学生は企業の知名度よりもSDGsの取り組みを重視。企業選びの新たな重要指標
2015年に国連で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)は、行政やビジネス界の共通認識となっただけでなく、学生たちの間にも浸透してきている。
2022年春に就職予定の就活生を対象に行われたアンケート調査によると、「SDGsについてどの程度知っていますか?」という質問に対し、約7割の学生が「内容を詳しく説明できる」または「内容をある程度知っている」と回答している。
また「就職先企業を選ぶ上で重視した点はなんですか?」という問いに対する回答では、「SDGsに対する姿勢や取り組み」が17.3%で、「有名企業であるかどうか(13.8%)」よりも高い結果であった。就活生におけるSGDsの認知度の高さはもとより、就職先企業を選ぶ際にSDGsの取り組みが重視される傾向が明らかになり、企業の採用戦略においても無視できない重要なポイントとして注目度が増している。
売上や利益だけではわからない企業の内情
企業選びでSDGsが重要視される理由には、SDGsに関わる取り組みが企業の将来性を推し量る指標になることや、自分も社会課題の解決に関与したいという思いが目立つが、ブラック企業を避けたいという学生側の心理も挙げられるだろう。ハラスメントのない職場環境かどうかや、見せかけの制度ではなく真に働きやすい体制であるかなどは、売上や利益といった財務面の数字だけを見て読み解くことは難しい。
その点をカバーして企業の実際の姿をより鮮明に浮き上がらせるのが、非財務/SDGsデータの定量化だ。
人材採用力を高めるSDGs定量化の例
では実際に人材採用力を高めるためには、どんな指標を定量化すれば役立つのだろうか。
1.働きやすさの指標の例:月残業平均、有給取得率、時短制度利用者数、育休取得率&復職率(男女)、業務上疾病度数率など
働きやすい職場であるかどうかを示す指標には例えば上記のようなものが挙げられる。企業によっては様々な休暇制度を設けているが、実際には活用されていないケースも存在する。取得率や利用者数をオープンにすることで、学生は制度の活用状況を把握でき、働きやすい職場かどうかを客観的に判断する際の材料となる。
2.働きがい(やりがい)の指標:管理職の男女比率、社員一人あたり教育研修費
誇りを持って仕事と関わり続けるには、責任あるポジションを任せられるチャンスが平等にあること、社員の成長を企業が期待するとともにサポートする基盤があることなどが必至だ。これらは社員の長期的なやる気やモチベーションに関与する。とくに自分の能力を発揮したい、成長し続けたいと考える人材ほど、働きがいを重要視する傾向にあるため、そのような人材を求めるならこれらの指標を公開することは有効だろう。
3.ハラスメント対策の指標:ハラスメント防止社内講座受講率、内部通報利用回数など
職場の雰囲気のよさは企業選びの重要ポイントのひとつだ。社内の風通しが良く、ハラスメントや不正が起きない環境づくりをしているかどうか、説得力を持って示す方法のひとつとして、ハラスメント対策に関する指標がある。
非財務と財務の相関事例を紹介
このような企業の非財務情報は、財務面に与える影響と関係があるのだろうか。サステナブル・ラボが働きやすさや働きがいと関係のある指標24個を選出、財務指標と相関分析した結果、2016年度の中間管理職およびその他管理職における女性の割合と、以後3年の財務指標とのあいだで、やや正の相関が認められた。女性管理職が多い方がその後数年にわたり好業績になることが示唆されている。
女性管理職が多いということは、多様性があり誰もが活躍しやすい職場である可能性が高い。また男女問わず仕事の成果が正当かつ公平に評価され、昇進のチャンスがあることを示している。それが社員のモチベーションや能力の発揮のしやすさにつながり、財務面への好影響に映し出されているのかもしれない。
まとめ SDGs8「働きがいも経済成長も」の達成は企業経営の柱
採用活動を行い、雇用を創出し、社員とともに成長し、市場に価値を生み出し続けるという基本的な企業活動そのものが、SDGsゴール8の「働きがいも経済成長も」の実現に直結している。
企業の使命のひとつは利益を生むことだが、成長を優先し過ぎて、劣悪な労働環境となってしまっては「働きがい」の部分が欠落し、結果的に持続可能な企業経営からは遠ざかる。個々の企業が精神論的な働きがいから脱却し、データで可視化された働きがいへと進化することで、人材採用面でもプラス要素となるだろう。
サステナビリティ・トランスフォーメーションを促進する非財務ビッグデータ集団
●サステナブル・ラボは、非財務ビッグデータの専門家集団として、非財務データバンクを活用し、目立たないけれども環境・社会利益を多く生み出している企業や自治体に光を照らすこと、また、企業や自治体が、真に経済利益と環境・社会利益の創出を両立できる社会の実現を目指しています。
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