「出資持分ありの医療法人」は検討したい認定医療法人制度
(画像=PIXTA、ZUU online)

第6回は医療法人の税務戦略ついて見ていこう。野村證券にてプライベートバンキング業務に従事し、現在は佐野比呂之税理士事務所代表である佐野税理士に話を聞いた。(聞き手:菅野陽平)

佐野 比呂之
佐野 比呂之(さの・ひろゆき)
1998年、立教大学経済学部卒業。複数の中小税理士事務所に勤務。2006年、中央大学国際会計研究科修了MBA取得。税理士登録。2007年、税理士法人プライスウォーターハウスクーパース(PwC)入社(一時期、野村證券へ派遣)、主にオーナー企業向け税務顧問及び事業承継業務、国際相続案件に従事。2011年、野村證券株式会社にて上場・未上場企業オーナー向けプライベートバンキング業務に従事。2014年、佐野比呂之税理士事務所を開所。2015年、合同会社パープル・リングスを設立。税理士、行政書士、1級FP(CFP)、宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、証券外務員一種(内部管理責任者)。

医療法人で概算経費を使っているケースはほとんどない

第5話にて、措置特別措置法26条による「概算経費」について触れ、個人開業医における大きな味方となると紹介した。概算経費は個人開業医しか活用できないわけではなく、医療法人であっても活用できる。それでは、医療法人においても第26条規定(概算経費)が有益な節税手段になるのだろうか。

しかし、「医療法人でこの規定を使っているケースはほとんどない。少なくとも私の周りの医療法人で、第26条規定を使っている理事長はいない。法人は個人と異なり、役員報酬や役員賞与という『調整弁』があるためだ。実は、それなりに成功している理事長は、ある程度の所得税を支払ってでも、高い役員報酬(+賞与)を得ることを選ぶ人がほとんどだ。これまでの投資の回収をしたいという思いが強いのかもしれない」(佐野氏)という。