女性の社会進出が著しく進み、仕事と並行して家事、育児、介護をこなすなど、八面六臂の活躍が期待される社会になっています。一方で、女性の身体自体は非常にデリケートです。毎月の生理、PMS、妊娠・出産、婦人科系疾患、やがて迎える更年期など、何かしらの不安を抱える女性が多いのが実情です。そこで今、「フェムテック」が脚光を浴びています。

関心が高まる「フェムテック」とは?

女性のQOL向上に期待。いま伸びている「フェムテック市場」とは?
(画像=Prostock-studio/stock.adobe.com)

フェムテックとは、女性(Female)とテクノロジー(Technology)を掛け合わせた造語です。女性の健康をITで支えることを指し、スマートフォンのアプリ、ウエアラブル端末といった「モバイルヘルス」やネット接続機器などを活用し、月経や妊婦の健康などを管理します。

当初は女性が自ら月経周期などを入力して追跡するモバイルアプリが主でした。それが、現在では、更年期の悩みからがんに至るまで、女性の健康にまつわるあらゆる問題を対象にした製品やサービスが登場する市場へと成長しました。

先進国では高齢化が加速しており、日本の女性の平均寿命は87.45歳に達しています。寿命が延びるということは、老化に伴う健康問題をサポートするサービスへの需要も高まるということです。例えば、女性は更年期に入ると女性ホルモンの分泌量が減り、骨粗しょう症や心臓病などのリスクが増加し、がんの可能性も高まります。

さまざまなデジタルプラットフォームがこの問題に対応しようとしており、オンライン医療や生活習慣の指導、ウエルネス製品により個々に応じた助言や知見を提供しています。将来的には中年期の女性の健康に関するより正確な知見を提供し、できる限り健やかな状態に保つようサポートする製品・サービスに大きな商機が訪れると予想されます。

アップルが研究を開始。GUや花王もフェムテックに参入

アップルは世界開発者会議WWDC2019で、2019年6月からiPhoneの「ヘルスケア」アプリとApple Watch内アプリにて、月経の周期管理機能を追加すると発表しました。アップルのような世界的企業が、これまで公言することを憚ることもあった月経を、ヘルスケアの一環として扱ったことは1つの転換点となりました。

日本企業も続々とフェムテックに参入しています。身近なところで話題となったのは、ファーストリテイリング傘下のGUが発売した「トリプルガードショーツ」です。特殊な3層構造で吸収し、生理中でもナプキンを使わずに過ごせて、洗って繰り返し使えます。

また、花王は化粧品ブランド「トワニー」を通じ、フェムテックへの取り組みを開始しました。第1弾として、月経日予測アプリ「ルナルナ」内に「トワルナキレイ相談室」を開設。肌の悩みの相談に答え、32通りの中からもっとも適したスキンケアのアドバイスを提供するものです。  

企業もフェムテックを導入する時代に

女性の働きやすさ、人生の選択肢を広げる手段として、出産の時期を自分で決められる卵子凍結への助成が、大手企業の福利厚生として注目を浴びています。しかし、日本では卵子凍結はまだ身近なものではありません。以前はがん治療による卵巣機能の低下など、医学的適応に限り認められるものでした。それ以外の女性が、将来の妊娠・出産に備えて卵子を残しておくことが容認されたのは2013年と、ごく最近のことです。

さらに、なかなか法整備が進まず、依然として自己責任のもとに実施するものとなっています。採卵、凍結作業料などの初期費用に約50万円、卵子1個につき凍結保存料は年間約1万円かかるとされており、個人にとって大きな負担になります。そこで、自治体や企業が卵子凍結費用の一部を補助する動きが出てきたものの、広まらないのが現状でした。

そういった背景から、ステルラは卵子凍結・不妊治療を福利厚生として企業に提供するサービスとして「Stokk(ストック)」を提供しています。人材不足が叫ばれる今、企業が優秀な社員を囲い込むための施策の一環として位置づけられています。

アメリカで卵子凍結費用の一部を助成することをいち早く導入したフェイスブック社が、導入後に女性社員のエンゲージメントが増加したという調査結果を発表しています。その後、アップル、グーグル、ネットフリックス、ウーバーといった巨大企業が同様の福利厚生を続々導入しました。2020年にはスカイマークが試験導入を発表しており、今後日本でも広まることが期待されています。

女性の社会進出を支えるフェムテック

フェムテックの広がりは、女性の社会進出に大きく関わってきます。月経困難症やPMSなどよる経済的損失額は6,828億円に上るとも言われ、こういった今まで可視化されにくかった課題を解決するだけでも、フェムテックの意義は大きいと考えられます。

日本のジェンダー・ギャップ指数は121位(2020年)とまだまだ低いのが現状です。これを打破するためには、個々で課題を解決するだけでなく、男性や企業側も理解する必要があります。フェムテックが広がり、これまで女性が悩んできた問題の認知が進めば、女性の能力がさらに経済や社会を活性化させることにつながると言えるでしょう。

(提供:JPRIME


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