ジェンダー・ハラスメントが発生しやすい職場
どのような職場が、ジェンダー・ハラスメントが発生しやすい職場といえるのだろうか。普段何気なく使っている言葉が、ジェンダー・ハラスメントに該当する可能性があることも知っておきたい。
1.男性が多い職場、女性が多い職場に発生しやすい
男性ばかりの職場や女性ばかりの職場に異性が入ってきたときには、ジェンダー・ハラスメントが起きやすい傾向にある。男性が多い職場に女性が一人だけ配属された場合、なかなか思ったことを口にすることはできないだろう。そのような環境で「男だから」「女だから」という理由で雑用を押し付けるようなことは禁物だ。
女性にお茶くみをさせたり身体的に力が勝るからといって男性に力仕事をさせたりすることは、過度なものになればジェンダー・ハラスメントになる可能性がある。
2.誰でも無意識のうちに加害者になる可能性がある
職場の男女比による力関係だけではなく世代間の考えの差が職場での言動に表れることがある。最近は、ほとんど聞かなくなったが、昭和・平成時代であれば「女性社員にお茶くみをさせる」ということはよくあった。男女ともに通常業務があるにもかかわらず「女性だから」という理由で「掃除や電話の応対をするのは当然だ」などといった企業もある。
こういった企業は、ジェンダー・ハラスメントが起きやすい職場といえるだろう。また、無意識のうちに使った言葉でハラスメントの加害者になってしまう可能性があるので気をつけたい。
セクハラとは違う?ジェンダー・ハラスメントとセクハラの違いを解説
セクハラとジェンダー・ハラスメントの違いを男女雇用機会均等法の規定から確認してみよう。
1.セクハラとの違いを確認
まずは、厚生労働省が公表している職場によるセクハラの定義を確認しよう。
「職場において行われる性的な言動 に対するその雇用する労働者の対 応により当該労働者がその労働条 件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されること」
出典:厚生労働省
また、男女雇用機会均等法の条文は、以下の通りである。
男女雇用機会均等法第11条第1項
「事業主は、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。」
出典:e-Gov
セクハラには、「対価型のセクハラ」「環境型のセクハラ」の2種類がある。
・対価型のセクハラ
職場で性的な言動が行われ、これに対して拒否・抵抗をしたことで解雇、降格、減給、雇止め、昇進・昇給の対象者からの除外などの不利益を受けること。
・環境型のセクハラ
職場で性的な言動により労働環境が不快なものとなったため、看過できない程度の支障が生じること。
セクハラには、その行為自体に性的な意味が含まれるように、これらは「性的な言動」が原因となっている。例えば「性的な関係を求める」「身体を触る」「わいせつな画像を配布する」などがセクハラに該当する。一方でジェンダー・ハラスメントは、社会的・文化的意味合いや価値観の違いからから発生する性区別によるハラスメントでありその行為自体には性的な言動は含まれていない。
そのため多くの場合、ジェンダー・ハラスメントは、セクハラには該当しないことになる。
2.ジェンダー・ハラスメントもセクハラになり得る
ジェンダー・ハラスメントがセクハラに該当しないからといっても性差別が行われるような悪しき慣行がある職場は、セクハラの温床にもなりかねない。無意識のうちに言動に表れてしまう性差別は、セクハラの背景となり得ることを認識しておく必要がある。そのため職場の男女比による力関係や上司と部下の優位性などの影響から平然と性差別が行われている場合は注意したい。
やがては、ジェンダー・ハラスメントもセクハラに発展することが十分考えられるだろう。厚生労働省の「労働者に対する性別を理由とする差別の禁止等に関する規定に定める事項に関し、事業主が適切に対処するための指針」では、以下のようなことは男女雇用機会均等法違反となるとしている。
- 男性には通常業務のみに従事させる
- 女性には通常業務に加え会議の庶務・お茶くみ・掃除当番などの雑務を行わせる
男女雇用機会均等法では、労働者が性別により差別されることなく充実した職業生活を営むことができるようにすることを基本理念としており、性別を理由とする差別の禁止事項を設けている。企業としては、セクハラへの注意喚起だけではなく「性差別に該当するような言動は慎むべきもの」と従業員へ指導する必要があるだろう。