建売住宅と注文住宅の決定的な違いを理解しよう
(画像=Caito/stock.adobe.com)

新たに一戸建ての住宅の購入を考えるとき、建売住宅と注文住宅、どちらにするか悩まれる人も少なくないかと思います。新築一戸建ての住宅購入は数千万円単位の大きな買い物です。それぞれの特徴の違いなどをしっかり把握して、購入を検討していくようにしましょう。

目次

  1. 建売住宅と注文住宅とは
    1. どちらが多く建てられているのでしょう
    2. いくらぐらいの購入費用がかかるのでしょう
  2. 建売住宅と注文住宅の特徴を比較してみましょう
    1. 設計の自由度
    2. 建築コスト
    3. 資金計画
    4. 住む場所の見つけやすさ
    5. 出来上がりの建物のイメージ(確認)のしやすさ
    6. 建物のチェックのしやすさ
    7. 住宅性能表示制度の利用(耐震性や省エネ性など、住宅の性能が等級などで表示される)
    8. 入居できるまでの期間
    9. 住宅ローンの組みやすさ
    10. 街並みとの調和
  3. それぞれの特徴を理解して自分や家族にあった住宅を手に入れましょう

建売住宅と注文住宅とは

建売住宅は土地と一緒に販売される新築住宅です。間取りなどの設計プランは確定していることがほとんどであることが大きな特徴です。一方で、注文住宅は土地を取得してから(もしくはすでに所有している土地に)自由に企画・設計ができ、こだわりのある住宅を実現することができます。

どちらが多く建てられているのでしょう

建売住宅と注文住宅、どちらで新築を建てる人が多いのでしょうか。「2019年度フラット35利用者調査」の結果を見てみましょう。

分類 件数 割合
注文住宅 11,666件 21.2%
土地付き注文住宅 23,291件 42.3%
建売住宅 20,133件 36.5%
合計 55,090件 100%

※住宅金融支援機構2019年度フラット35利用者調査を参考に作成
※注文住宅:建築費はフラット35を利用し土地取得費はフラット35を未利用(他での借入れを含む)
※土地付き注文住宅:建築費及び土地取得費両方ともフラット35を利用

調査結果では、注文住宅と土地付き注文住宅とで分類されていますが、これは土地取得費をフラット35で借入れたかどうかで分けているだけですので、ここではいずれも「注文住宅」として扱います。

この結果から、約6割強が注文住宅、約4割弱が建売住宅となっています。これは全国規模で見た場合の数字ですが、都市圏とそれ以外の地域別で見た場合はまた違った数字が見えてきます。

地域 分類 件数 割合
三大都市圏 注文住宅 17,231件 31.3%
三大都市圏 建売住宅 15,433件 28.0%
その他の地域 注文住宅 17,726件 32.2%
その他の地域 建売住宅 4,700件 8.5%
合計 55,090件 100%

※住宅金融支援機構2019年度フラット35利用者調査を参考に作成
※三大都市圏:首都圏・近畿圏・東海圏の合計

三大都市圏では注文住宅と建売住宅の割合がほぼ半々ですが、それ以外の地域では建売住宅より注文住宅の割合のほうが約3.77倍多くなっています。

人口が密集している地域では、住宅を建てられる土地が限られてくることから土地価格が高い傾向にあり、一方でそれ以外の地域では低い傾向にあります。土地にかかる費用が安く住む地域では、建物により多くの費用をかけることが可能となります。

そのため、建売住宅より建築費用が高くなりがちな注文住宅ですが、三大都市圏以外の地域ではその割合が高い傾向にあるようです。

いくらぐらいの購入費用がかかるのでしょう

それでは建売住宅と注文住宅の購入費用の全国平均はどのようになっているのでしょうか?こちらもフラット35利用者調査の数字を参考にしてみます。

分類 所要資金 住宅面積
注文住宅 約3,452万円 125.8㎡
土地付き注文住宅 約4,257万円 111.5㎡
建売住宅 約3,494万円 101.1㎡

※住宅金融支援機構2019年度フラット35利用者調査を参考に作成
※注文住宅の所要資金には土地費用は含まず建築費のみの数字
※土地付き注文住宅の所要資金の内訳:建築費2,874.3万円 土地取得費1,382.5万円

一般的には建売住宅より注文住宅の購入費用が高い傾向にあります。注文住宅はこだわりのある設計をする分、建築費が高くなりがちです。一方で建売住宅は規格化された間取りなどで設計コストを抑え、建築資材や設備などを一括購入することでコストを抑えています。

また土地については、建売住宅は一括購入した広い土地を分譲して販売することや、業者対業者間の取引などにより土地費用も周辺の相場より抑えることが可能となります。

一方で注文住宅の場合は、土地取得については一般的な市場価格での取得になるため、建売住宅より取得費が高くなる傾向になります。しかし、比較的かかる費用の高い注文住宅であっても、設計の段階でコストを調整することで質の高いローコスト住宅を建てることも可能です。

また三大都市圏(首都圏・近畿圏・東海圏)のうち特に首都圏と三大都市圏以外の地域を比較した場合、その所要資金には大きな差があることもわかります。

地域 分類 所要資金 住宅面積
首都圏 注文住宅 約3,769万円 125.2㎡
首都圏 土地付き注文住宅 約4,993万円 105.8㎡
首都圏 建売住宅 約3,915万円 97.3㎡
三大都市圏以外の地域 注文住宅 約3,275万円 125.6㎡
三大都市圏以外の地域< 土地付き注文住宅 約3,869万円 113.8㎡
三大都市圏以外の地域 建売住宅 約2,855万円 106.8㎡

※住宅金融支援機構2019年度フラット利用調査を参考に作成
※注文住宅の所要資金には土地費用は含まず建築費のみの数字

地域による所要資金の差は約500万円から1,000万円にもなっています。住宅面積に大差がないことから土地取得費用がその差の大きな要因のひとつと考えられます。建物にこだわって費用をかけたいのであれば、土地取得費の安い地域に住むことも選択肢のひとつともいえます。

建売住宅と注文住宅の特徴を比較してみましょう

建売住宅と注文住宅の特徴を比較してみたので見ていきましょう。

設計の自由度

  • 建売住宅
    あらかじめ設計プランが決まっていることがほとんどで、間取りやデザイン、住宅設備などの変更ができない。 未完成住宅の場合、壁紙や塗装の色など建物の構造部分に影響が出ない範囲の軽微な変更であれば変更可能な場合もある。

  • 注文住宅
    自由な設計が可能。間取りなどをほぼ自由に作ることや、外観や内観のデザインなども好みの仕様にすることが可能。 住宅設備についても基本自由だが、施工会社によっては取扱いの設備などに制限がある。

建築コスト

  • 建売住宅
    設計の規格化や資材の一括購入などでコストを抑えやすい。

  • 注文住宅
    こだわりの設計や仕様にすればコストもかかるが、予算をあらかじめ決めておけばその範囲内での調整もできる。

資金計画

  • 建売住宅
    販売価格が明示されているので資金計画が立てやすく、予算オーバーもしにくい。

  • 注文住宅
    予算はあらかじめ立てておけるが、実際に設計してみないと細部まで含めた費用がわからない。 建物本体の建築費以外にも、外構などの付帯工事費や設計料などがかかる場合もあるので、総費用の把握が必要。

住む場所の見つけやすさ

  • 建売住宅
    住宅販売会社は売りやすい好条件の土地を手に入れるためのノウハウがあるため、立地の良い場所の情報をいち早く得ており、まとめて広い土地の取得が可能。 比較的立地のよい建売住宅が見つかる可能性が高い。

  • 注文住宅
    建物を建てるためには土地が必要。 すでに所有している土地での建築や建替えでない場合、立地の良い場所にはすでに物件があることが多いことから、住む場所を見つけるにあたり建売住宅よりも選択肢は狭まる可能性がある。

出来上がりの建物のイメージ(確認)のしやすさ

  • 建売住宅
    すでに出来上がっている建売住宅であれば、購入対象の物件を実際に見て確認することが可能。 建物自体だけでなく日当たりや眺望も確認できる。

  • 注文住宅
    購入を決める時点ではまだ建物が建っていないので、実際の物件を確認することができない。ただし、建築パース(建築物の外観や内部、あるいは周辺を立体的な絵にしたもの)や、建築模型である程度のイメージを確認することは可能。 希望の建物に近いイメージのモデルハウスや施工事例を紹介されることある。

建物のチェックのしやすさ

  • 建売住宅
    目に見える部分の確認はできても、構造躯体(建築構造を支える基礎や柱などの骨組み)など目に見えない部分の確認はできない。

  • 注文住宅
    基礎工事から段階を追って工事内容を確認できるため、工事が終わった後では確認のできない構造躯体などもチェックできる。

住宅性能表示制度の利用(耐震性や省エネ性など、住宅の性能が等級などで表示される)

  • 建売住宅
    制度を利用するかどうかは売主が判断するので、制度を利用した物件を希望する場合は最初から評価書の付いた住宅を探さなければならい。

  • 注文住宅
    コストはかかるが、希望すれば制度の利用は可能。国が認定した第三者機関が、客観的で公平な品質評価を行い、建物の性能が共通の基準で数値化されるので資産価値が正当に評価される。

入居できるまでの期間

  • 建売住宅
    売買契約後、住宅ローンの審査が通りさえすれば、すぐに融資の実行と建物の引き渡しを受けて1ヵ月程度で入居が可能。 未完成物件の場合は数ヵ月の工事期間が必要。

  • 注文住宅
    土地探しから建物の設計プラン、工事といった期間が必要。 一般的に未完成の建売住宅よりも入居までの期間が長い。土地購入までに3~6ヵ月程度、注文住宅の設計から建築工事請負契約を結ぶまでに3~10ヵ月程度、工事着工から完成までの工期は3~6ヵ月程度が目安となる。

住宅ローンの組みやすさ


建売住宅 土地と建物を一緒に購入するので、住宅ローンも土地と建物の分をまとめて借りることができる。建物も完成していれば銀行の審査も早い。

  • 注文住宅
    フラット35などを利用する場合、建物が完成してから融資が実行されるので、先に取得する土地についての費用などはつなぎ融資の利用が必要な場合がある。

街並みとの調和

  • 建売住宅
    10棟〜100棟といった大規模分譲地で販売される建売住宅の場合、美しい統一された街並みが形成されるのが特長。

  • 注文住宅
    あまりにも個性的なデザインの建物は周囲の街並みと比べて目立った存在になることもあるが、注文住宅であれば街並みと調和の取れたデザインにすることが可能。

それぞれの特徴を理解して自分や家族にあった住宅を手に入れましょう

それでは、どのような人が建売住宅に向き、またどのような人が注文住宅に向いているのでしょうか。タイプ別に見ていきましょう。

  • 建売住宅に向いている人
  • 住宅購入に手間や時間をかけたくない人(住み替えなどを急いでいる人)
  • 実際のものを見て購入を決めたい人
  • 購入費用を抑えたい人

  • 注文住宅に向いている人

  • こだわりのある家を建てたい人
  • ライフスタイルの変化にも対応できる住宅にしたい人
  • 二世帯住宅を建てたい人(建売住宅で二世帯住宅はほとんどないため)

建売住宅は「人が家に合わせて住む住宅」といってもいいかもしれません。一方、注文住宅は「住み方に合わせて建てる住宅」といえるでしょう。

自分や家族にとってどちらが希望の実現に合うか、それはライフスタイルや予算によって違ってきます。住宅を購入する際には、自分達にとって何が最適か、何を優先すべきかを考え、しっかり検討しましょう。

(提供:タツマガ

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