菅首相就任から振り返る7つの「やらかし」 支持率はついに20%台に
(画像=アス太郎2/stock.adobe.com)

菅義偉首相の支持率が低下する一方だ。大手メディアの世論調査によると、支持率は20~30%台で推移しており、不支持率も50%以上となる状況である。次期衆議院選に向けて追加経済対策の取りまとめに動くなどしているが、国民からの期待感が薄い。

菅首相就任後の「やらかし」を振り返る

なぜここまで菅首相の支持率は下がってしまったのか。2020年9月に第99代内閣総理大臣に就任して以降、菅首相が取り組んできたことを、時系列で振り返ってみよう。

2020年10月:日本学術会議の新会員候補6人の任命拒否

首相に就任早々、日本学術会議の新会員候補6人について任命を拒否したことが、大きな波紋を広げた。任命拒否について「(会員候補の)大学に偏りがある」などと説明したが、候補者6人のうち1人しか候補者を知らなかったことが明らかになり、野党が厳しく追及した。

2020年12月:GoToトラベル事業、全国で一斉停止を決定

新型コロナウイルスの新規感染者数が全国で1日に3,000人を超える水準となり、景気刺激策として実施してきたGoToトラベル事業の停止を表明した。同事業は安倍政権で始まったものだが、「停止の決断が遅すぎた」といった批判が与党・野党の両方から上がった。

2021年1月:緊急事態宣言を再発令する事態に

1月7日、東京都など4都県に緊急事態宣言を再度発令することを決めた。その翌日には全国の新規感染者数が過去最多の7,800人台に達しており、そのおよそ1週間後に緊急事態宣言の範囲に7府県を追加した。

2021年2月:長男が勤める「東北新社」による総務省幹部への接待問題

菅首相の長男が働く放送会社の「東北新社」において、総務省幹部に対する接待問題が発覚した。接待には、菅首相の長男である正剛氏が同席していた。菅首相は「長男は公的立場にない」「私は承知していない」などと国会の場で説明している。

2021年6月:東京五輪の開催基準、具体的に示さず

菅首相は東京五輪の開催について、6月7日に開かれた参院決算委員会で「国民の命と健康を守っていくのが開催の前提条件」と述べた。しかし、開催可能かを判断するための基準については示さず、「開催ありきなのでは」などと批判が上がった。

2021年7月:天皇陛下の五輪開会宣言で不起立

7月23日に東京五輪の開会式が行われ、大会名誉総裁である天皇陛下が開会宣言をされた際、起立をしなかった。ネット上などでは菅首相に対する批判もあったが、この件に関しては、組織委員会側が起立のアナウンスをしなかったことを後日謝罪している。

2021年8月:原爆の犠牲者を慰霊する祈念式典で2つのミス

原爆の犠牲者を慰霊する祈念式典において、広島では原稿の一部を読み飛ばし、長崎では1分遅刻した。読み飛ばしの原因は原稿の一部がのりでくっついて読めなかったこととされ、長崎での遅刻については「時間管理上の問題で遅刻してしまいました」とお詫びした。

一方で菅首相の功績は?首相肝いりのデジタル庁

このように菅首相の「やらかし」を振り返ってみると、どこまで批判されるべきかという点はさておき、国会議員や有権者などに批判の火種を与えてしまっていることは確かである。まさに「火の無い所に煙は立たぬ」わけだ。

しかし、菅首相の功績が全くなかったかと言えば、そうとも言えない。現在、デルタ株の影響で新型コロナウイルスの感染者数が日本全体で急増しているものの、デルタ株が猛威を振るう前は、感染者数をかなり低く押さえ込めている国のひとつだった。

菅首相の肝いりで進められているデジタル庁の開設についても、評価されるべき点は多いだろう。デジタル庁は9月1日の立ち上げが予定されており、社会全体のDX(デジタル・トランスフォーメーション)をスピーディに推進していく司令塔となる見込みだ。

そして、冒頭でも触れた今後の追加経済対策の内容も気になる。現在はまだ策定の指示前であり、具体的な中身は定まっていないが、内容によってはコロナ禍による景気低迷を脱却する起爆剤となるかもしれない。

ロックダウンに踏み切るのか?経済対策は?…要注目

自民党総裁としての任期は9月30日までとなり、少なくともまだしばらくは菅首相の手腕が大きく影響する。

最近では、ロックダウンをすべきとの声も専門家や自治体の間で強まっている。菅首相は慎重姿勢を示しているものの、さらに感染が拡大すれば実施に向けて動き出す可能性もある。今後、どのようにコロナ対策の舵取りを行っていくのか、そしてどのような経済対策を打ち出していくのか、引き続き注目だ。

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)

無料会員登録はこちら