あらゆる業界で、ESGやSDGsへの取り組みで企業が評価される流れが強まっています。そのなかには飲食業界も含まれますが、最近ではミシュランガイドまでがサステナビリティで飲食店を評価する時代になっています。

ミシュランガイドは「どのような方法でサステナビリティの取り組みを評価しているのか」「どんな飲食店がサステナビリティで評価されたのか」などを解説します。

世界中のミシュランガイドで広がる「グリーンスター」の評価

ミシュランの星付き飲食店までサステナビリティで評価される時代になった
(画像=HLPhoto/stock.adobe.com)

今、Googleの検索窓に「サステナビリティ レストラン」のキーワードを入れると膨大なレストランなどが表示されます。その検索数は550万以上。これは飲食店にも、SDGsやサステナビリティへの取り組みが求められている表れといってよいでしょう。

このような状況のなかで、ミシュランガイドが飲食店の評価に「サステナビリティの取り組み」を加えたのは当然の流れといえます。ミシュランガイドのサステナビリティ評価が始まったのは2020年1月のフランスからです。通常の星による評価とは別に、サステナブルな社会に貢献している飲食店に対して「ミシュラン グリーンスター」を付与するようになりました。

グリーンスターを付与された飲食店は、ミシュランガイドでグリーンスターを表記されることに加えて、店頭などで「サステナビリティ・エンブレム」を表示できる権利が得られます。このエンブレムを見れば、サステナブルに取り組んでいるお店かどうか一目瞭然というわけです。

ミシュランガイドの総責任者グウェンダル・プレネック氏のインタビューによると(※1)、フランスから始まったグリーンスターの評価制度は13カ国に広がり、グローバルで計144個のグリーンスターを与えられた飲食店が登場しています。
※1:日経ESG(2021年2月26日付)上でのインタビュー

ちなみに、グリーンスターは3つ星評価方式ではありません。「緑のクローバーマークが付与されるか、されないか」だけの評価になります。

取得数の少ないグリーンスターのメディアへのPR効果は抜群

日本国内のミシュランガイドで初めてグリーンスターが採用されたのは2020年10月に発売された『ミシュランガイド京都・大阪+岡山 2021』からです。その後、グリーンスターは2020年12月に発売された『ミシュランガイド東京 2021』でも採用されています。

グリーンスターの評価指針について、日本ミシュランタイヤ公式サイトでは次の項目を挙げています。

  • フードロスの削減
  • 森林活性化に寄与
  • 環境に配慮する生産者の支援
  • 絶滅危惧種の保護 など

『ミシュランガイド東京 2021』でグリーンスターが付与された飲食店は全掲載店480店中わずか計6店舗。同じく『ミシュランガイド京都・大阪+岡山 2021』でグリーンスターが付与された飲食店は全掲載店204店中わずか計8店舗しかありません。

ミシュランガイドのグリーンスターを取得した飲食店は、従来の星評価の「価値の高い料理とサービス」に加えて、「サステナビリティを積極的に推進している飲食店」のお墨付きを得られます。

今後の動向として間違いないのは、ミシュランガイドがグリーンスターの付与を始めたことで、サステナビリティに本格的に取り組む高級レストランや高級和食店などが急増することです。なぜなら、SDGsやESGの意識が急速に高まるなか、グリーンスターを付与された飲食店へのメディア注目度と集客力は抜群だからです。

一例では、FNN系列のニュース番組『Live News α』では、渋谷にあるジビエ料理のラチュレが『ミシュランガイド東京 2021』でグリーンスターを付与されたされたことを大きく報じています。ミシュランガイドの星付き飲食店というだけでは、数多くの飲食店があるためPR効果は限定的です。グリーンスターは付与されている店舗数が圧倒的に少ないため、メディアへのPR効果は絶大です。

2021年版のミシュランガイドでグリーンスターを獲得した飲食店一覧

『ミシュランガイド京都・大阪+岡山 2021』と『ミシュランガイド東京 2021』でグリーンスターを獲得したのは以下の飲食店です(ミシュランガイド日本公式サイトにもとづく店舗)。

店名/カテゴリ星数所在地
シンシア
[フランス料理]
1つ星東京都渋谷区千駄ヶ谷3-7-13
NARISAWA
[イノベーティブ]
2つ星東京都港区南青山2-6-15
フロリレージュ
[フランス料理]
2つ星東京都渋谷区神宮前2-5-4
レフェルヴェソンス
[フランス料理]
3つ星東京都港区西麻布2-26-4
ラチュレ
[フランス料理]
1つ星東京都渋谷区渋谷2-2-2
カンテサンス
[フランス料理]
3つ星東京都品川区北品川6-7-29
美山荘
[日本料理]
2つ星京都府左京区花脊原地町375
草喰 なかひがし
[日本料理]
2つ星京都府左京区浄土寺石橋町32-3

[日本料理]
ビブグルマン※2京都府東山区五軒町106-13
高台寺 和久傳
[日本料理]
2つ星京都府東山区鷲尾町512
室町 和久傳
[日本料理]
1つ星京都府中京区丸木材木町679
柏屋
[日本料理]
3つ星大阪府吹田市千里山西2-5-18
寺田
[日本料理]
1つ星大阪府大阪市天王寺区玉造元町2-3
※2:ビブグルマンとは、「価格以上の満足感が得られる料理を提供する飲食店」の評価です。

グリーンスター飲食店の例/フードロスに取り組む「フロリレージュ」

渋谷区神宮前にある2つ星のフランス料理店「フロリレージュ」は、フードロスに着目して食の持続可能性に取り組んでいることが評価されて『ミシュランガイド東京 2021』でグリーンスターを付与されました。

フロリレージュの看板メニューの名は「サステナビリティ牛」。これは経産牛の肉をいったん干し肉に加工し、それを“しゃぶしゃぶ”のように仕上げて、くず野菜のスープなどをかけたメニューです。フードロス問題に着目するシェフ、川手寛康さんらしいメッセージ性のある逸品といえるでしょう。

ちなみに、経産牛とは出産したあとの牛のことです。食材という観点では味が落ちて無価値と思われてきましたが、川手シェフの手によって人気メニューとなっています。もともとフランス料理は食材を使い切るという伝統があります。「ヴァンサンカン」のインタビューで川手シェフは「フレンチはフードロスと無縁といってもいい現場なんですよ」と解説しています。

グリーンスターには否定的な意見も……今後、定着するかに注目

最後に、ミシュランガイドのグリーンスターには否定的な意見も一部あり、議論を呼んでいることにも触れておきたいと思います。

グリーンスターに否定的な立場をとる人物のひとりがコペンハーゲンの一つ星レストラン「レレ」のオーナーシェフのクリスチャン・プリージ氏です。彼はグリーンスターを獲得できたにも関わらずグリーンスターに否定的な立場をとっています。

未来をテーマにした総合メディア「WIRED」によると、プリージ氏がグリーンスターを批判する理由は、その調査方法にあるとのことです。電話1本で事実確認を行い、重要といえるような質問も一切なかったにも関わらずグリーンスターを与えられたことに彼は不信感を持っています。

通常ミシュランでは、対象の飲食店を調査員が複数回に渡って訪れて評価するといわれています。この評価方法でさえも「透明性がない」との意見が聞かれます。グリーンスターではおおまかな評価項目は挙げられていますが、それ以上の指針は示されていません。そのため、「本当に信頼性があるのか?」という意見は出やすいでしょう。

今後、グリーンスターという評価制度がミシュランガイドの重要な指標として定着するのか。それとも、一時的なトレンドで終わってしまうのか。見守っていきましょう。

(提供:Renergy Online



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