東京株式市場は決算発表が一巡した5月中旬以降、反発局面になりました。
ただ、6月第1週(5/31~6/4)は日経平均株価が29,000円を回復した後に反落するなど、気迷い気分は消えていないようです。
そうした中、ようやく国内でも新型コロナウイルス向けワクチンの接種が加速し始めました。今後、ワクチン接種回数が増加することにより、米国と同様に日本でも景気回復期待が強まると予想されます。なお、日経平均株価の予想EPS(1株利益)が過去最高水準にあり、景気・企業業績の回復を織り込む動きの本格化も期待されます。
そこで今回は、株式市場で今後、本格的にポスト・コロナが織り込まれ始めた時に、大幅な反発が期待される銘柄を抽出しました。
当ページの内容につきましては、SBI証券 投資情報部長 鈴木による動画での詳しい解説も行っております。ぜひ、ご視聴ください。
日本株投資戦略
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■執筆者のプロフィール
ラジオNIKKEI(月曜日)、中部経済新聞(水曜日)、ストックボイス(木曜日)、ダイヤモンドZAIなど、定期的寄稿も多数。
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“ポスト・コロナ”で大幅反発期待の銘柄は!?
株式市場で今後、本格的にポスト・コロナが織り込まれ始めた時、どのような銘柄の反発力が大きくなりやすいのでしょうか。
株価が下がった銘柄はいずれ反発し、値上がりした銘柄は下落することが多いという経験則を生かした“リターン・リバーサル”の手法を重視するならば、ウィズ・コロナの局面で大きく下がった銘柄は、ポスト・コロナの時代に上昇しやすいと考えられます。
東京株式市場は2020/2/21(金)頃まで、新型コロナウイルスの感染拡大に対する反応が限定的でした。しかし、日経平均株価は2/25(火)に781円下げ、2/28(金)までの4営業日で計2,243円下がるなど、反応が本格化。これ以降、ウィズ・コロナの時代に突入したと考えることができます。
図表1は、2020/2/21(金)~2021/6/3(木)に株価が大きく下がったワースト10業種です。これにさらに、定性分析を加味してみます。
「電気・ガス」は金利や原油価格の上昇が逆風になりやすい業種。「医薬品」や「水産・農林業」は景気にディフェンシブな業種と考えられます。また、「建設」や「不動産」も金利上昇には弱く、東京五輪後の逆風も気がかりです。また、「繊維」は多角化が進み、ポスト・コロナの追い風は企業により異なりそうです。
ウィズ・コロナで騰落率が大きく下落した10業種から上記の6業種を除き、「鉱業」、「空運業」、「陸運業」、「石油・石炭製品」の4業種の銘柄を母集団とし、値下がり率の大きかった20銘柄をご紹介したのが図表2となります。次項では、これらの銘柄のうちから数銘柄、投資ポイントを説明します。
図表1 ウィズ・コロナの局面で騰落率が大きく下落した10業種
東証33業種名 / 株価2021/6/3 / 株価2020/2/21 / 騰落率
鉱業 / 234.81 / 305.66 / -23.2%
空運業 / 218.28 / 255.72 / -14.6%
電気・ガス業 / 359.30 / 394.95 / -9.0%>
医薬品 / 3060.26 / 3281.77 / -6.7%
陸運業 / 2046.13 / 2127.87 / -3.8%
水産・農林業 / 478.84 / 494.18 / -3.1%
不動産業 / 1526.73 / 1569.97 / -2.8%
石油・石炭製品 / 1019.73 / 1043.04 / -2.2%
繊維製品 / 603.68 / 614.40 / -1.7%
建設業 / 1147.27 / 1162.35 / -1.3%
※Bloombergデータを用いてSBI証券が作成。
※東証33業種を対象。色付き業種は、銘柄抽出の母集団とした4業種。
※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。期間:2020/2/21(金)~2021/6/3(木)
図表2 ポスト・コロナで大幅反発期待の20銘柄
コード / 銘柄 / 株価6/3 / 騰落率20/2/21~ / 銘柄短評
<1662> / 石油資源開発 / 1,998 / -27.8% / 原油相場上昇追い風も脱炭素は逆風
<9142> / 九州旅客鉄道 / 2,636 / -27.7% / 不動産・駅ビルなど非鉄道も
<9045> / 京阪ホールディングス / 3,540 / -25.5% / 大阪-京都間が主軸。流通・観光も
<1605> / INPEX / 805 / -24.7% / 資源開発最大手。低PER・低PBR
<9025> / 鴻池運輸 / 1,139 / -22.2% / 生産・流通工程の業務請負に強み
<9041> / 近鉄グループホールディングス / 4,080 / -21.5% / 関西地盤。営業距離は私鉄最大
<9021> / 西日本旅客鉄道 / 6,784 / -21.6% / 営業エリアは2府6県
<9006> / 京浜急行電鉄 / 1,469 / -18.9% / 沿線に再開発余地。羽田空港に接続
<1663> > / K&Oエナジーグループ / 1,351 / -20.0% / 関東天然瓦斯と大多喜ガスが統合
<9232> / パスコ / 1,535 / -19.1% / 航空測量。新型コロナで受注減
<9003> / 相鉄ホールディングス / 2,229 / -17.8% / 神奈川地盤。路線延長に余地
<9024> / 西武ホールディングス / 1,389 / -17.4% / 東京-埼玉地盤。プリンスホテル展開
<9074> / 日本石油輸送 / 2,596 / -16.8% / 石油輸送が主力。水素輸送に展開
<5018> / MORESCO / 1,117 / -16.6% / 自動車・HDD向け特殊潤滑油に強み
<9001> / 東武鉄道 / 2,968 / -17.0% / 関東私鉄路線最長。スカイツリー展開
<9005> / 東急 / 1,568 / -14.9% / グループ強化。渋谷再開発に注力
<9022> / 東海旅客鉄道 / 17,590 / -15.0% / 東海道新幹線が収益源。リニア投資
<9202> / ANAホールディングス / 2,755.5 / -15.1% / 国内線、アジア近距離路線に強み
<1518> / 三井松島ホールディングス / 966 / -13.7% / 海外一般炭輸入が中心
<5013> / ユシロ化学工業 / 1,176 / -12.2% / 自動車、鉄鋼、機械等に油剤
※Bloomberg、各種報道等をもとにSBI証券が作成。
※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
掲載銘柄の投資ポイント
九州旅客鉄道(9142) 九州地盤で非鉄道分野も充実
■非鉄道分野も充実
営業収益の構成比(前期・調整前)は運輸・サービスが24.6%、建設24.9%、不動産・ホテル20.7%、流通・外食13.3%となっており、非鉄道分野にも幅広く展開しています。
ただ、前期は建設以外の全分野が営業減益または赤字転落で、幅広く新型コロナウイルスの影響が及びました。ポスト・コロナでは逆に、幅広い分野での回復が期待されます。
■コロナ禍でもっとも下げた鉄道株
株価は2019/11の3,820円から2020/8の2,055円まで46.2%も下がりました。2021/3には2,884円(年初来高値)まで戻りましたが、下げ幅の47.0%の戻り率にとどまっています。当面の目標は、この戻り高値の奪回になりそうです。
なお、5/11(火)に発表のMSCI銘柄入替では、除外された29銘柄のひとつとなりました。
日足チャートでは、5/18(火)高値2,571円を超えて上昇しているため、“底値確認”となっており、勢いがつきやすい状態となっています。
※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。期間2年(週足)で表示。
※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
京阪ホールディングス(9045) 最も下げた民間鉄道株
■関西地盤の民間鉄道株の大手
大阪-京都間が主軸。営業収益の構成比(前期・消去前)は、運輸が25.2%、不動産が37.6%、流通が32.6%で、非鉄道分野が多くなっています。
2021年に入り、関西圏での新型コロナウイルスの感染拡大が深刻となり、その影響を強く受ける形になりました。
■MSCIの銘柄入替で下げが加速
ウィズ・コロナで最も下げた株であることも確かですが、2/8(月)の年初来高値5,290円から5/24(月)安値3,225円までの下落率も39.0%と大きくなっています。
5/11(火)に発表されたMSCI銘柄入替で、除外29銘柄の1つとなったことが下落を加速する要因になったとみられます。同社の他、九州旅客鉄道(9142)、京急(9006)なども除外対象となりました。
日足チャート上では、5/24(月)の年初来安値示現後は落ち着きを取り戻しつつあるようです。
※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。期間2年(週足)で表示。
※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
INPEX(1605) 国際石油開発と帝国石油が統合。資源開発最大手
■2020年初頭、原油先物価格混乱期に株価も安値
国際石油開発と帝国石油が統合して誕生した資源開発最大手企業です。
新型コロナウイルスの感染拡大により、原油先物価格が急落し、2020/4/20にWTI先物価格がマイナスになるという歴史的な出来事が起こりました。同社株価もそれに先立つ2020/3に496.4円の安値を付け、2020/10にも489円と「W底」の形となりました。
■追い風と逆風
原油価格が安定し、収益も回復傾向です。
5/13(木)には業績予想の上方修正を発表するなど、当面は業績不透明感が後退するとみられます。
今後、新型コロナウイルスワクチン接種の動きがさらに拡大し、新興国でも経済活動が復活すれば、原油価格がさらに強含み、同社株価も追い風を受けることになりそうです。
会社ベースでの予想PERは8.4倍、PBRも0.43倍(6/4現在)と割安感も強いです。
長期的には脱炭素の流れが逆風となり、低PER・低PBRの要因に繋がる可能性もありそうです。
なお、二酸化炭素の貯留・再利用技術や、水素開発の事業化など、脱水素への対応は進みつつあり、今後の展開に期待が高まります。
※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。期間2年(週足)で表示。
※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
ANA(9202) 人の動きが復活すれば恩恵も大きそう。足元は財務改善を実現
■人員輸送の激減が直撃で、前期は大赤字
国内の航空大手。国内線、アジア近距離路線に強みをもっています。
新型コロナウイルスによる人員輸送の激減は、同社業績を直撃。前期は売上高7,287億円(前期比63.1%)、営業損益は4,648億円の赤字と大きく落ち込みました。
2022/3期の会社計画では営業黒字280億円への再浮上をめざしていますが、市場コンセンサスでは1,031億円の営業赤字が残る見込みで、両者の見方が異なる点が気になるところです。
■財務状態は安定化
前期は国内外で計1億2,000万株超の公募増資(2020/12)、948.5万株の第3者割当増資(2021/1)を実施しました。 希薄化への懸念も指摘され、株価はボックス圏での推移になっています。
ただ、相次ぐ資金調達で財務状態も改善。現金預金は2020/3期末1,094億円から2021/3期末は4,647億円に増加。これに対して実質的な短期借入金は1,649億円と、資金繰りの余裕度も回復しているようです。
株価は昨年6月以降2,800~2,900円前後が壁とみられますが、ワクチン接種の進捗が追い風となり、この水準を突破できれば、上昇が加速する可能性もありそうです。
※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。期間2年(週足)で表示。
※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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鈴木英之
SBI証券 投資調査部
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