2030年の温室効果ガス削減率46%という高い目標が掲げられ、住宅においてもより一層の環境対策が求められる時代になりました。これまでCO2削減による環境対策の住宅基準としては、ZEHが知られてきました。

しかし住宅会社の商品開発や企業PRの担当者なら、さらなる削減の深掘りや他社と差別化ができる住宅関連の環境認証を押さえるべきです。これからの時代を生き残る企業となるために、効果的な環境認証を解説します。

環境認証とビジネスの関係

住宅会社の開発担当者が押さえるべきDBJやBELSなど住宅関連の環境認証の効果
(画像=PimanKhrutmuang/stock.adobe.com)

環境認証はCO2削減への貢献度を高めるだけでなく、その取り組みを社会に示し企業評価を高め顧客に選ばれやすくなるというメリットがあります。なぜなら今後はあらゆる場面でCO2削減への取り組みが話題になり、一般消費者も企業の環境貢献に大きな関心を持つようになるからです。

また金融機関も社会から環境に対する取り組みを厳しく求められており、環境対策の甘い企業への投融資に慎重になってきています。その点でCO2削減への取り組みを客観的に示せる環境認証は、企業の信用につながります。

もはや環境への取り組みを示す認証は、企業の大小に関わらず経済活動をするうえで必須の条件とさえ言えるでしょう。

DBJGreenBuilding認証

DBJGreenBuilding認証(以降DBJ認証)は、環境や社会へ配慮された不動産とそれを所有し運営する事業者を支援する認証制度です。主に既存建物が、次の5つの視点で改善されることを評価します。

  • 建物の環境性能
  • テナント利用者の快適性
  • 多様性周辺環境への配慮
  • ステークホルダーとの協働
  • 危機に対する対応力

CO2削減への取り組みは、今後建物を所有し管理する事業者や個人にも厳しく求められるはずです。DBJ認証を得ることは、環境を含めたSDGs関連の取り組みのアピールにもなり、ESG投資など新たな資金調達も期待できます。

BELS

BELS(建築物省エネルギー性能表示制度)は、省エネ法に基づく建物の性能を第三者機関に評価してもらい表示できる制度です。建築物の販売や賃貸を行う事業者にその活用が求められています。BELSの主な評価ポイントは次の2つです。

1. 外皮性能
外皮性能とは、主に外壁や床、屋根、天井、窓といった、建物の内部と外部を分ける部分の断熱性や気密性などを数字で表します。

2. 一次エネルギー消費量
一次エネルギーとは太陽光や風力、水力など自然から得られるエネルギーです。BELSはこの一次エネルギーの消費量を評価します。

家庭からのCO2排出量は非常に多く、温室効果ガス削減目標でも重要な検討対象です。そのため省エネ性の優れた建物であると示すBELS認証は、社会的評価を大きく高める要因になるでしょう。

省エネ基準適合認定・表示制度

省エネ基準適合認定・表示制度は、住宅やオフィスビルなど既存建物の改修などで、国が定める省エネ基準を満たしたと認定し表示する制度です。認定を受けた建物は、省エネ基準適合認定マーク(eマーク)を建物や広告などに表示できます。

企業の既存建物にリフォームなどをする際に、基準を満たす工事で認定を受ければCO2削減に貢献できます。築年数がたち社屋や施設を改修する予定があるのなら、ぜひ認定に適合する工事を検討してみましょう。

CASBEE評価認証制度

CASBEE評価認証制度は、CASBEE建築における評価を審査し適正であることを第三者機関が認証する制度です。CASBEE建築とは省エネかつ環境負荷の少ない資材や設備を使い、さらに室内快適性や景観への配慮も含め総合的に行われる建物評価です。

他の評価制度も同様ですが評価の信ぴょう性や透明性は非常に大切であり、適正に評価されて初めてその意味を持ちます。CASBEE評価認証制度は、この評価自体を第三者機関が認証するという点で他の認証と大きく異なります。

環境への取り組みで投資を募るグリーンボンドなどでは、企業の掲げる環境貢献の実態が不透明であると問題になることがあります。これからはあらゆる認証が、その正当性をまた別の機関に評価してもらう時代になりつつあります。

建物の環境認証でも正当性や透明性を証明しているという意味で、CASBEE評価認証制度は先進的な取り組みになっています。

LCCM住宅認定

LCCM住宅(ライフ・サイクル・カーボン・マイナス住宅)は、建築や居住、解体、廃棄において極力CO2排出を抑える取り組みを行う住宅です。さらに太陽光発電などでエネルギーを創出し、住宅のライフサイクル=生涯におけるCO2排出をマイナスにします。

ここまで紹介してきた認証は、住宅の省エネルギー化を通じて居住時のCO2を削減する取り組みを評価しています。しかしLCCM住宅は居住時の前後を含め、さらにCO2排出マイナスをはっきり表明しています。

このためLCCM住宅は、政府の掲げる2050年のカーボンニュートラル達成に向けた住宅部門の大きな推進力になることが期待されています。さらに間近に迫った2030年の温室効果ガス削減率46%に向け、国による補助金拡大も期待されます。

適合する住宅を提供するには企業側の負担も大きいと思われますが、これからの住宅会社として強く求められる基準です。まだ対応できる住宅会社が少ないため、積極的に取り組みアピールすれば競争を勝ち抜くうえで大きなアドバンテージになるでしょう。

環境共生住宅認定

環境共生住宅とは、環境保全の観点から使うエネルギーや資源を削減し、周囲の環境と調和した健康で快適に生活できる住宅です。断熱性能向上や再生エネルギーなどの利用、耐久性などといった従来の基準に加え、周囲の環境を維持できるなどの広範囲な基準を満たす必要があります。

外構面積の緑化割合や街並みへの景観配慮、日射による冬の暖かさ確保や木陰による夏の日差しの軽減など、地域の気候や自然条件に合わせたパッシブデザインを積極的に取り入れる住まいも評価します。

環境共生住宅は建物の省エネ性能だけでなく、周辺環境の維持と調和を重視している点が他の認証と大きく異なります。CO2排出だけにとらわれず本来の環境貢献を目指す住宅として、他社との差別化に大きな効果が期待できます。

認証取得の効果を確実に生み出すには

実際に環境認証の効果を生み出すには、自社や提供できる住まいの特徴に適した認証を取得することです。認証の効果は取得しただけでは生まれず、評価された基準を最大限に活かせる状況で高品質な住宅を提供することで得られます。

例えば周囲に空間の少ない狭小地では、環境共生住宅の認証を得てもそのメリットを十分に活かせない可能性があります。あるいは建築から居住時のアフターケア、最後の解体処分まですべてをフォローできる住宅会社の方が、LCCM住宅の効果を発揮できるはずです。

自社の業態や提供できる住宅の強みに適した認証を選ぶことが、確実に効果を生み出す条件と言えます。環境貢献を確実に果たすために、しっかりと認証との相性を見極めるようにしましょう。

環境認証は生き残りへの武器になる

環境認証を得られる住宅を作るには、残念ながらコストや手間がかかるケースが大半です。しかしそこで二の足を踏んでいては、2030年に向け急加速で突き進むCO2削減の流れに乗ることはできません。

住宅は少子化によって着工数がさらに減少していくのは確実です。今後も生き残ることができる企業となるには、明確に環境貢献の姿勢を示し評価される住まいを作る必要があります。その大きな武器となる環境認証をぜひ活用するようにしましょう。

(提供:Renergy Online



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