白銅は、非鉄金属専門商社の中でも高い利益率が目を引く。同社は、主力のアルミをはじめ、銅、ステンレス、プラスチックなど多様な素材を扱っている。アルミというとサッシや建材に使われると思われがちだが、実は5Gや半導体関連や液晶ディスプレイ、自動車関連や工作機械などに多く使われている。同社は取引先の多くが従業員10人〜100人規模の金属加工事業者で顧客口座数は約1万3000口座を誇る。二次店と言われる街の材料店への販売も売上に寄与している。売上総利益率は約15%。非鉄金属商社の中でも高い利益率を誇る、知られざる優良企業だ。この利益体質はどこから生まれるのか、同社の角田浩司社長に話を聞いた。
高利益体質の専門商社
合言葉は「1枚・1本・1gから」
白銅のビジネスモデルは、従来の商社機能に『切断・加工・配送サービスを組み合わせる』ハイブリッド方法だ。アルミメーカーなどから数万トン単位で原材料を仕入れ、全国のストックヤードに在庫する。それを顧客ごとの細かな要望に合わせて、あらゆる種類の金属素材を希望サイズ・形状に加工し、全国に最短翌日に配送している。
「1枚・1本・1グラムからというのが当社の基本姿勢です。他の大手商社では何トン単位でしか注文を受けないところ、当社は1オーダー平均10〜20キロ。神奈川や九州にある全国5拠点のストックヤードを兼ねた工場でお客様が使う分だけ、きめ細やかなニーズに合わせて加工し、すぐお届けできる点が強みと言えます」(角田浩司社長)
取扱製品は売上の7割を占める標準品(在庫品)と、3割を占める特注品がある。アルコニックス(3036)など非鉄金属商社大手は、この特注品分野が主戦場だが同社は3割程度だ。一方、白銅の個性が発揮されているのが標準品分野。約5300アイテム・7000トンの在庫があり、白銅独自のeコマースシステムである白銅ネットサービスでは、提携会社の商品を含めると2万アイテムのオンライン購入が可能だという。製品には、顧客からのオーダーに合わせ百分の一ミリ単位の加工・調整も可能。問合わせや注文にはネットを中心に電話、FAXですぐに対応し、見積もり件数は1日およそ2万件、成約件数は1日約1万件に上るという。
特注品ビジネスは、規模が大きく取引数は少ないが、標準品ビジネスは、規模の小さな取引が山のようにある。同社のスローガンには「ダントツの品質 ダントツのスピード ダントツのサービス 納得の価格」が掲げられている。実は、納得の価格という点が利益率を上げる重大要素の一つ。顧客のニーズに細やかに対応する代わりに、一つひとつの案件に適正な利益を乗せているのだ。リピーターを増やし、着実に利益を積み上げている。
「コスト管理も徹底しています。例えば、顧客のオーダーに合わせて切断した資材の板などは、無駄が出ないよう端材をまた別の製品に利用するなどしています。資材をどのようにすれば、有効に無駄なく使えるのかをITシステムを活用し、かなり緻密に計算・管理しています」(同氏)
■同社取り扱い製品
長年のITへの積極投資が
高収益体質の根源
同社は89年の歴史を持つ老舗非鉄金属等素材商社。近年は至る所で叫ばれているデジタルトランスフォーメーション(DX)だが、白銅は50年以上前から積極的なIT投資を続けている。東京・八丁堀の商店からスタートした同社は、顧客の要望に合わせた金属を提供するうちに加工販売を行うようになり、工場拠点を本社から切り離して神奈川県に開設した。本社と工場拠点を情報ネットワークシステムで結び、顧客情報や注文、在庫管理をリアルタイムに拠点間で共有し、クイックレスポンスを実現。在庫の1点1点ごとの情報管理や配送に至るまで、システムで情報共有し経営効率を高めるための投資を継続してきたという。
現在同社が注力しているeコマース「白銅ネットサービス」は、顧客がネット上で見積もり・注文を完結することができるシステムで、引合いの約80%、注文の30%がネット利用となっている。先述したように一日に約2万件もの見積がある同社では、オペレーターの入力ミスなどを大きく削減することが営業利益率の向上に直結する。また、顧客にもメリットが大きい。例えば前回の注文履歴を参照できたり、昼夜を問わず注文できたりと、顧客の利便性も高いため再注文に繋がりやすい。この長年作り込まれてきたITシステムこそが、他社の参入障壁の一つになっていると言える。
工場の設備投資を継続
返品発生率は3分の1に
今後の成長戦略としては、工場の更なるIT化・自動化で生産性向上を目指していくとする。工場の自動化・省人化のための設備投資の効果により、生産能力は2014年3月期と比較して1・3〜1・8倍に増強。納期遅延発生率は16分の1、返品発生率は3分の1に減少している。
「IT投資を続けることに加えて、海外展開もまだまだ伸びしろがあり強化していきたいと考えます。また、半導体関連に向けた売上は増やしていきますが、依存度比率が一分野に偏らないように自動車産業、航空機宇宙関連などへも注力しています」(同氏)
株主への配当方針については「株価向上はもちろんのこと、株主には配当で報いるのが基本と考えております。ITを含めた積極的な設備投資を続けていますが無借金経営です。コミットしているものではないですが、可能な限り配当性向40%以上を維持しています」(同氏)
(提供=青潮出版株式会社)