住宅は買って終わりではなく、適切なメンテナンスを継続することが、長く住み続けるためには大切になってきます。戸建ての場合はメンテナンスの時期や費用の管理を全て自分で行わなければなりません。いつ、どのような個所に、どのくらいの修繕費用がかかるのでしょうか?10年後〜30年後にかかる費用の目安を見ていきましょう。
目次
10年後に必要となる修繕の内容とコストの目安
戸建て住宅の劣化時期は部位によって異なります。一般的な木造住宅において、築後10年が経過したら、具体的にどのような個所のメンテナンスが必要となるのでしょう。修繕コストの目安も合わせて解説いたします。
屋根の防水工事は約85万円
屋根の工事で一番大切な部分は「防水工事」です。防水シートの張替えは10年ごとの更新が必要といわれており、工事を怠ると雨漏りなどの原因となってしまいます。工費の目安については屋根材をいったん剥がす費用や現場管理費用などが発生するため、85万円程度を考えておくとよいといわれています。
外壁塗装は80万円〜130万円
外壁については材質によって違いはあるものの、モルタル・窯業系サイディングは10年程度で塗り替えが必要といわれています。住宅金融支援機構の「2019年度 フラット35利用者調査」によると、住宅の全国平均の床面積は約100平方メートルとなっており、その場合の外壁塗装の中心価格帯は80万円~130万円となります。
シーリング工事は約30万円
シーリングは5年から10年の間に打ちかえの必要があるといわれています。シーリングとは、ベランダのサッシや玄関扉のほか、壁や天井の採光や換気などに使われている窓などの開口部との隙間を埋めるために使用されているものです。シーリング工事に必要な金額の目安は30万円前後になります。
クロスの張替えは約60万円
クロス(壁や天井に張る仕上げ材)は約5年経過したころから汚れが目立つようになってきます。できるだけ部分的な汚れは自分で落とすようにし、10年経過後には張替えを行うようにするとよいでしょう。その際に必要になる費用は約60万円程度となっています。
床下の防蟻(ぼうぎ)処理は10万円〜15万円
シロアリ対策は5~10年に1度は行うべきだとされており、費用相場は10万円~15万円程度です。シロアリ駆除については、5年周期で行うケースもあることから、住宅のメンテナンスの中でも一番頻度が多いものとなります。駆除処理を行った際には、次回の計画を立てておくことをおすすめします。
給湯器は10万円
給湯器についても10年が交換の目安といわれています。費用は1台あたり10万円をみておくとよいでしょう。
このように10年目にかかる修繕コストをまとめると、以下の費用がかかることになり、合計すると約300万円程度を準備しておく必要があります。
<10年後にかかるメンテナンス費用(目安)>
屋根の防水工事 | 85万円程度 |
---|---|
外壁塗装 | 80万円~130万円 |
シーリング工事 | 30万円程度 |
クロスの張替え | 60万円程度 |
床下の防蟻処理 | 10万円~15万円 |
給湯器 | 1台あたり10万円 |
合計(目安) | 275万円〜330万円 |
20年後に必要となる修繕の内容とコストの目安
20年経過した際にはどのような修繕が必要となるのでしょうか。20年後は屋根の葺き替え工事をはじめ、水回りの工事など、かなりの箇所についてリフォームの必要が発生します。
屋根の葺き替え工事は140万円〜200万円
屋根の材質にもよりますが、葺き替えや塗装といったメンテナンスが発生します。例えば、瓦屋根であれば10~20年程度で葺き替えが必要です。
トタン屋根についても20年目が取り換えの時期とされています。これら葺き替えや取り換えの費用については、土台の再工事および瓦の交換費用などで140万円~200万円程度を考えておくとよいでしょう。
雨どい交換は30万円〜90万円
雨どいのリフォームを怠ると、外壁のひび割れの原因となったり、地面に雨水がたまることで建物の基礎が劣化しやすくなったりします。したがって、交換時期といわれている20年目には必ず工事を行うようにしましょう。その際の費用としては、清掃や補修、足場の設置など、交換費用全体で30万円~90万円程度かかります。
水回りのリフォームは135万円~400万円
水回りといっても、キッチンや浴室、洗面所やトイレなど多岐にわたります。最近ではこれらの水回りのリフォームをセットで行っている業者が多く存在しています。
ちなみにそれぞれ個別にリフォーム工事を行う際の費用相場は下記の通りです。
<水回りのメンテナンス費用(目安)>
キッチンの全体交換 | 50万円~150万円 |
---|---|
浴室全体の交換 | 50万円~150万円 |
トイレの全体交換 | 15万円~50万円 |
洗面台・洗面所の全体交換 | 20万円~50万円 |
業者ごとにかなり幅がありますが、中間値を取ったとしても総額250万円程度はかかると考えておきましょう。
そして、20年目にかかる修繕費用の内訳は下記の通りとなります。
<20年後にかかるメンテナンス費用(目安)>
屋根の葺き替え工事 | 140万円~200万円 |
---|---|
雨どい交換 | 30万円~90万円 |
水回りのリフォーム | 125万円~400万円 |
合計(目安) | 295万円~690万円 |
30年後に必要となる修繕の内容とコストの目安
30年後に必要となる修繕については、建築後20~25年までにある程度修繕を行っていれば、簡単な点検費用となります。逆にいえば、10年目から20年目までに必要な修繕工事を怠っていると、その分修繕規模も大きくなり、費用も増加することとなります。
したがって、考え方としては、10年目および20年目で上に記載したリフォーム工事をできるだけ安い金額で行い、その後は定期的に点検を行うと考えておけばよいでしょう。
戸建て住宅のメンテナンス周期一覧
住宅のメンテナンスは一度行えば終わりというものではありません。部位によってメンテナンスの周期が異なることはしっかりと理解しておきましょう。以下に、部位によるメンテナンス周期の一覧を紹介しておきますので参考にしてください。
部位 | メンテナンス内容 | 周期 |
---|---|---|
床 | 防蟻処理 | 5年 |
外壁 | 窯業系サイディング塗替え シーリング打ち直し |
10年 |
屋根 | 防水工事 | 10年 |
内装 | クロス張替え | 10年 |
給湯器 | 交換 | 10年 |
屋根 | 瓦交換 トタン取り換え 雨どい交換 |
20年 |
内装 | 水回り工事 | 20年 |
ライフプランを立てて積み立てておくことが大事
定期的な大規模修繕といえばマンションを想像しがちですが、戸建て住宅であっても定期的な修繕が必要です。マンションでは修繕のための修繕積立金を管理費と合わせて毎月支払う必要がありますが、戸建てにおいても同様に、適切な修繕計画を立てて修繕費用を蓄えておく必要があります。
毎月修繕費を積み立てていくのがベスト
メンテナンスの周期を参考にしながら修繕計画を立てていくことはもちろん大切ですが、その間に予想されるライフイベントも加味することを忘れないようにしましょう。
特に子どもの教育資金などは必ず必要になりますので、まとまったお金が必要になった際にも慌てることのないようにしておくことが大切です。そういった意味でも、戸建て住宅の場合でも、修繕費用として毎月一定額を積み立てていくとよいでしょう。
退職金を修繕費用にあてるのはできれば避けたい
とはいえ、実際に戸建て住宅を購入し、毎月のローンの返済、生活費、さらには子どものための教育資金の捻出などを考えると、修繕費用の積み立てにまで手が回らないというのが実情です。
2016年にアットホームが独自で調べた調査によると、戸建て住宅を購入して30年以上住んでいる人の中で、修繕費用を積み立てていた割合は1割にも満たない状況となっています。半数以上の人が、「自宅の修繕費は、毎月積み立てるべきだ」と回答している点も興味深いところです。
また、気になるのが修繕費用に退職金を利用した割合が7割弱を占めている点です。これからの老後資金の形成については、自己責任とされる流れが強くなっていきます。そのような事態を避けるためにも、できる限り、修繕費用の積み立てを定期的に行うことを考えましょう。
住宅ローンの借入額や返済額を決める際には修繕費も加味しよう
ここで紹介したメンテナンス費用の目安は、10年目および20年目で最低300万円弱になります。これを毎月積み立てていくとなると、その金額は2万5,000円程度です。
住宅ローンの返済額だけに意識がいき、見落とされがちなのがこのメンテナンスに関する費用です。住宅ローンの借入額や毎月の返済額を決める際には、修繕費用も考慮して決めることが大切だといえるでしょう。
(提供:タツマガ)
【あなたにオススメ】
・ 新築と中古はどちらがお得?メリットやデメリットについて徹底解説
・注文住宅で失敗しないために。後悔しない家づくり(間取り)のポイント
・注文住宅の購入予算はどうやって決める?費用の内訳は?
・戸建てがほしいと思ったら!分譲住宅と注⽂住宅の違いとは
・注文住宅の内装はどう決める?自然とまとまるポイント4つ