海沿いで住宅を建てる際に気をつけるべきポイント
(画像=victor zastol'skiy/stock.adobe.com)

海沿いの住宅には「開放的な環境を楽しめる」などの魅力がある一方で「塩害を受ける可能性がある」というデメリットもあります。塩害対策の意識が薄いと「こんなはずではなかった」という結果になりかねません。ここでは、海沿いの住宅を検討している人向けに「塩害の基本」「日常の塩害対策」「施工ポイント」といった3つのテーマを解説します。

目次

  1. 海沿いに住宅を建てるデメリット
  2. 塩害の基礎知識〜そもそも塩害とは?塩害地域とは?
    1. 塩害とは塩分を含んだ風や雨などが金属を腐食させる現象
    2. 塩害を受けやすい場所は「塩害地域」と呼ばれている
  3. 日常生活における塩害対策は、洗浄や専用アイテムによるケアなど
    1. 塩害対策1:水でこまめに洗う
    2. 塩害対策2:金属のモノを屋外に置かない
    3. 塩害対策3:専用アイテムや専門業者を活用する
  4. 海沿いに住宅を建てるときの施工ポイント 
    1. ポイント1:塩害に強い外壁を選ぶ
    2. ポイント2:塩害を抑える塗装を行う
    3. ポイント3:塩害を知り尽くしたハウスメーカーを選ぶ
  5. 海沿いのロケーションを「好立地にするか」はオーナー次第

海沿いに住宅を建てるデメリット

「これから海沿いに住宅を建てたい」と検討している人にお伝えしたいのは、「内陸部と海沿いでは生活環境がまったく違う」ということです。

海沿いの立地には「開放的な環境を堪能できる」「サーフィンやスキューバーダイビング、釣りなどが楽しめる」「新鮮な魚介類が手に入りやすい」などのさまざまな魅力があります。しかし以下のようなデメリットもあるため注意が必要です。

メリット デメリット
開放的な環境を堪能できる 津波のリスクがある(立地条件による)
マリンスポーツが楽しめる 悪天候だと強風のことが多い
新鮮な魚介類が手に入りやすい 塩害で住宅などが傷みやすい

海沿いで暮らすのがはじめての人は、上記の3つのデメリットについてリアルにイメージすることが大切です。そうでないと実際に住んでから「こんなはずではなかった」と落胆し、大切なお金を無駄にしてしまう可能性があります。

3つのデメリットのうち、津波と強風については地震や台風のニュースで報道される機会も多いため、比較的イメージしやすいでしょう。しかし「塩害」については、内陸部で暮らしてきた人はイメージしにくいのではないでしょうか。

塩害の基礎知識〜そもそも塩害とは?塩害地域とは?

それではさっそく、海沿いに住宅を建てたい人のために「塩害の基礎知識」について解説します。

塩害とは塩分を含んだ風や雨などが金属を腐食させる現象

塩害とは、海からの飛来塩分が海沿いのモノや住宅などに付着して起こる傷みや腐食による被害のことを指します。生活用品の場合、車やバイク、自転車など、住宅では外壁や屋根などが塩害を受けやすいといわれています。

コンクリートの建物は、金属で覆われているわけではないため、「塩害とは無縁では?」と思う人もいることでしょう。しかしコンクリートは、表面に付着した塩分が内部に浸透し、それが鉄筋に達するとサビができてひび割れの原因となります。

また塩害が及ぶのは屋外にあるモノだけではありません。室内の金属製のモノや電気設備が被害を受けることもあります。

塩害を受けやすい場所は「塩害地域」と呼ばれている

塩害をどの程度受けやすいかは「海からの距離」「周囲の環境」2つの要素によって異なります。

  • 海からの距離
    当然海に近いほど塩害を受ける可能性が高まります。塩害を受けやすい場所は「塩害地域」と呼ばれています。この地域の対象となっている立地は特に警戒が必要です。

では、海からの距離がどれくらいだと塩害地域になるのでしょうか。これについては、地域の環境によって異なります。一般的には、海からの距離が1キロメートル以内の立地は「塩害地域の対象」と考えていいでしょう。

  • 周囲の環境
    「遮るものがあまりない」「強風の日が多い」などの環境の場合は、塩害を受けやすくなります。

日常生活における塩害対策は、洗浄や専用アイテムによるケアなど

海沿いに住宅を建てる場合、日常生活の塩害対策が欠かせません。具体的には、以下の3つのような塩害対策の例があります。

塩害対策1:水でこまめに洗う

屋外にあるものを水でこまめに洗うことは、基本的な塩害対策となります。もちろん住宅も洗うのが望ましいです。ただ屋根や外壁などに付着した塩分は、雨が降ることによって、ある程度は自然に流されます。

住宅でしっかりと洗いたい箇所は、「雨が降っても塩分が流されにくい」「雨水がたまりやすい」といったところです。ホースの流水や高圧洗浄機などを使って洗浄しましょう。

またどれくらいのスパンで住宅を洗えばいいかについては、年に数回程度が目安と考えられます。

塩害対策2:金属のモノを屋外に置かない

特に車のボディは塩害に弱いため、シャッター付きの車庫を設置するのが望ましいです。また自転車やバイクも車と同様に塩害を受けやすいため、使わないときは屋内にしまっておきましょう。

塩害対策3:専用アイテムや専門業者を活用する

塩害を防いだり、塩害をケアしたりするアイテムを活用することも方法の一つです。例えば車のボディでは塩害防止スプレーやさび落とし剤が有効です。ただ下回りだけはケアが難しいため、専門業者に依頼するといいでしょう。住宅も外壁と屋根を高圧洗浄で丸洗いできる専門業者に定期的に頼むと美観を維持しやすくなります。

海沿いに住宅を建てるときの施工ポイント 

ここまでの内容で、塩害の基本情報や日常生活での塩害対策について理解できたでしょうか。次に海沿いに住宅を建てるときの施工ポイントを解説します。

【施工ポイント】

  • 塩害に強い外壁を選ぶ
  • 塩害を抑える塗装を行う
  • 塩害を知り尽くしたハウスメーカーを選ぶ

ポイント1:塩害に強い外壁を選ぶ

「塩害に強い外壁を選ぶこと」は、海沿いに住宅を建てるときの必須ポイントです。外壁選びを間違ってしまうと、いくら気に入ったデザインの住宅を建てても短期間で劣化しかねません。

原則金属の外壁は、防さび対策していても塩害地域では保証対象外となることもあるため、避けたほうがいいでしょう。非金属(窯業系や樹脂系など)の外壁であれば塩害を抑えやすくなります。

外壁でよく使われるガリバリウム鋼板には、マグネシウムを加えて耐食性を向上させた「次世代ガリバリウム鋼板」という商品があります。この商品は、海からある程度離れている立地(例:500メートルなど)などの条件であれば保証対象となるので、海沿いの住宅でも採用を検討することができます。

ポイント2:塩害を抑える塗装を行う

塩害に強い外壁を選択しても金属をまったく使わずに住宅を建てるのは困難です。例えば以下のような場所に金属が使われています。

  • 屋根材
  • ベランダの骨組み
  • 雨戸、シャッター
  • 玄関ドア
  • サッシ
  • 庇(ひさし)など

上記のうち屋根材については、汚れや塩分が付きにくいフッ素塗装や無機塗装、化学変化がしにくいといわれるアクリル100%塗装などが有効と考えられます。

そのほかの場所も耐塩性能を持つ塗料で「防さびコーティング」をあらかじめ施しておけば、金属を使っても塩害を抑えることが期待できるでしょう。また金属でも比較的さびに強いといわれるステンレスを採用するのも有効です。ただしステンレスがサビないわけではありません。

ポイント3:塩害を知り尽くしたハウスメーカーを選ぶ

一般的なハウスメーカー選びの要素は、価格・デザイン・耐震性などです。海沿いに住宅を建てる場合は、これにプラスして「塩害に強いか」も重要な要素になってきます。塩害に強いハウスメーカーを選ぶことができれば、解説してきたような適切な外壁や塗装を提案してくれるはずです。

問題は、塩害に強いハウスメーカーを具体的にどのように選ぶかです。これについては、見積もりをとるタイミングで、「塩害対策もしっかりと提案してほしい」などと要望を出すのがおすすめです。複数のハウスメーカーの中から、安心できる塩害対策を提案してきたところを優先して選ぶのがいいでしょう。

海沿いのロケーションを「好立地にするか」はオーナー次第

塩害対策をしっかりと行って住宅を建てれば、海沿いの立地は最高のロケーションになります。しかし塩害対策が甘いとすぐに外観が傷んだり、腐食が進んだりと修繕に大きなコストがかかりかねません。つまり海沿いのロケーションを「好立地にするか高コストの立地にするか」はオーナー次第です。

塩害に強いハウスメーカーを選び、最小限のコストと手間で塩害とうまくつきあえる家づくりを実現しましょう。

(提供:タツマガ

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