毎月、新たに発売されるビジネス書は約500冊。いったいどの本を読めばいいのか、迷ってしまう方も多くいるかと思われます。
本稿では、読書家が集まる本の要約サイト「flier(フライヤー)」にてアクセスの多かった書籍を、金融業界のユーザーに絞って毎月ランキング形式でご紹介しております。皆様の書籍選びの参考になれば幸いです。
金融業界ランキング
第1位:『〔新版〕一瞬で大切なことを伝える技術』(三谷宏治著、三笠書房)
第2位:『生きがいについて』(神谷美恵子著、みすず書房)
第3位:『できる営業は、「これ」しかやらない』(伊庭正康著、PHP研究所)
第4位:『学び方の学び方』(バーバラ・オークレー /オラフ・シーヴェ著、宮本喜一訳、アチーブメント出版)
第5位:『マーケターのように生きろ』(井上大輔著、東洋経済新報社)
第6位:『問いの立て方』(宮野公樹著、筑摩書房)
第7位:『妄想する頭 思考する手』(暦本純一著、祥伝社)
第8位:『やり直し・間違いゼロ 絶対にミスをしない人の仕事のワザ』(鈴木真理子著、明日香出版社)
第9位:『リフレクション REFLECTION』(熊平美香著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)
第10位:『教養としてのAI講義』(メラニー・ミッチェル著、松原仁(解説)、尼丁千津子訳、日経BP)
※本の要約サイト「flier(フライヤー)」の有料会員のうち、金融業界に所属するユーザーを対象にした、2021年5月の閲覧数ランキング
「伝える」と同時に「聞き出す」
5月の第1位は『〔新版〕一瞬で大切なことを伝える技術』でした。銀行、保険の関連企業にお勤めのユーザーの間で1位となりました。
新型コロナウイルスの感染が拡大した昨年以降、金融業界でもリモートワークやオンライン会議を導入する動きが一気に加速しました。対面での営業や会議に慣れていた人ほど、パソコンの画面越しにコミュニケーションを取る難しさやもどかしさに直面しているのではないでしょうか。
本書はタイトルにある「大切なことを伝える技術」の伝授にとどまりません。自分の言いたいことを伝えつつ、相手の考えを聞き出し、意見やアイデアをさらなる高みに導こうとする、コミュニケーション全般に通ずる指南書です。
その根幹にあるのが「重要思考」という、ロジカル・シンキング(論理思考)の一手法です。ロジカル・シンキングを実践したものの挫折してしまった経験のある人にこそ、読んでいただきたい一冊です。
発売日:2021年04月15日
ジャンル:スキルアップ・キャリア、自己啓発・マインド、リーダーシップ・マネジメント、トレンド
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今も変わらぬ生の本質
第2位は半世紀以上前に初版が刊行された『生きがいについて』です。著者の神谷美恵子氏は苦しむ人、悲しむ人に終生寄り添い続けた人物であり、本書にはハンセン病療養所での体験に基づいた深い思索の営みが結実しています。
生きがいとは「腹の底から湧き出る喜び」であり、そこに理由などなく、一方で病や死によって生きがいはたやすく奪われてしまうと言います。
慈しみの果てに紡がれた至言の数々は、世紀を超え、元号が昭和、平成、令和と時を経てもなお、色あせることはありません。むしろ、コロナ禍において人との交流・接触が減り、1人で過ごす時間が増えた今こそ読まれるべき名著です。働くとは何か、生を全うするとは――自分の内面と向き合い、思い悩む時があるとすれば、本書がそっと手を差し伸べてくれることでしょう。
これをやったら「できる営業」
第3位にランクインした『できる営業は、「これ」しかやらない』は、証券関連企業にお勤めの方々の間で最も読まれました。
本書の著者は、リクルートグループの営業として全国トップ表彰を4回受賞するなど顕著な功績を上げた伊庭正康氏。「2つの提案をしてお客様を満足させ、リピートを狙う」といった実践的なノウハウのほか、ウィズコロナの現代に合わせたオンライン営業や顧客との関係構築の方法が、具体例を交えて紹介されています。
金融業界でも、感染防止の観点から対面での営業を制限している企業が多く見受けられます。コロナ禍をはじめ、変化が激しく先行きが見通しづらい現代においては、昔ながらのアプローチで営業成績を伸ばすのは難しいかもしれません。効率的かつ着実に成果を上げるために、読んでおいて損はないはずです。
市場を定義し、価値をつくりだす
ここからは、第4位以下から注目の書籍をピックアップしていきたいと思います。
第5位の『マーケターのように生きろ』は、特に証券界でよく読まれました。著者はこれまでニュージーランド航空、ユニリーバ、アウディ、ヤフーなどでマーケティングに携わり、ソフトバンクの広告部門でマーケターを務める井上大輔氏。相手が何を求めているかに思いを致し、応えるべく最善を尽くし、相手の期待に応え続ける。そうした「相手からスタートする」マーケターの視点を持つことで、周りの人から強く求められる存在になり、ひいては際立った「個」を確立できると説いています。
本書では本書ではマーケティングのステップを、市場を定義する、価値を定義する、価値をつくりだす、価値を伝える、の4つに分けています。このマーケティングの思想は仕事に限らず、人生すべてに応用できるといいます。4ステップを学んで実践すれば、きっと仕事や生活において周囲から必要とされる人間へと成長できるはずです。
発売日:2021年03月04日
ジャンル:スキルアップ・キャリア、自己啓発・マインド、マーケティング
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妄想がイノベーションを起こす
最後に取り上げるのは第7位の『妄想する頭 思考する手』です。イノベーションを起こすうえで、妄想することの大事さが切々と説かれています。
著者の暦本純一氏は、まだスマートフォンのない時代に画像を複数の指の操作で拡大縮小する技術の開発に取り組んでいたとの逸話もあるほど、規格外の思考の持ち主です。だからこそ、本書で繰り返し強調される「妄想する大切さ」に説得力があります。同氏は人にアイデアを話したとき、相手が「キョトン」とすることを好むといい、それこそ妄想をアイデアにする最初のフェーズだと説明します。
妄想を現実のものとさせていくために重要だという「やりたいことは一行でまとめよ」「アイデアには鮮度がある」といった視点も、仕事を進めるうえできっと役立つことでしょう。
コロナ禍に加え、フィンテックの浸透により、金融業界は大きな変革期を迎えています。予測不能な未来でイノベーションを起こすために必要なのは、まさに個人の妄想力なのかもしれません。
発売日:2021年02月10日
ジャンル:自己啓発・マインド、起業・イノベーション、テクノロジー・IT
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編集後記
今回の月間ランキングでは営業や社内外のコミュニケーションで生かせる実践的なスキルを紹介する著書が目立つランキング結果となりました。新型コロナウイルスでオンラインによる働き方が広まる中、環境変化に合わせて生きるビジネスパーソンの奮闘ぶりがうかがえました。6月はどのようなランキングになるのか、引き続き注視してまいります。
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