世界ではPPAの第三者保有モデルが太陽光発電導入の主流になりつつあります。第三者保有モデルはどのような仕組みで運用されるのでしょうか。第三者保有モデルを導入する際のメリット・デメリットや注意点について解説し、合わせて家庭用第三者保有モデルサービスに進出した企業の動向を紹介します。

PPAの第三者保有モデルとは何か

PPAの主流になる、第三者保有モデルのメリット・デメリット
(画像=BluePlanetStudio/stock.adobe.com)

PPA(Power Purchase Agreement)の第三者保有モデルとは、PPA事業者(電力事業者)と需要家(電力を使用する者)の間で結ぶ契約モデルのことをいいます。世界各国の企業で採用されているPPAモデルは、とくに米国で盛んに行われており、契約量も年々大きく伸びています。日本ではまだ本格的な導入には至っていませんが、PPAモデルへの需要は高まっています。

法人向け太陽光発電PPAモデルの仕組みは、まず需要家(法人)が自社の敷地やビルの屋根などのスペースをPPA事業者に提供します。PPA事業者は太陽光発電システムを無償で設置し、保守管理も行います。稼働後にPPA事業者は需要家が使用した自家消費量を検針し、電気料金を請求します。そして、需要家がPPA事業者に電気料金を支払うというシステムになっています。

太陽光パネルで発電した電気はCO2を排出しないため、クリーンエネルギーを使用している企業として企業価値向上につながります。SDGsやRE100などを目標とするCSR(企業の社会的責任)活動としてアピールできることでビジネスチャンスにつながることも期待できます。

第三者保有モデルのメリット

第三者保有モデルはメリットが多いシステムとして注目されています。おもなメリットとして次のような点が挙げられます。

初期費用がかからない

太陽光発電システム導入を検討する際にネックになるのが初期費用の問題ですが、第三者保有モデルは初期費用不要で導入できます。加えて電力会社よりも安い単価で電力を購入できるので、長い目で見て大きなメリットになります。

再エネ賦課金がかからない

一般的な電力会社から電力を購入する場合は、再エネ賦課金が加算されるため、契約者の料金負担が大きくなります。再エネ賦課金とは、太陽光や風力などの再生可能エネルギーで発電された電力を、電力会社が買い取るための費用として需要家が負担する費用です。

再エネ賦課金は2021年5月検針分から3.36円/kWhとなり、電気料金の一部として支払います。太陽光発電システムで発電された電気を自家消費する場合は、基本的に再エネ賦課金はかからないので電気代の節約になります。

ただし、オフサイトPPAで自己託送ではない(小売事業者から供給を受ける)部分は再エネ賦課金がかかるケースがあります。

契約期間中は事業者がメンテナンスしてくれる

太陽光発電システムにはメンテナンスが必要ですが、第三者保有モデルではPPA事業者が行うため、需要家は契約期間中メンテナンスの手間や修理の心配をする必要がありません。修繕費がかからないのはコスト面でも安心できるメリットです。

BCP対策になる

台風や地震などの自然災害が起きたときに、蓄電池を使って事業を速やかに再開できるようにするためのBCP対策になる点も重要なメリットです。

日本では2019年の時点で、今後30年以内に巨大地震が発生する可能性が70~80%という政府・地震調査委員会の調査結果もあります。BCP対策も待ったなしの状況を考えると、PPAの第三者保有モデル導入は各企業にとって喫緊の課題といえるでしょう。

第三者保有モデルのデメリット

一方で第三者保有モデルにはデメリットもあります。次の3つのデメリットがあることを認識した上で導入を検討したほうがよいでしょう。

契約期間が長期になる

1つは契約が長期間になることです。契約期間は事業者によって異なりますが、通常10~25年程度といわれています。

その間太陽光発電システムの設備はPPA事業者の所有になりますので、需要家の都合で処分することはできません。事業所の移転や建て替えを行う予定がある場合は、PPA事業者とあらかじめ相談する必要があります。

自社保有に比べて経済効果が小さい

電気料金は大手電力会社から購入するよりは安くなりますが、自社所有で発電する場合に比べて経済効果が小さい点には注意が必要です。太陽光発電システムを無償で導入できるメリットをメインに考えるべきでしょう。

契約期間終了後にメンテナンス費用がかかる

契約期間終了後は太陽光発電システムの設備がPPA事業者から需要家へ譲渡されますが、その後は需要家が自らメンテナンスを行わなければなりません。PPA事業者に引き続きメンテナンスを依頼する場合は費用が発生するデメリットがあります。

第三者保有モデルを導入する際の注意点

第三者保有モデルを導入する際に注意すべき点がいくつかあります。1つは、PPAモデルを導入する際は設置場所や容量を確認する必要があります。機器が故障しやすい環境である場合や、期待する発電量を得られないなどの理由で、PPA事業者が設置容量に下限値を設けるケースもあります。設置できない場合や、希望する容量で契約できない場合もあるので、PPA事業者との事前の協議が必要です。

2つめはPPA事業者から購入する電気料金の価格設定が業者によって異なることです。「固定価格」は、費用を予測しやすい半面、変動制で購入するよりも高い料金になるケースがあります。

「市場連動価格」は、市場単価が安いときはメリットになりますが、高いときは割高で購入することになります。「小売電力との組み合せ」は、請求を一本化でき料金が安くなる可能性が高いですが、契約期間中は変更することが困難というデメリットがあります。

会計の問題では、契約期間中の太陽光発電システムはPPA事業者の資産になります。そのため資産計上の必要がないと判断される場合が多いといわれています。PPAモデルのメリットの1つですが、資産を財務諸表から切り離すオフバランス化をできるかは監査法人などの判断が必要なので、事前に相談することが大事です。

電力・ガス会社のサービス参入で第三者モデルの普及が進むか

電力・ガス会社、住宅メーカーなどが相次いで第三者保有モデルのビジネスに参入し、家庭向けでもPPAモデルの普及が進んでいます。

大手電力会社では、東京電力エナジーパートナーの子会社であるTEPCOホームテックが「ソーラーエネカリ」という月額定額制のサービスを行っています。初期費用無料で太陽光発電システムを設置し、ユーザーは毎月定額のサービス利用料を支払うという仕組みです。自家消費分と余剰電力売電分で電気代を節約できた上でサービス料を支払うので負担感が少ないサービスといえそうです。

住宅メーカーでは三菱地所ホームが東京ガスと共同で、自社の新築住宅を対象にした第三者保有モデルのサービスを行っています。サービス名は「ずっともソーラー for エアロテック」で、住宅メーカーらしくZEH住宅の普及を目的にしたサービスという側面があります。太陽光で発電した電気は家庭で使用し、余剰電力を売電した収入をサービス提供会社の東京ガスに譲渡するという仕組みです。10年の契約終了後は発電した全電気を家庭で使うことができます。

PPAの主流になる第三者保有モデルは法人向け・家庭向けともに今後も伸びていくことが予想されます。企業も個人も太陽光発電パネルを第三者保有モデルで初期費用の負担なしに導入できる時代になりました。これまでシステムに費用をかけることをためらっていた企業や個人はこのチャンスに太陽光発電システムを導入し、SDGsへの貢献と電気料金の節約を両立させてみてはいかがでしょうか。

(提供:Renergy Online



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