三菱電機、35年以上不正検査か 「ブラック企業大賞」2年連続受賞の実態とは
(画像=Satoshi/stock.adobe.com)

三菱電機で不正の発覚が一向に無くならない。過去に何度も不正検査や品質データの偽装や改ざんなどが報じられたが、また新たに不正検査の実態が明らかになった。鉄道車両向け空調機器の不正検査を、なんと35年以上にわたって続けていたというのだ。

三菱電機に新たな不正検査が発覚!最終的に社長が引責辞任

三菱電機の新たな不正検査が明らかになったのは、2021年6月下旬のことだ。同社が鉄道車両向けの一部の空調装置において、不適切な検査を行っていたことを公にした。社内調査の結果、今回の不正検査の実態が明らかになったという。

報道などによれば、空調装置の検査では冷暖房や耐電圧、防水などの性能に問題がないか確認するが、実際には検査をしていないにも関わらず、架空の数字を示すなどしていた。もちろん、検査をパスする数字を捏造していたのだ。

検査基準は鉄道各社がそれぞれ独自に指定しており、不正検査で架空の数字を示していたことは、取引先である鉄道会社を欺いたことに他ならない。非常に悪質であると言える。

その後、このような不正検査が35年以上にわたって行われていたことも明らかになり、長期間社内で組織的に行われてきた不正であることが明確となった。三菱電機のブランドイメージはもはやガタガタだ。

最終的に、杉山武史社長が引責辞任することで今回の問題は幕引きとなった。杉山社長は辞任会見の場で「皆さまに深くおわび申し上げます」と頭を下げた上で、「私が社長の職を辞し、新たな体制で信頼回復に取り組むことが必要との判断に至りました」と述べた。

「品質奉仕の三菱電機」が社是の三菱電機、不正はなぜ起きる?

「品質奉仕の三菱電機」。これは、三菱電機が1952年に定めた社是だ。品質を最優先することを掲げて製品の製造に取り組もうという社是だが、なぜ今回の不正検査を含め、三菱電機の不正は無くならないのだろうか。

杉山社長は記者会見で、「自分たちの基準でいい、というおごりがあった」と述べた。自社で製造する製品に自信を持てることは素晴らしいことだが、だからといって検査・点検が疎かになってはいけない。日本の発展を背負ってきた三菱グループの一角である三菱電機がおごりを捨て、不正の再発防止体制をしっかりと構築できるか、今後注目される。

ちなみに、三菱電機の不正は2018年1月から2021年6月にかけ6度にわたって発覚している。2018年1月には、ゴム製品の品質に関するデータの偽装が発覚した。翌年の2019年8月には、三菱電機グループの菱三工業において、鋳造製品の品質データの偽装が明らかになった。

2020年になっても不正発覚は続く。同年2月には高耐圧パワー半導体モジュールで不正検査があったと発表した。10月には車載ラジオをめぐる不正が発覚した。欧州基準に適合した製品ではないにもかかわらず、適合していると虚偽の宣言書を作って製品を出荷したのだ。

2021年には4月に電磁開閉器関連商品で品質に関する不正が発覚し、そして6月に今回の鉄道車両向け空調機器に関する不正が明らかになったわけである。

三菱自動車や三菱マテリアルの子会社でもリコール隠しや改ざん

不正検査などの問題がたびたび起きているのは、三菱グループの中で三菱電機だけではない。三菱自動車では、過去にリコール隠しが発覚している。非鉄金属メーカー大手の三菱マテリアルの子会社でも、品質検査データの改ざんが行われたことがある。

三菱グループと言えば、戦前の三菱財閥系の流れをくむ日本の名門グループだが、このようなグループ全体で起きている不正問題を受け、もはや三菱グループに対して「名門」というイメージを持っている消費者は少ないのではないだろうか。

ちなみに三菱電機は、弁護士や大学教授らの有識者によって選ばれる「ブラック企業大賞」を2年連続で受賞していることでも知られる。グループ内の社員が、パワハラや過労で自殺したことが重く受け止められた結果だ。

三菱電機は2021年に創業100年を迎え、売上高は4兆円を超えている。日本における大手電機メーカーの一角を成し、「MITSUBISHI」と言えば海外での知名度も決して低くない。そんな三菱電機が、不正の連鎖を完全に断ち切り、従業員の労働環境も改善できるか、注目を集める。

株価は大きな下落局面、果たして信頼回復は可能なのか

最後に、このように問題山積の三菱電機を市場はどう受け止めているのかに触れ、記事を締めくくろう。

三菱電機の株価は過去6ヵ月間で8.77%の下落、過去1ヵ月間では18.07%の下落となっている。新たな不正問題の発覚によって、同社の株価は大きな下落局面に入った。電機メーカーの業界は海外勢の台頭もあり、社内の問題で二の足を踏んでいる場合ではない。不正に終止符を打ち、マーケットの信頼回復を成せるのか、今後も目が離せない。

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)

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