地熱発電は、再生可能エネルギーを使った発電方法の一つです。地熱発電はどのような仕組みで発電し、どんなメリットがあるのでしょうか。また、太陽光発電投資のように、個人でも投資可能なエネルギーなのか気になる人もいるでしょう。

そこで今回は、地熱発電の仕組みやメリット・デメリット、個人で投資する方法について解説します。

地熱発電とは

地熱発電の基礎知識とメリット・デメリット 個人でも投資できる?
(画像=Stockwerk-Fotodesign/stock.adobe.com)

地熱発電とは、地下に蓄えられた地熱エネルギーを蒸気や熱水などで取り出し、タービンを回して発電する方法です。

日本は火山帯に位置し、世界第3位の豊富な資源があることから、地熱は純国産エネルギーとして注目されています。日本の電源構成(2019年度)のうち、再生可能エネルギーの割合は18%で、その内訳は以下の通りです。

  • 太陽光:6.7%
  • 水力:7.7%
  • 風力:0.7%
  • バイオマス:2.6%
  • 地熱:0.3%

地熱の割合は太陽光や風力などに比べると小さく、総発電電力量もそれほど多くありません。それでも、昼夜を問わず安定して発電できるエネルギーとして、今後の普及が期待されています。

地熱発電の仕組み

地熱発電には複数の発電方式がありますが、代表的なものに「フラッシュ発電」と「バイナリー発電」があります。ここでは、それぞれの特徴について確認していきましょう。

フラッシュ発電

フラッシュ発電とは、地熱の蒸気で直接タービンを回す発電方式で、200℃以上の高温地熱流体(熱せられた高温かつ高圧の地下水)での発電に適しています。シングルフラッシュ方式と呼ばれる発電の仕組みは以下の通りです。

  1. 地熱貯留層に生産井(せいさんせい:地熱流体を採取するための井戸)を掘って地熱流体を取り出す
  2. セパレータで地熱流体を蒸気と熱水に分け、熱水は還元井で地下に戻す
  3. 蒸気でタービンを回転させて発電する
  4. 発電し終わった蒸気は水に戻し、復水器に循環して蒸気の冷却などに使用する

高圧蒸気と低圧蒸気の両方でタービンを回すダブルフラッシュ方式は、シングルフラッシュ方式よりも約20%出力が増加し、日本でも一部の発電所で採用されています。

バイナリー発電

バイナリー発電とは、地熱流体の温度が低く十分な蒸気を得られないときに、地熱流体で沸点の低い媒体(ペンタンなど)を加熱し、媒体蒸気でタービンを回して発電する方式です。現在、新エネルギーとして定義される地熱発電はバイナリー発電のものに限られています。

バイナリー発電は、水よりも沸点が低い二次媒体を使うため、低温の地熱流体での発電に適しています。

地熱発電のメリット

地熱エネルギーを使って発電する地熱発電には多くのメリットがあります。

純国産のエネルギーで資源量が豊富

日本のエネルギー自給率(2018年)は11.8%で、他の主要国に比べると低い水準となっています。海外から輸入される石油・石炭などの化石燃料に大きく依存しており、エネルギー自給率を上げるために再生可能エネルギーの主力電源化に取り組まなくてはなりません。

日本は火山帯に位置していることもあり、地熱については世界第3位の資源量を有しています。地熱は純国産のエネルギーであることから、安定した発電が可能となります。地下の地熱エネルギーを使うため、化石燃料のように枯渇する心配がなく、長期にわたって供給できるのも魅力です。

クリーンなエネルギー

地球温暖化を抑制するには、温室効果ガスの排出量を減らす必要があります。地熱発電は、発電所の建設から稼働、発電所の解体までに発生する二酸化炭素(CO2)について計算した「ライフサイクルCO2排出量」が少ない発電方法の一つです。

地熱発電の導入によってCO2排出量を減らせるため、地球温暖化の改善が期待できるクリーンなエネルギーといえるでしょう。

24時間発電できる

再生可能エネルギーは、発電量が天候に左右されるものが多くあります。例えば、太陽光発電は天候不順で日照時間が少なくなると発電量が低下します。また、風力は風の強さ、水力は降水量などの影響を受けます。

しかし、地熱は天候に左右されにくく、24時間発電が可能なエネルギーです。地下に採掘した井戸の深さは1,000~3,000mで、昼夜を問わず天然の蒸気を噴出させるため、連続して発電が行われます。

地熱発電のデメリット

地熱発電は多くのメリットがある一方で、以下のようなデメリットもあります。

調査から運転開始まで時間がかかる

地熱発電は、調査開始から開発、運転開始までに10年程度の時間がかかります。一般的な調査・開発の流れは以下の通りです。

  1. 地表調査(1~3年)
  2. 抗井掘削調査(2~3年)
  3. 事業性評価(0.5年程度)
  4. 環境アセスメント(4年程度)
  5. 抗井掘削・発電所建設(3~5年)

新規有望地点を開拓し、地質や重力、地下構造、蒸気の噴出量などについての調査・探査を行います。その後、事業性評価や環境アセスメント(環境への影響の調査)を経て、大口径の井戸の掘削や発電設備の設置が実行されます。

ただし、自然保護や温泉資源保護などの関係で地元の理解が得られなければ、調査を開始できません。地熱発電所設置に有望な場所が見つかったとしても、地元との調整が難航すれば、運転開始までにかなりの時間を要します。

開発や採掘にコストがかかる

地熱発電は、開発や採掘に大きなコストがかかるのもデメリットの一つです。地熱発電の開発は環境に影響が出る可能性があるため、入念な調査が必要で大きなコストがかかります。

また、地熱発電の開発における掘削コストは増加傾向にあります。掘削コストが増加している理由として、掘削会社の設備投資やメンテナンス費の増加、人件費の増加、熟練技術員不足による作業効率の低下などが考えられます。そのため、事業者にはより一層のコスト削減努力が求められています。

個人が地熱発電に投資する方法はある?

ここまで地熱発電の仕組みや特徴について確認してきましたが、個人が地熱発電に投資する方法はあるのでしょうか。

太陽光発電投資とは異なり、個人が地熱発電設備に直接投資するのは難しいでしょう。ただし、投資型クラウドファンディングを利用して、地熱発電の関連ファンドに投資することは可能です。クラウドファンディングは1万円程度から投資できるので、まとまったお金がなくても始めやすいでしょう。

しかし、クラウドファンディングでは、地熱発電ファンドの取扱数は少ないのが現状です。再生可能エネルギーについては太陽光発電が中心で、風力発電やバイオマス発電、水力発電の関連ファンドも多く取り扱っていますが、地熱発電のファンドはそれほど多くありません。

再生可能エネルギーへの投資を検討しているなら、地熱発電以外のエネルギーを選ぶほうがいいでしょう。ただし、地熱発電には「24時間発電可能」「資源量が豊富」といったメリットがあるため、将来的に取扱ファンドが増える可能性はあります。

純国産エネルギーではあるが要検討

地熱エネルギーでタービンを回して発電する地熱発電は、純国産エネルギーとして注目されています。しかし、開発から運転開始までに時間とコストがかかるため、総発電電力量が少なく、個人が投資する手段も少ないのが現状です。

再生可能エネルギーへの投資で安定した収益獲得を目指すなら、個人でも取り組みやすい太陽光発電投資を検討してみてはいかがでしょうか。

(提供:Renergy Online



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