V2Hは自動車分野で、省エネを実現する新しい技術として注目されています。しかしまだ普及し始めであるため、詳しく仕組みを知らないという人も多いと思います。
しかしこれから急加速するCO2削減の流れの中で、企業が取り入れれば省エネだけでなく企業価値を高められる可能性のある技術です。ここではV2Hとはどんな技術なのか概要と併せて、企業が採用を検討すべき理由を詳しく解説します。
V2Hは電気自動車を電源にできる
V2HはVehicle to Home(車から家へ)から作られた略語で、電気で走るEV/PHVに蓄えた電気を建物へ送るという意味です。これまでEV/PHVは、充電された電気を自分が走るためだけに使っていましたが、V2Hに対応した車は内蔵した蓄電池を建物の電源として使えます。
企業にとってEV/PHVは、ガソリンより安価な電気を使いエネルギーコストを削減できるメリットがありました。しかしV2HではEV/PHVに料金の安い時間帯の電気を蓄えたり、災害などで停電したときの非常用電源として活用したりできます。
企業がV2Hで得られる3つのメリット
企業がEV/PHVを導入するのは、長期的に見て経費削減効果があるからです。しかしV2Hを組み合わせることで、さらに大きなメリットを企業にもたらします。ここでは企業が注目すべき、V2Hの3つのメリットを紹介します。
太陽光発電と連系しコスト削減
V2Hは太陽光発電と組み合わせることで、EV/PHVのエネルギーコスト削減効果をさらに高めます。EV/PHVはガソリン車に比べ、エネルギーコストを大きく軽減できますがどうしても電気代はかかります。しかし太陽光発電が作る電気を充電するならエネルギーコストが必要なくなります。
もちろんパワステーションと呼ばれる、充放電器の設置費用はかかりますが30万円台の製品も登場しており導入ハードルは下がっています。また国からの補助金が2021年度は設備費で75万円、工事費は95万円、さらに自治体によっては独自の補助金も設けられ企業の負担を軽減してくれます。
当然ですが、省エネ設備への投資はできるだけ早く行った方が回収も早まり、企業に多くの恩恵をもたらします。すでに太陽光発電を設置していたり、これから設置予定があったりするなら併せてV2Hの導入も検討すべきでしょう。
BCPに組み入れ安定と評価を獲得
BCP(Business Continuity Plan)は災害などの非常時に、通常と同じ業務ができるようにする計画や準備です。日本語では事業継続計画と訳されます。BCPの充実した企業は、災害などで経営が悪化しにくく取引相手としてリスクが少ないといと評価されます。V2Hの導入はこのBCPでも有利に働きます。
近年増えている大規模な自然災害や、コロナウイルス感染拡大などにより業績を落とし経営が悪化した企業が数多くあります。経営悪化は当事者だけでなく、取引する企業や金融機関にも悪影響を与えます。そのため、非常時への対策を取っている相手と取引したいと考える企業が増えています。
もし十分に準備していない企業と判断されると、取引や融資を断られる可能性がある時代です。その点でV2Hは、車両が蓄電池として機能し非常時も事業を継続しやすくなります。BCPにV2Hを組み入れることで、企業の安定と取引相手からの評価が得られるのです。
CO2削減へ貢献し社会的評価も高める
V2Hの導入はCO2削減による地球温暖化防止に貢献し、さらに企業の社会的評価を高めます。これからは企業の大小を問わず、明確にCO2削減に取り組んでいるかが問われるからです。
日本はこの4月に、2030年までに温室効果ガスを2013年比で46%削減するという非常に高い目標を掲げました。これはそれまで各省庁が目指していた目標を大きく上回るものです。今後は大手企業だけでなく、中小を含めたすべての企業に太陽光発電導入など徹底したCO2削減が求められるはずです。
もし何も対策をしていなければ、世論から強い批判を浴びる可能性があります。逆に太陽光発電やV2H、EV/PHVを導入していれば、積極的にCO2削減に取り組む企業として社会的評価が高まることも期待できます。
V2H導入時の注意点
メリットの大きいV2Hですが、一方で導入するときに注意すべき点もあります。導入する台数によってはコストがかかる設備投資になります。以下の点を十分に吟味した上で、導入を検討するようにしましょう。
系統連系型と非系統連系型を確認
V2Hには太陽光発電や、電力会社からの電気の連系方法に「系統連系型」「非系統連系型」という2つの種類があります。それぞれ働きが異なるため、目的に合ったV2Hを選ぶ必要があります。
「系統連系型」のV2Hは、太陽光発電、電力会社、EV/PHVの3つの電気を同時に扱えます。このため昼間に太陽光発電で作った電気をEV/PHVに蓄え、夜間や停電が起きたときに建物へ送れます。
一方の「非系統連系型」は、先ほどの3つの電気を同時に扱えません。例えばEV/PHVから建物へ給電しているときは、太陽光発電や電力会社からの電気を扱えないのです。このため建物側で必要とする電気が十分に供給されない可能性があります。
さらに系統連系型のV2Hでも、停電中に太陽光発電からEV/PHVへ電気を送れない製品もあります。V2Hを導入するときは必ず、「系統連系型」か「非系統連系型」かや停電中の給電の制限などを確かめるようにしましょう。
対応車種はまだ少ない
現状では、V2Hに対応したEV/PHVはそれほど多くありません。普通車ではトヨタのプリウスPHV、日産のリーフ、ホンダのHonda eなど数車種です。また商用車では、ワンボックスタイプの日産e-NV200やコンパクトタイプの三菱ミニキャブなどこちらも豊富とは言いがたい状態です。
しかし現行の車種を見ると、ひととおりのニーズを満たすラインアップになっていることがわかります。外回り用の乗用車タイプがあり、運搬用でも大小がそろっています。これからニーズの高まりに伴って新車種が増える可能性はありますが、車の開発は時間がかかります。
そのためどうしても用途に合わない以外は、現状のラインアップから選ぶことをおすすめします。ぴったりと使い方に合う車種の登場を待っていたら、すぐに数年が経ってしまうからです。できるだけ早くV2Hを導入し、コスト削減やBCP、CO2削減といったメリット獲得を優先しましょう。
車両を使う企業は早急に検討すべき
すでに述べた2030年や、その先のカーボンニュートラルを目指す2050年に向けて、これから日本では急ピッチにCO2削減が進みます。欧米ではさらに高い数値目標を掲げている国もある中で、世界に向けて具体的な数字を表明した日本としては本気で目標達成を目指すしかないからです。
これを「国が旗を振っているだけで自分たちには関係ない」と捉えていると、瞬く間に社会の流れから取り残される可能性があります。さらにESG投資やSDGsの広まりから、環境への取り組みが甘い企業は批判にさらされ資金調達さえ困難になる恐れもあります。
そのため車両を扱っている企業は、迷わず太陽光発電とV2Hの組み合わせのようなCO2削減策へ積極的に取り組むべきです。エネルギーコスト削減やBCPによる企業の安定など、自社のメリットを考えても導入しない理由はありません。ぜひ早急に検討し、他社に先んじて流れに乗るようにしましょう。
(提供:Renergy Online )
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