中国、G7に宣戦布告「断固として戦う」
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2021年6月11~13日にわたり英国で開催されたG7(Group of Seven/フランス、アメリカ、イギリス、ドイツ、日本、イタリア、カナダで構成)首脳会談は、台湾情勢や新疆ウイグル自治区の人権問題、香港の自由・民主主義の危機についての言及、サプライチェーンにおける脱中国依存計画、新型コロナウイルス起源の追加調査など、米国を主導に中国へのけん制が目立つ内容となった。

これに対し中国は、「G7が世界を支配する時代は終わった」と宣戦布告した。自国へのさらなる包囲網拡大に猛反発しており、今後の関係諸国への影響が注視される。

G7、対中包囲網強化を宣言

13日に公表された首脳宣言の『グローバルな責任および国際的な行動』という項目の中には、「中国に対し、特に新疆との関係における人権および基本的自由の尊重、また、英中共同声明および香港基本法に明記された香港における人権、自由および高度の自治の尊重を求めること等により、我々(G7)の価値を促進する」「台湾海峡の平和および安定の重要性を強調し、両岸問題の平和的な解決を促す」など、中国への直接的な呼びかけが盛り込まれた。

4月の『日米共同声明』にも同様の「懸念」が盛り込まれていたことなどもあり、中国は他国の「内政干渉」に警鐘を鳴らし続けている。今回の宣言はG7国が一丸となり、対中包囲網をより強化する意思を改めて中国へ伝える役割を果たした。

また、会談では、パンデミック終息の目標を2022年に設定し、再発予防に向けて新型コロナウイルスの起源を徹底的に追及する意向で一致した。これに関しては武漢起源説が再燃しており、米国を筆頭に主要国やWHO(世界保健機関)などの国際機関が、現地再訪を含む再調査方針を固めている。世界で初めて新型コロナが公式に確認された国として、中国の協力責任を問う構えだ。

国際インフラ構想で「一帯一路」に対抗

もう一つの興味深い動きが、G7の国際インフラ構想「より良い世界の再建(Build Back Better World /B3W)」である。これは、アジア・欧州・アフリカにまたがる経済圏構想「一帯一路イニシアチブ(BRI)」で世界の勢力図強化を図る中国に対し、G7が打ち出した対抗策の一つだ。

習近平国家主席が2013年に着手したBRIは、2021年1月の時点で140カ国が参加する巨大プロジェクトに成長を遂げた。しかし、不透明な投資が原因で一部の発展途上国が債務漬けになるなど、「実際は支援対象国の経済発展の足かせとなっている」との指摘もある。また、BRIの起点である新疆ウイグル自治区の少数民族弾圧の要因の一つとして非難されるなど、近年、急速に評価が冷え込んでいる。

B3Wはサプライチェーンにおける脱中国依存を目指し、発展途上国の広範囲なインフラに投資することで、透明性の高い「グリーンルート」を構築する点がBRIと一線を画す。この中には半導体や電気自動車(EV)のバッテリー製造など、デジタル分野への投資も含まれる。

対応にはG7各国温度差あり

いずれのG7加盟国も、バイデン大統領が掲げる対中国強硬路線には合意したが、「どのような手段で、どの程度圧力をかけるか」という点については温度差があるようだ。特に、一帯一路の参加国であるイタリアや、中国が最大の貿易相手国であるドイツ、そして米国に後押しされる形で重い腰を上げた日本は、「米国ほど強硬な姿勢を示したくない」というのが本音だろう。

英国は対中国強硬路線を支持しているものの、国内のビジネスセクターからはすでに反発の声が上がっている。国際貿易省のグレアム・スチュアート輸出大臣が主張するように、中国が英国経済にもたらすチャンスは他の市場とは比較にならない。

のろしは上げたものの、今一つ足並みそろわぬG7を、「中国がパートナーか競争相手か、あるいは安全保障上の脅威かという点について、G7内では意見が完全に一致していないようだ」と、BBCの政治記者ロブ・ワトソン氏は評した。

中国、G7に宣戦布告「断固として戦う」

G7内部の葛藤を横目に、中国は宣言の翌日(14日)、G7に対する凄まじい非難と警告を開始した。

在英中国大使館の広報官は「少数の国々(G7)が世界の運命を決める時代は終わった」「米国や一部の国の(中国に対する)“悪意ある意図”を反映している」「中国に向けられたあらゆる種類の不正や侵害に対して断固として戦う」などと猛反発。G7に対して「人為的に対立や摩擦を生み出す代わりに、国際協力の促進に役立つことをもっとすべきだ」と憤慨を露わにした。

さらに、新型コロナウイルス起源の追加調査については、「政治的な見解を入れるべきではない」と言及している。「中国は平和を愛する国であり、協力を提唱しているが、忍耐にも限界がある」などと警告した。

対G7感情は民間にも広がり、上海のポータルサイト・ブログ運営企業、新浪公司のミニブログサイト「Weibo(新浪微博)」では、『最後のG7』なる風刺画が話題を呼んだ。これはレオナルド・ダヴィンチの名画『最後の晩餐』のパロディーで、G7加盟国とインドとオーストラリアの国旗を着用した9匹の動物が、食卓を囲む風景が描かれている。食卓の中央に陣取る白鷲(米)の話に、ライオン(英)や日本(犬)、黒鷲(独)、雄鶏(仏)などが身を乗り出すように耳を傾けているという、なかなか皮肉たっぷりな描写である。

現状は威嚇段階? 今後の行方を注視

今後の行方が注視されるところだが、現状から判断する限り、中国とG7の間には緊迫した空気が張り詰めているものの、一触即発という段階には達していないようだ。あくまでお互いに威嚇し合っているという印象を受ける。

中国が先手を打って攻撃を仕掛ける、というシナリオはあまり現実的ではない。米・英・仏・加が圧力を加えようとしても、伊や日、独がブレーキをかけるという構図が、少なくとも当面は続くものと予想される。しかし、中国が特に敏感になっている台湾やウイグル自治区問題が悪化すれば、米国に引きずられる形で他のG7国が加勢に追い込まれるシナリオも想定されるだろう。

文・アレン琴子(オランダ在住のフリーライター)

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