ハラスメントは個人の人格や尊厳を傷つけるような行為や言動を指す。パワハラやセクハラ、モラハラなどは耳にしたことがある人も多いだろう。とりわけ、性差にかかわるハラスメントと言うとセクハラを考える人もいるかもしれない。しかし、いまだに認知度の低いジェンダー・ハラスメントと呼ばれるハラスメントも存在する。ジェンダー・ハラスメントが抱える問題点についてみていこう。
目次
ジェンダー・ハラスメント問題3つのポイント
2015年9月の国連サミットで採択された持続可能な開発目標(SDGs)では、ジェンダー平等の問題も取り上げられている。まずは、ジェンダー・ハラスメントがどのようなものか見ていこう。
1.ジェンダー・ハラスメントとは?
日本政府は、ジェンダー平等の実現に向けて以下の3つを重点分野として挙げている。
- 女性と女児の権利の尊重・脆弱な状況の改善
- 女性の能力発揮のための基盤の整備
- 政治、経済、公共分野への女性の参画とリーダーシップ向上
出典:男女共同参画局
例えば女性が男性と比べて身体的に非力であったとしても決して男女不平等による差別があってはならない。ジェンダーの平等とは、社会的な立場による平等を意味する。
これらを踏まえるとジェンダー・ハラスメントとは、社会的・文化的意味合いや価値観の違いから発生する性区別によるハラスメントということが分かるだろう。
2.認知度は低くても職場への影響は大きい
男女差別というとセクハラをイメージする人が多いかもしれない。そのためジェンダー・ハラスメントに対する認知度は低い傾向だ。昔からよく耳にする「女はこうあるべき」「男ならこうでなければいけない」という言葉もジェンダー・ハラスメントの例のひとつといえるだろう。性別の価値観に基づく問題発言は、ジェンダー・ハラスメントに該当する可能性があるため、注意が必要だ。
体型・容姿・服装などに関する発言や「この仕事は女には無理」といった発言は、女性のやる気を失わせ職場での満足度を下げてしまいかねない。「男だったら気合いを入れて仕事をしろ」といった発言も同様だ。
このような差別的な考えがある職場は、やがて従業員間に差別意識を生み出す。差別的言動は、従業員のモチベーションの低下につながり職場全体のパフォーマンスを下げることになりかねない。
もしジェンダー・ハラスメントによるメンタル不調で従業員が休職や退職に追い込まれることがあれば職場への影響は計り知れないだろう。優秀な人材が流出するだけでなく最悪の場合、企業は訴訟リスクを抱えることになる。認知度は低くてもジェンダー・ハラスメントが職場へ与える影響は非常に大きいのだ。
3. LGBTの人々に対する理解も大切
認識が低いといわれているLGBTの人々に対する理解も必要だ。厚生労働省でもセクハラは「性的自認や性的指向にかかわらず該当することがあり得る」と注意喚起している。今後は、LGBTに関するジェンダー・ハラスメントが起こることも十分考えられ、企業にとっても大きな問題となる可能性があるだろう。