「頭金は多く」は本当?世代による住宅ローンへの考え方の違い
(画像=David/stock.adobe.com)

住宅購入を検討していることを何気なく親に話したら、ローンの考え方について食い違った。このような経験をお持ちの方がいるかもしれません。なぜ世代によって異なるのでしょうか。謎を解くカギは金利水準にあります。

目次

  1. 30年前、ローンは無駄な出費の象徴だった?
  2. 金利3.5%下がると返済額はどれだけ差が出る?
  3. 返済にお金をつぎ込むとかえって損をすることも
  4. 金利1%時代の住宅ローン返済はどう考える?
    1. 1.住宅ローン減税
    2. 2.早く家を買うことの価値が相対的に上がる
    3. 3.返済分を運用に回したら
  5. 住宅ローンは返すよりも借りる時代

30年前、ローンは無駄な出費の象徴だった?

一昔前は、住宅ローンを組むときには頭金をたくさん用意し、購入後はできる限り繰り上げ返済していく方法が主流でした。これにはローン残高をなるべく減らし、金利の負担を少なくしようという考え方が背景にあります。

ところが最近では、購入時になるべく多くのお金を借り、基本的に繰り上げ返済をしないという人が増えています。これは一体なぜなのでしょう。この違いは、金利の変化が原因と考えられます。

一般社団法人金融住宅普及協会によると、1990年10月の住宅ローンの変動金利は8.5%でした。ここをピークに徐々に下がり、日本銀行の金融緩和によって、1999年以降は2.5%前後の低水準を維持しています。

2021年4月現在では、一般的に変動金利よりも高いとされる固定金利のフラット35さえも1%台前半がボリュームゾーンです。変動金利に至っては0%台半ばの金融機関も珍しくありません。

仮に100万円を金利年5%、元利均等返済、35年固定で組むと、総返済額は約212万円になります。頭金を100万円多く用意すれば、35年間で110万円以上も得するわけです。このような高金利の状況下では、ローン残高の多さは無駄な出費の象徴ともいえたのです。

金利3.5%下がると返済額はどれだけ差が出る?

金利による返済額の違いを実際の住宅ローンに近い金額で見てみましょう。固定金利の元利均等返済方式、借入金額は3,000万円、返済期間は35年間とします。金利5%の場合、総返済額は約6,360万円、毎月の返済額は約15万円です。

一方、金利1.5%の場合、総返済額は3,860万円、毎月の返済額は約9万2,000円まで下がり、差が2,500万円にも及びます。これだけ差が大きいと家計に与える影響は甚大です。また、組めるローンの金額、ひいては購入できる住宅が大きく違ってきます。

金利5%の場合、総返済額の半分以上が金利になります。一方、金利1.5%の場合、金利が総返済額に占める割合は20%強です。

高い金利の時代に住宅を購入した人と、低金利時代の今、これから住宅を購入する人とでは、金利に対するイメージが違うことでしょう。このイメージの違いが前述した食い違いの要因になっていると思われます。

返済にお金をつぎ込むとかえって損をすることも

繰り上げ返済は一刻も早く重い金利負担から逃れるための手段です。しかし、繰り上げ返済によって手元の現金を可能な限りローンの返済にあてていると、そのために家計がひっ迫することがあります。

最悪のケースは、突発的に高額の支出が必要になり、住宅ローンよりもさらに高金利なカードローンや消費者金融に手を出してしまうことです。これでは何のために繰り上げ返済しているのかわかりません。

金利の返済負担を取るか、それとも急な出費に備えて現金を取っておくのか、難しいところではありますが、ある程度予見できる部分もあります。例えば教育費は子どもの年齢によって必要な額がだいたい分かります。

文部科学省調査の「子供の学習費調査」によると、2018年度の学習費総額(1年間に保護者が支出する金額)は公立に通う小学校1年生で1人当たり約35万円、同じく中学校1年生で46万円でした。

また、リストラや病気、事故などによるケガで働けなくなったときに備え、生活費も3ヵ月から6ヵ月分程度は最低限必要でしょう。ただこれは、家族の就労状況や保険の加入状況などによっても異なります。

出費は増えますが、このようなリスクを保険で補う考え方もあります。例えば所得補償保険はケガや病気などで収入が減ったとき、差額の全部または一部を補う保険です。

このように、将来のリスクや発生することがほぼ確実な費用などを洗い出していくと、住宅ローンをどこまで返済すべきか、またしなくてよいのかが見えてきます。「たとえ低金利であっても、なるべく金利は払いたくないから繰り上げ返済する!」という人は、残しておくべき現金を計算しておくとよいでしょう。

金利1%時代の住宅ローン返済はどう考える?

それでは住宅ローン金利が現状では1%前後ですから、ローンは借りるだけ借りたほうがいいのでしょうか。3つの観点から考えてみましょう。

1.住宅ローン減税

あえて住宅ローンを抱える人がいる最大の理由は、住宅ローン減税(住宅借入金等特別控除)の存在です。一定の要件に当てはまる住宅ローンの年末現在残高の1%を最大13年間、所得税から差し引くことができます。単純計算だと、金利が1%未満であれば、金利の支払いよりも住宅ローン減税のメリットが上回ります。

例えば、ある年末の住宅ローン残高が3,000万円だった場合、減税額は30万円となります。この年の所得税が30万円よりも少ない場合、翌年の住民税から最大で13万6500円まで差し引くことができます。所得税額は家族構成やさまざまな所得控除によって異なりますので、ご自分の払っている税額を知りたい人は源泉徴収票をご確認ください。

住宅ローン金利が0.6%だったとすると、年間の支払利息は約18万円(実際には返済の仕組みにより、若干のずれが生じます)です。還付される税金のほうが12万円上回ります。もし頭金を300万円多く用意しており、年末の住宅ローン残高が2,700万円とすると、減税額は27万円となり、3万円減ってしまうことになります。

所得税や住民税を計算する元となる「所得」を減らす所得控除には、医療費控除や生命保険料控除など数多くありますが、住宅ローン減税のように直接所得税を減らす「税額控除」はごく限られており、大きな節税効果があります。

住宅ローンを対象とした税制優遇は、金利がピークを迎える以前の1978年からありましたが、金利の高さや控除限度額の少なさなどから、支払利息を減税額が上回ることは考えられませんでした。

近年、空前の低金利時代が訪れたことで、減税額が上回る可能性が生まれ、住宅ローンに対する考え方も変わりつつあります。

2.早く家を買うことの価値が相対的に上がる

金利が下がれば総返済額が下がります。すると住宅ローンは借りやすくなり、頭金が少なくても済むようになります。実際、住宅ローンの貸出残高は金利の変動と反比例するように伸びています。

金利の低下が著しかった1990年代は住宅ローン残高が毎年増加していました。2000年代に入り金利が底値圏を推移し始めると、住宅ローン残高の伸びも鈍り、減少する場面も見られます。2010年代は緩やかに増加し、2019年度末(2020年1月~3月期)にはついに200兆円の大台を突破しました。

低金利下では住宅ローンの頭金を貯めようと頑張って節約するよりも、早く新しい家に住んだほうが良いと考えやすくなります。なぜなら、新しい家に住む価値と金利の負担を比べたとき、前者のほうに軍配が上がりやすいからです。

3.返済分を運用に回したら

少し視点を変えて、1%前後の金利でお金を借りることの価値を考えてみます。「頭金を多く用意しない」「繰り上げ返済をしない」ということは、手元の現金確保を優先するということでもあります。このように余裕資金を持っておくことの1つのメリットは、前述したような教育費や医療費などのやりくりに困らないようになることです。

もう1つのメリットは、現金とは別の形でお金を持つことで、将来に向けた資産形成になることです。具体的には証券や投資用不動産などがあります。例えば投資信託などの積立です。

金融庁の試算によると、1998年から2017年までの20年間、国外株式(日経平均)に積立投資をすると年率換算で平均5.5%の割合で資金が増えていったことになります。金利1%のために返済するよりも、積立投資に回したほうが最終的にお金は増えています。

もちろん投資には損をするリスクもあるので、運用したから必ず得をするわけでありません。ただ、「老後2,000万円問題」などにより資産形成の意識が高まりつつあることが、ローンへの考え方を変える要因の1つになっていることが考えられます。

住宅ローンは返すよりも借りる時代

住宅ローン金利が5%を超える高金利時代には、頭金をなるべく多く用意し、繰り上げ返済を重ねることで金利負担を減らす考え方が一般的でした。金利が1%前後の現代では、住宅ローンの残高を無理して減らす意義は薄れています。

その背景として、住宅ローン控除の存在や総返済額の低下により借入がしやすくなったこと、資産形成への意識の高まりなどが挙げられます。住宅ローンを利用することの価値が総体的に高まっています。こうしたことから、今や住宅ローンは積極的に活用する時代、借りる時代だといえるでしょう。

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