ウズベキスタンは「買い」か?~ポストコロナ時代の「グレート・ゲーム」~
(画像=PIXTA)

中央アジア、とりわけウズベキスタンが現在活況を呈している。あの内陸の地域がなぜ、と疑問に思われるかもしれないが、歴史の紐を解くと何ら不思議なことではなさそうだ。

中央アジア5か国(カザフスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタン、タジキスタン、キルギス)はユーラシア大陸の中央部に位置し、古来よりシルクロードを通じて栄えてきた。地政学の租マッキンダーが「ユーラシアの心臓部(ハートランド)を制するものは世界を制する」と言ったように、中央アジアをめぐっては絶えず各国の思惑が錯綜してきた。

19世紀から20世紀にかけては、大英帝国とロシア帝国の間で中央アジアの覇権をめぐる抗争「グレート・ゲーム」が展開された。一進一退の経緯をたどった抗争であったことから、チェスになぞらえてつけられた言葉である。

この抗争は1907年の英露協商の成立をもって終結したとされるが、その後も中央アジアをめぐっては、エネルギー資源獲得を目論んだ米国、中国、日本などが新たなプレーヤーとして参戦し、「新グレート・ゲーム」として現代まで継承されてきた。

そして近年では中国が「一帯一路」政策の下、シルクロード基金(400億ドル)やアジアインフラ投資銀行(AIIB)をつうじて経済的な取り込みを図っている。もちろん欧米諸国の進出も盛んだ。米ハイアット・ホテルズ・コーポレーションは、中央アジアへの進出を強化しており、2022年にはブハラにハイアット・リージェンシー開業を予定している(参考)。他に、リッツカールトンやヒルトン、ラディソンなどの外資系ホテルチェーンも中央アジアへ進出しており、これはすべからく西側インテリジェンスの拠点化への布石ともとれる。

(図表:1848年頃の中央アジア)

ウズベキスタンは「買い」か?~ポストコロナ時代の「グレート・ゲーム」~
(出典:Wikipedia

中央アジアの中でも国土・経済規模ともにトップクラスであるカザフスタンはかねてより注目されてきたが、近年はこれに加えウズベキスタンも活況を呈している。ウズベキスタンでは2016年9月にソ連時代末期から約27年間にわたって君臨し続けたカリモフ大統領が死去し、ミルジヨエフ首相が大統領に選出されて以来、急進的に改革(「ウズベク風ペレストロイカ」)が推進されている。ソ連崩壊後、国家による厳格な管理下にあったウズベキスタン経済だが、今では外貨規制の緩和を軸とするビジネス環境の整備が進められている(参考)。具体的には、通貨「スム」への交換性付与、不正搾取の温床になっている機関の権限の制限などで自由を取り戻しつつある(参考)。

また国家歳入の4分の1を占める綿花の栽培をめぐっては、長らく強制労働・児童労働問題が指摘されていたが、2019年には米国、国際労働機関(ILO)などから改革姿勢が評価されたという経緯もある。特に綿花生産高第2位の中国において、新疆ウイグル自治区での強制労働問題がフラクタルな形でハイライトされている現在、ウズベキスタンの綿花生産に対するマーケットの視線は無視できない(参考)。

(図表:ウズベキスタンの綿集積センター)

ウズベキスタンは「買い」か?~ポストコロナ時代の「グレート・ゲーム」~
(出典:Wikipedia

ビジネス環境の整備、人権問題の是正、さらには3,000万人以上の人口規模による人口ボーナス期にあることに鑑みても、ビジネスチャンスが拡大しつつあるウズベキスタンに対しては、もちろん日本企業も資源開発の分野で進出をすすめている。我が国との直行便がある中央アジアの都市が、カザフスタンの首都ヌルスルタン(旧称アスタナ)とウズベキスタンの首都タシュケントの2都市のみという点からもそれは明らかである。

我が国とウズベキスタンとの関係は、近年では我が国外務省が2004年以来進めている「中央アジア+日本」対話による枠組みでの協力がハイライトされているが、実はそれ以前より両国は深く関係している。第二次世界大戦後のシベリア抑留によって多くの日本人がウズベキスタンへ連行され、オペラハウス「ナヴォイ劇場」やファルハドダムなどの建設に従事させられていたのである。しかし、この時の日本人の勤勉な働きぶりや地元住民との交流の様子は今日まで伝えられており(参考)、1966年のタシュケント大地震でもこの「ナヴォイ劇場」は倒壊を免れたことから、国内では日本製品への信頼が非常に高いという(参考)。また、現在のウズベキスタン副首相(投資・対外経済関係担当)であるアブドゥハキモフ氏は一橋大学に2年間留学した経験もある親日家である点も見逃せない(参考)。

(図表:ナヴォイ劇場)

ウズベキスタンは「買い」か?~ポストコロナ時代の「グレート・ゲーム」~
(出典:Wikipedia

では最後に、ウズベキスタンでの資源開発をめぐるグレート・ゲームの現状と課題はどうなっているのか。ウズベキスタン大統領府によると、2019年時点でウズベキスタン国内には73種類の鉱物資源と約2,000の埋蔵地域があり、このうち111の埋蔵地域で14の採掘事業が実施されており、うち6つで外国資本を含む事業が展開されている(参考)。

外国資本では、ソ連時代から関係が深いロシア企業や中国企業の存在感が高い中で、日本企業の進出については、サマルカンドでのいすゞ自動車株式会社による中型バス・トラック組立事業といった投資成功事例は存在するものの、大部分はODA関連による経済協力にとどまっている(参考)。インフラ整備や資源開発というウズベキスタン経済の「コア」の部分への進出も「政治レヴェル」では合意されているものの、ビジネス・レヴェルでこれがいかに展開していくか、引き続き注視していきたい。

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株式会社原田武夫国際戦略情報研究所(IISIA)
元キャリア外交官である原田武夫が2007年に設立登記(本社:東京・丸の内)。グローバル・マクロ(国際的な資金循環)と地政学リスクの分析をベースとした予測分析シナリオを定量分析と定性分析による独自の手法で作成・公表している。それに基づく調査分析レポートはトムソン・ロイターで配信され、国内外の有力機関投資家等から定評を得ている。「パックス・ジャポニカ」の実現を掲げた独立系シンクタンクとしての活動の他、国内外有力企業に対する経営コンサルティングや社会貢献活動にも積極的に取り組んでいる。

グローバル・インテリジェンス・ユニット リサーチャー
原田 大靖 記す