2020年12月、東証二部に上場を果たしたオーケーエム(6229)。創業119年の老舗バルブメーカーだ。空調設備、造船、半導体、石油、化学、鉄鋼、電力、水道、食品など、あらゆる配管の流体制御に使われるバルブの製造を行なっている。海外売上高の比率も高く、昨年は経済産業省より「2020年版グローバルニッチトップ企業100選」に選出された。近年、海運業界への環境規制強化により、同社の船舶用排ガスバルブへの需要が急増しているという。
明治35年創業の老舗
高付加価値品で高利益率実現
同社では、空気やガスなどの気体、水や油などの液体、粉体など、あらゆる流体に対応したバルブを開発・設計・製造・販売している。手がけるバルブの大きさは25㎜〜3000㎜にまで至り、組み合わせによりカスタマイズ製品を10万種類以上提供することが可能になる。中でも売上構成の83%を占めるのがバタフライバルブだ。ボディーである弁箱内で円板状の弁体を回転させることで流量調整を行なう。同製品は主に建築、造船、発電、プラントなどに納入されており、近年では特に環境規制強化により船舶への需要が急増中という。
同社は木挽鋸の製造所として明治35年に創業。その後昭和27年にバルブメーカーへと転向した。当初は玉形弁や仕切弁といった一般的なバルブから手掛け始めたが、次に普通のバルブでは処理できないような流体向けとしてナイフゲートバルブの開発に着手した。当時は、紙のパルプなど、ドロドロとした流体は普通のバルブでは詰まってしまうため、同業他社が挑戦したがらない分野だった。さらにコンクリート向けに対応するため、ピンチバルブの開発も開始。こちらも途中でコンクリートが固まってしまう性質で、他社は避けたがる分野だ。
「当社では他がやらない高リスクで難易度の高い分野に敢えて挑戦することを続けてきました。常に新しいもの、世界一のもの、ここにはないもの、スペックの高いものに挑むというのが当社の考えです」(村井米男社長)
同社ではその時々の最先端の技術や難題に挑戦することで、更に難易度の高い案件を獲得し続けてきた。例えば建築物の空調設備用バルブでは、現在国内一の超高層ビルあべのハルカスの全ての空調設備にも同社製品が使用されている。
高い技術力を裏付けるのが、技術研究所内のテストプラントである。同社では昭和50年には大規模なテスト装置を社内に設置している。現在においてもテストを外注する同業メーカーが多い中、同社では敢えて高温流体試験装置、ファイヤーセーフ試験、低温流体試験などの装置を自社で確保し、苛酷な使用条件でのシミュレーションを繰り返すことでデータを収集・解析している。失敗事例や難題の積み重ねでノウハウを獲得してきたことが同社の強みだ。開発技術を評価され、顧客の技術部門との共同開発も多い。
「基本的に売上高の5%程度を研究開発投資に充てたいと考えています。近年では納入後のテストが不要な完成品を短納期で提供できるようなノウハウのあるメーカーが求められていますから」(同氏)
多品種・小ロットの高付加価値バルブの提供により、同社は業界内でも高い営業利益率を実現している。2020年3月期の連結売上高は88億5200万円、営業利益は8億9200万円、営業利益率は10.1%。一方、同業のキッツ(6498・東1)は5.5%、中北製作所(6496・東2)は5・4%である。
船舶への需要増により
売上高は3年前から33億円増
近年では世界的にNOx(窒素酸化物)規制、SOx(硫黄酸化物)規制など、船舶への排ガス規制が強化されている。日本郵船、商船三井、川崎汽船など大手海運各社も規制に対応した施策を実施しているところだ。そのような中、同社ではドイツの船舶エンジンライセンサーMANEnergy Solutionsと規制対応バルブをいち早く共同開発するなど、業界に先駆けて同分野を開拓してきた。2万t以上の船舶のメイン推進エンジンに使用される排ガス用バルブは、世界シェア50%超を占める。
「今後も規制強化が進み、船舶用バルブの需要は更に伸びていきます。製品改良を続け、お客様のご要望に技術でお応えしていきたい」(同氏)
(提供=青潮出版株式会社)