新型コロナウイルスの変異株が拡大傾向にあり、経済活動の正常化に鈍化懸念が漂う展開となっています。

そうした中、外食大手のサイゼリヤ(7581)の株価が7/15(木)に急反発し、一部で話題になりました。営業活動の制限など厳しい環境が続いていますが、同社の決算発表終了を投資のタイミングとみた投資家が多かったようです。

こうしたサイゼリヤの値動きは“リベンジ消費関連銘柄”への物色本格化に向けた、株式市場の“号砲”になるかもしれません。経済再開への期待が一層強まれば、同関連銘柄が人気化する可能性は十分にあります。

当ページの内容につきましては、SBI証券 投資情報部長 鈴木による動画での詳しい解説も行っております。ぜひ、ご視聴ください。

日本株投資戦略
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■執筆者のプロフィール

鈴木英之
鈴木 英之
SBI証券 投資情報部長 
ラジオNIKKEI(月曜日)、中部経済新聞(水曜日)、ストックボイス(木曜日)、ダイヤモンドZAIなど、定期的寄稿も多数。
・出身 東京(下町)生まれ埼玉育ち
・趣味 ハロプロの応援と旅行(乗り鉄)
・特技 どこでもいつでも寝れます
・好きな食べ物 サイゼリヤのごはん

サイゼリヤの急反発は“リベンジ消費関連銘柄”物色の“号砲”か

日本株投資戦略,上方修正期待銘柄
(画像=PIXTA)

サイゼリヤ(7581)が7/14(水)、2021/8期・第3四半期の決算発表および業績予想修正を発表しました。

通期の予想経常利益は協力金の上積み等で上方修正されました。一方、本業のもうけを示す予想営業損益は下方修正されて赤字が拡大。厳しい事業環境を反映した発表内容となりました。

しかし、決算発表翌日7/15(木)のサイゼリヤ株は一時242円高となり、終値も134円高と急反発。

先行きに対し、最悪期脱出が意識され、同社の業績予想も改善される可能性があることから、多くの投資家が今回の業績下方修正を「悪材料出尽くし」と捉えた可能性もあるようです。なお、同社が次に決算発表を行うのは10月と予想されます。その頃には国内でのビッグイベントが終わり、計画上では約2億2,000万回(ファイザー製1億7千万回、モデルナ製5千万回)のワクチン接種が進捗している予定です。経済活動の再開が本格化している可能性は十分にあります。

BIGLOBEが6/15(火)に結果を発表した「新型コロナウイルスワクチン接種後の生活に関する調査」(第2弾)では、85%の人々が「ワクチン接種後は消費に対する意欲が強まる」と回答。また、「新型コロナワクチン接種後にしたいこと」で、国内旅行(51.4%)や外食(43.8%)が上位でした。こうしたことからも、抑圧されていた気持ちが解放され、旅行、外食、ショッピングなどへの“リベンジ消費”が盛り上がることが期待されます。

そこで今回は、“リベンジ消費”に関連する銘柄をご紹介します。

SBI証券のテーマ株投資支援ツールである「テーマキラー!」でも、この“リベンジ消費”を「今月の新着テーマ」として、ご紹介しています。

銘柄の抽出については、大きく以下の2つの視点から選びました。

(1)「テーマキラー!」の他、各種報道等で“リベンジ消費”関連銘柄であること
(2)以下の条件を満たす銘柄であること
   ・東証上場銘柄
   ・時価総額250億円以上
   ・東証33業種で「小売」または、「サービス」、「陸運」、「海運」に属し、“リベンジ消費”に関連するとみなされる銘柄
   ・流動比率は150%以上

(1)または(2)を満たす銘柄で、2019年以降に付けた高値から30%超下落した銘柄を、株価下落順に並べたものが図表1です。同じサブセクター(鉄道、外食など東証33業種よりも詳細な区分)の銘柄は、株価下落率の大きい2銘柄を抽出しました。なお、各銘柄の投資チャンスとしては、東京五輪の開催時期や、決算発表・業績修正後等が有力であると考えられます。

“リベンジ消費”関連銘柄
(画像=SBI証券)

図表1 “リベンジ消費”関連銘柄
コード / 銘柄 / 株価(7/15) / 2019年以降高値比 / 銘柄概要投資ポイント
<8219> / 青山商事 / 727 / -74.3% / 紳士服。優待制度あり
<8185> / チヨダ / 887 / -54.2% / 靴専門店を全国に展開
<2440> / ぐるなび / 524 / -52.4% / 外食全般の需要回復に期待
<9716> / 乃村工藝社 / 857 / -48.7% / 商業施設の企画・施工回復期待
<2418> / ツカダ・グローバルホールディングス / 357 / -44.0% / 結婚式場。邸宅風施設。
<9201> / 日本航空 / 2,384 / -42.2% / 業界2位。路線別採算管理
<9006> / 京浜急行電鉄 / 1,357 / -40.9% / 羽田空港等と都心をつなぐ
<9045> / 京阪ホールディングス / 3,265 / -40.6% / 京都と大阪をつなぐ
<9202> / ANAホールディングス / 2,622 / -37.2% / 業界トップ。2020年に資金調達
<9743> / 丹青社 / 866 / -36.9% / 商業施設の企画・施工回復期待
<4337> / ぴあ / 3,320 / -33.3% / チケット販売の回復に期待
<4680> / ラウンドワン / 1,223 / -30.1% / 複合融合施設の回復に期待

※Bloomberg、会社公表データをもとにSBI証券が作成。
※「2019年以降高値比」は、2019年以降の高値に対する騰落率。
※7/16(金)時点で継続企業の疑義が生じている企業については記載しておりません。
※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

抽出銘柄の投資ポイント

この項では、図表1で抽出した銘柄について、同じサブセクターに属する銘柄との比較を交えながらご紹介します。

青山商事(8219) 新型コロナウイルスの影響により逆風となった小売業の中でも株価下落率は大きい

青山商事(8219)
(画像=SBI証券)

期間:2018/7/23~2021/7/16(週足)

■テレワークの普及も影響し、大きく下落

紳士服専門店最大手で、郊外や都心に700店余りを展開しています。新型コロナウイルスの流行拡大で営業制限を余儀なくされた他、テレワークの普及で、紳士服需要自体が減少したものと考えられます。

営業損益は2020/3期黒字8億円(前期比94%減)から、2021/3期は赤字144億円まで悪化。 株価は2019/2の2,829円から2020/11/30安値446円まで、84%も下落。その後は業績底打ちを模索する動きから、5/14(金)決算発表後の5/17(月)には970円まで戻しています。それでもPBRは0.2倍台で、売り込まれた状態が続いています。 2022/3期は売上高1,825億円(前期比13%増)、営業利益40億円(黒字転換)を計画。月次情報の開示では、4~6月の全店売上高は前年比38%増ですが、6月は12.3%減に転じるなど、足元は再び厳しい状態です。

■テレワークの普及も影響し、大きく下落

小売業はドラッグストアやホームセンター、食品スーパーなど、新型コロナウイルスの感染拡大が追い風になったサブセクターと、逆風になった銘柄が混在しています。

(例)新型コロナウイルスの影響により逆風となった小売業
(画像=SBI証券)

(例)新型コロナウイルスの影響により逆風となった小売業
コード / 銘柄名 / 株価(7/15) / 下落率
<8219> / 青山商事 / 727 / -74.3%
<8185> / チヨダ / 887 / -54.2%
<9990> / サックスバー ホールディングス / 607 / -48.3%
<3415> / TOKYO BASE / 657 / -41.0%
<7416> / はるやまホールディングス / 640 / -29.7%
<7085> / カーブスホールディングス / 922 / -14.0%
<7581> / サイゼリヤ / 2,795 / -3.70%

※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
※「下落率」は2019年以降の高値に対する下落率。
※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

ぐるなび(2440) 外食産業の発展が前提だけに厳しい現状

ぐるなび(2440)
(画像=SBI証券)

期間:2018/7/23~2021/7/16(週足)

■グルメサイトを運営~外食産業の苦境が強い逆風

サービス業において、2019年以降の高値からの株価下落率が最も大きかった同社は、グルメサイトの運営を行っています。飲食店から受け取る販促支援料が中心業務になっています。外食産業の発展が前提条件になるビジネスモデルであり、外食産業全般に打撃が広がる現状は厳しい環境と言えそうです。

毎期着実に利益を上げてきましたが、2021/3期は74億円の営業赤字を計上するなど、業績が悪化しました。今期も29億円の営業赤字を計画しており、事業環境は楽観視できない状態です。

2018年7月に楽天と業務資本提携を発表。現在、楽天グループが株式を14.4%保有する筆頭株主になっています。これにより、ぐるなびの資本は増強され、楽天グループの外食関連事業集約など、将来の拡大に向けた動きについて今後注目したいところです。

前期末の株主資本比率は68%、流動比率は289%で、財務体質上の不安は少ないように見受けられます。

■外食産業の明暗を分けた「コロナ禍」

外食産業は総じて業績悪に苦しむ企業が目立ちました。

そうした中、株価面では冒頭に紹介したサイゼリヤ(7581)は、7/15(木)には2019年9月の高値を上回り、一時2,903円と年初来高値を更新し、株価面では最も強い外食銘柄のひとつとなりました。

なお、業績面では王将フード(9936)とコメダホールディング(3543)が「勝ち組」と言えるほど、業績が堅調でした。

王将フード(9936)は、2021/3期に前期比21%減となったものの、60億円もの営業利益を確保。月次ベースでは売上高が過去最高となるまで回復しました。テイクアウト需要を取り込めたことや、社員教育でモチベーションを高めるなどの施策が効果を収めたようです。

コメダホールディングス(3543)の業績も好調です。2021/2期は55億円(前期比30%減)の営業利益を確保。ライバル各社の前期営業損益は、ドトール・日レスホールディングス(3087)が43億円の赤字、サンマルクホールディングス(3395)が40億円の赤字であり、明暗が大きく分かれました。

販管費率の高い外食企業が多い中、コメダホールディングス(3543)はフランチャイズ方式で、販管費率を抑えた戦略が強みになっているようです。

(例)主な外食・レストランの株価推移
(画像=SBI証券)

(例)主な外食・レストランの株価推移
コード / 銘柄名 / 株価(7/15) / 下落率
<2440> / ぐるなび / 524 / -52.4%
<2764> / ひらまつ / 195 / -51.4%
<2418> / ツカダ・グローバルホールディングス / 357 / -44.0%
<3547> / 串カツ田中ホールディングス / 1,820 / -42.6%
<3395> / サンマルクホールディングス / 1,600 / -39.2%
<9979> / 大庄 / 1,035 / -39.0%
<9936> / 王将フードサービス / 5,760 / -25.1%
<8163> / SRSホールディングス / 812 / -24.5%
<3087> / ドトール・日レスホールディングス / 1,775 / -21.3%
<7611> / ハイデイ日高 / 1,839 / -19.1%
<3075> / 銚子丸 / 1,138 / -18.3%
<2695> / くら寿司 / 4,105 / -12.9%
<3097> / 物語コーポレーション / 7,380 / -8.9%
<3543> / コメダホールディングス / 2,121 / -7.6%
<3397> / トリドールホールディングス / 1,910 / -4.0%
<7581> / サイゼリヤ / 2,795 / -3.7%

※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
※「下落率」は2019年以降の高値に対する下落率。
※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

京浜急行電鉄(9006) 陸と空、ヒトの流れの減少が総じて強く影響を及ぼす

京浜急行電鉄(9006)
(画像=SBI証券)

期間:2018/7/23~2021/7/16(週足)

■京浜急行(9006)は「人の流れの減少」が総じて影響

首都圏私鉄大手の一角を占めています。

品川を起点に、横浜や羽田空港、三浦半島を結んでいます。また、都営浅草線をはさんで京成電鉄(9009)と直通運転。成田空港と羽田空港をつなげる存在になっています。

その意味では陸運需要のみならず、航空機需要の減少も影響したといえます。

他の鉄道同様、事業内容は鉄道事業にとどまらず、不動産事業、レジャー・サービス事業、流通事業等にも進出しています。前期はこの内、レジャー・サービス事業が営業赤字になった他、全部門が営業減益となり、全社では182億円の営業赤字に落ち込みました。

今期は小幅な業績改善を見込み、営業損益は34億円の黒字に転換する見込みです。

■株主優待や配当の活用も

主要鉄道企業の中では、京浜急行電鉄(9006)の下落率が大きくなりました。

電鉄株については特に大きな業績の差異が生じにくいこともあり、“リベンジ消費”を中心に考えるのであれば、単純に下落率の大きかった銘柄を優先するのも有効であると考えられます。

しかし、やや中長期的なスタンスでの投資を検討するならば、株主優待や配当のメリットを享受しながら、株価回復を待つという戦略もありそうです。その意味では、投資家が住む地元の鉄道会社など、優待の活用を検討してよいかもしれません。

予想配当利回りについては、鉄道各社間で差が出ています。予想配当利回りを重視するならば、JR系各社の方が総じて高めになっています。

特に九州旅客鉄道(9142)は、予想配当利回り(会社予想)が3%台と高めになっています。

(例)主な陸運(鉄道)・空運企業の株価推移(例)
(画像=SBI証券)

(例)主な陸運(鉄道)・空運企業の株価推移(例)
コード / 銘柄名 / 株価(7/15) / 下落率
陸運(鉄道) /   /   /  
<9006> / 京浜急行電鉄 / 1,357 / -40.9%
<9045> / 京阪ホールディングス / 3,265 / -40.6%
<9041> / 近鉄グループホールディングス / 3,870 / -39.8%
<9022> / 東海旅客鉄道 / 16,385 / -37.6%
<9021> / 西日本旅客鉄道 / 6,228 / -37.6%
<9142> / 九州旅客鉄道 / 2,551 / -35.6%
<9005> / 東急 / 1,530 / -30.8%
<9001> / 東武鉄道 / 2,856 / -30.8%
<9042> / 阪急阪神HD / 3,405 / -29.9%
<9020> / 東日本海旅客鉄道 / 7,846 / -28.3%
<9008> / 京王電鉄 / 6,400 / -27.4%
<9009> / 京成電鉄 / 3,445 / -26.0%
<9044> / 南海電気鉄道 / 2,356 / -25.4%
<9010> / 富士急行 / 5,110 / -21.4%
<9007> / 小田急電鉄 / 2,760 / -20.8%
空運 /   /   /  
<9201> / 日本航空 / 2,384 / -42.2%
<9202> / ANAホールディングス / 2,622 / -37.2%

※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
※「下落率」は2019年以降の高値に対する下落率。
※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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鈴木英之
SBI証券 投資調査部

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