投資の世界では、その時々のトレンドが相場に大きな影響を及ぼす。2020年はコロナウイルスのパンデミックで市場が乱高下した1年だったが、年末ごろから相場で盛り上がりを見せているのが「脱炭素化」である。
「脱炭素化」とは ?
近年、気候変動の影響から日本では大雨などによる自然災害が相次ぎ、世界に目を見けると農作物の不作が発生している。我々の日常生活にも深刻な被害をもたらす気候変動は、石油や石炭、天然ガスなどの化石燃料を燃焼した際に、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスが発生し、地球温暖化が進行することで引き起こされる。
脱炭素化とは、化石燃料への依存から脱却し、炭素排出ゼロの状態を目指すことだ。
なぜ脱炭素化が相場で盛り上がりを見せているのか。
2015年には地球温暖化を防止するため国際的に取り組む「パリ協定」が採択されるなど、環境問題は世界共通の課題という認識はされていた。しかし、2020年末ごろから2021年初にかけて、脱炭素化への注目が一気に高まり、関連するビジネスの株価が上昇するなど、相場で盛り上がりを見せている。
その契機として、2020年10月の臨時国会において、菅首相が2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする「2050年カーボンニュートラル」を宣言したことが挙げられる。国の方針に歩調を合わせるように、全国でも191の自治体が同様の目標を掲げるほか、民間企業にも同様の動きがみられる。
気候変動は日本だけで解決できる課題ではなく、欧州連合 (EU) も日本と同様に2050年カーボンニュートラルを掲げた。日本、EUのほかおよそ120ヵ国が同様の目標を宣言しており、脱炭素化は世界的な潮流である。
「脱炭素化」の投資先とは
脱炭素化を推進するため、各国は環境に配慮したビジネスへの投資を強化している。米国のバイデン大統領は、大統領選挙時の公約として脱炭素分野のエネルギー技術開発など4年間で約200兆円の投資を掲げた。
実際に、脱炭素化の社会を構築するためのキープレイヤーともいえるのが電気自動車 (EV) である。英国は2030年にガソリン車の新車販売を規制することを決め、ほかにもカナダや中国など、各国でガソリンやディーゼル車からEVやハイブリッド車へのシフトが促進される。
こうした規制を受け、大手自動車メーカーがEV自動車の開発を加速させる一方、「脱炭素化」の相場を盛り上げているのが、新興のEVメーカーである。米国のメーカーに加え、世界最大の自動車市場である中国ではEVメーカーが切磋琢磨して競い合い、投資家からも熱い視線が注がれる。EVは自動車のメーカーだけでなく、産業の裾野が広いのも特徴だ。
EVの核となる電池については、全個体電池の開発が進められ、日本の自動車メーカーや素材メーカーなども参入しており、こうした企業も投資家の注目を集めている。さらに、全個体電池の製造には、リチウムやニッケルなど関連素材が不可欠であり、非鉄金属株もEV関連銘柄として、相場の上昇に一役買っている。
脱炭素化は長期トレンド ?
株式相場を牽引したトレンドとして、1990年代のドットコムバブルが記憶に新しい。ハイテク株が相場の上昇を後押ししたが、2000年にはそのドットコムバブルがはじけた。
今回の脱炭素化の相場の盛り上げりに対しても、すぐにバブルがはじけるという警戒感を抱いたり、あるいは、急激な相場の上昇に対する焦燥感にかられたりする投資家もいるだろう。
しかし、各国政府が脱炭素化の達成時期を2050年以降に設定しているように、脱炭素化は一朝一夕に実現できるものではなさそうだ。人類にとって大きなチャレンジとなるが、投資の観点でみれば、今後数十年にわたる長期のトレンドとして、相場での存在感が高まる可能性も秘めている。
従って、脱炭素化の関連企業の業績を観察しながら、リターンを狙うチャンスはまだまだ残されているだろう。
(提供:大和ネクスト銀行)
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