本格始動した渋谷駅再開発プロジェクトの全貌

渋谷駅周辺の再開発は、渋谷区による「渋谷駅街区土地区画整理事業」にその大部分の基礎を置いています。開発主体である東急電鉄< 9005 >によれば、再開発計画は4つの区画から成っています。まず、再開発の中核とも言えるのが東棟を含む「渋谷駅街区」です。国道246号線の南側で旧東横線の線路跡地がメインとなる「渋谷駅南街区」では、渋谷川を再生して川沿いに約600 mに及ぶ緑の遊歩道と広場が整備されます。大都市を流れる河川の再開発については、韓国のイ・ミョンバク大統領がソウル市長時代に高速道路の地下に埋設されていた清渓川を復活させて水辺の憩いの地として整備して好評を博したことが、世界的に一つのモデルとなっています。

2015年に閉館する東急プラザ渋谷の建替えが中心の「道玄坂一丁目駅前地区」では、2018年度に開業する地上17階建てビルの1階部分にバスターミナルが入居します。これは、かつてマークシティ開業前に入っていた東急バスの発着場を復活させるものです。さらに、空港リムジンバスの発着場を含むことから、外国人観光客向けの支援施設も計画されています。「渋谷駅街区土地区画整理事業」には含まれていませんが、駅南西部の「渋谷駅桜丘口地区」では住宅等の都市基盤機能が補完される予定です。


「渋谷駅街区」と東棟の機能

「渋谷駅街区」では、東京急行電鉄、東日本旅客鉄道< 9020 >、東京地下鉄の3社が事業主体となって、東棟に加えて現在のJR渋谷駅上に中央棟、その隣で現在の東急プラザ渋谷の向かい側に西棟を建設して、相互に繋げてゆきます。中央棟は地上10階、地下2階建てで高さは61m、西棟は地上13階建、地下5階てで高さは76mを予定しています。駅の中心に建つ予定のこれら3棟のうち、地上46階建ての東棟がいかに際立った存在かお分かりになると思います。

東棟には、14階までの低層部に延べ面積3万平方メートルの大規模商業施設が入居する予定です。さらに中央棟と西棟を含むと約7万平方メートルの大規模商業施設が出現することになります。これに備えて東急百貨店東館が2013年3月に営業を終了し解体されています。東棟の16階から上の高層部はオフィスが入居します。とくに、オフィスの賃貸面積は渋谷駅周辺では最大規模になる見込みです。さらに、15階にコンテンツ産業などの情報交換を促す「交流施設」を設けて、渋谷周辺で集積しつつあるクリエイティブコンテンツ系企業が集う結節点となることを目指しています。


競争力を持ちうる渋谷駅再開発地区と東棟

東京都心では、1990年代後半から森ビルによる六本木ヒルズや、三菱地所が手掛けた丸の内・大手町地区などの大規模再開発が続いています。こうした都心再開発では、オフィスビルが中心で、そのたびに都内の他のオフィス街の入居率が下がるなど、テナント企業の取り合いの様相を呈してきました。さらに、JR田町駅~品川駅間にある田町車両センター跡地に2020年を目途に新駅とオフィスビルの開発が決まるなど、再開発地区の競争は激化してゆくでしょう。

その中で東棟をシンボルタワーとする渋谷駅再開発地区は、十分に競争力を持ちうると考えられます。これは、他の再開発地区と比較して、オフィスビル部分に地元に集積があるコンテンツ産業を核とする特色を打ち出しているうえに、圧倒的な広さの商業施設を背景としたエンターテイメントの要素や、憩いの場としてのユニークな水辺の整備が強みとなるためです。ただ、その競争力を維持するには、言わば日本のエスタブリッシュメントの街である丸の内・大手町と対局を成すような、常に最先端の新しいものを展開してゆく街であることが求められるでしょう。中核となる東棟には、商業施設部分ではどこにでも出店しているようなチェーン店だけではなく他にはない商品を扱う店舗を、オフィスビル部分にも特色を打ち出すことができる個性がある企業を誘致することが望まれます。

地価をみると、再開発に対する期待感が表れています。渋谷駅に最も近い地点である渋谷区宇田川町23-3の公示地価は、平方メートル当たり1,520万円、前年比6.2%の上昇で渋谷区平均の4.0%を上回り、渋谷区の公示地価では最も高い上昇率を示しています。こうした、再開発を反映して周囲をリードする渋谷駅の地価上昇は、景気が堅調に推移すれば、今後も続くことになるでしょう。

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