機関投資家といわれる年金積立金管理運用独立行政法人 (GPIF) が、2017年にESG投資の対象を株式から債券へも広げた。債券投資の意義として、新たにESGやSDGsという観念が入ってきたのだ。

GPIFの投資方針は、他の公的資金や機関投資家の運用にも大きな影響を与えるため、国内でもESG債市場が急拡大し始めた。

コロナ債は社会貢献だけでなく資産形成にもなる

個人向けのコロナ債も十分に魅力的だろう。普通預金などと比べると十分に金利は高い安全資産である。資産形成のためにもなり、社会的貢献もできるESG債は魅力がありそうだ。

(提供:大和ネクスト銀行


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