自治体のSDGsへの関心が高まっているなか、さいたま市はSDGsで先進的な取り組みをしていると高評価を得ています。同市がとくに評価されている環境分野やスマートシティ構想で、どのような取り組みが行われているかをお伝えします。

SDGs先進都市のさいたま市 とくに「環境分野」の評価が高い

SDGs先進度ランキング1位のさいたま市 スマートシティ構想の注目点
(画像=slavun/stock.adobe.com)

自治体SDGs 推進評価・調査検討会が行ったアンケートによると、「SDGsについて関心がある(※)」と回答した全国の自治体は以下のように急増しています。
※「非常に関心がある」「関心がある」という回答の合計

2018年:57%(非常に関心がある9%、関心がある48%)
2019年:84.4%(非常に関心がある17.5%、関心がある66.9%)
2020年:91.1%(非常に関心がある22.2%、関心がある68.9%)
出所:SDGsに関する全国アンケート調査結果 平成30年度〜令和2年度

SDGsに関心がある自治体は、2018年段階で6割にも満たない状況でしたが2年後の2020年には9割超に達しています。

このように自治体のSDGsへの関心が強まるなか、SDGsへの取り組みで高評価なのが「さいたま市」です。日本経済新聞が発表したSDGs先進度ランキング(※)で1位を獲得。全国の815市区でSDGsへの取り組みがもっとも進んでいる都市と評価されました。
※第2回 全国市区・SDGs先進度調査(2020年10〜11月調査・2021年1月発表)

この調査は全国の815市区を対象にしたものです(ただし、回答があったのは691市区)。3分野(経済、社会、環境)・計80指標の総合得点でSDGs先進度を評価しています。1〜10位までの順位と 総合得点は次の通りです。

総合順位
(前回)
自治体名総合得点
(100点)
1(7)さいたま市76.1
2(1)京都市74.7
3(14)東京都葛飾区72.9
4(2)北九州市72.8
5(4)愛知県豊田市72.1
6(13)福岡市71.8
7(27)川崎市71.1
8(6)相模原市71
9(8)東京都板橋区69.2
10(5)岡山市69.0

引用:日本経済新聞 電子版(2021年1月9日付)

さいたま市の評価の内訳を見てみましょう。今回の「SDGs先進度ランキング」でさいたま市がとくに高評価だったのは「環境分野」でした。

  • 経済 47位/14点中9.60
  • 社会 8位/53点中36.93
  • 環境 1位/53点中29.60

さいたま市の環境分野の取り組みでも、とくに注目されているのが「スマートシティ推進」です。ここから先は、このスマートシティプロジェクトのなかでも、とくに先進度の高い次の3テーマを深掘りしていきます。

  1. スマートホーム・コミュニティ
  2. 低炭素型パーソナルモビリティ
  3. ハイパーエネルギーステーション

さいたま市のSDGs推進1.「スマートホーム・コミュニティ」

さいたま市では、2017年から浦和美園駅前のモデル街区に、ハウスメーカー3社とともにエネルギーを核とした街づくりを進めています。その内容は、スマートシティ開発をこれから進める自治体の参考になるものでしょう。

さいたま市のスマートホーム・コミュニティの概要は、モデル街区内に高気密・高断熱の住宅を建て、その屋根に太陽光パネルを設置。合わせて、蓄電池を活用することでエネルギーの地産地消を推進し、電線を地中化することで自然災害に強いレジリエンス(しなやかなで強い)な街づくりを進めるものです。

プロジェクトの規模は、施工済みの1期33区画、2期45区画に加えて、2021年12月末段階で3期51区画の先進住宅が建てられる予定です。

このプロジェクトは期が進むごとに内容が進化しているのが特徴的です。3期では新たな取り組みとして「街区内で使われる電力の実質再エネ率100%達成」「太陽光発電の余剰電力をEV(電気自動車)に充電できるチャージエリア設置」などが掲げられています。

さいたま市のSDGs推進2.「低炭素型パーソナルモビリティ」

さいたま市のSDGs推進の施策の1つが、環境負荷の少ない電動アシスト自転車やEVバイクの積極的な導入です。これらの低炭素型のモビリティを市民同士でシェアすることでエコシステムを構築。SDGsの目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」へ貢献しています。

とくにシェアサイクルの整備は進んでいて2021年2月末時点でさいたま市内333カ所にシェアサイクルポート(貸出・返却するポイント)が設けられています。

SDGs先進度ランキング1位のさいたま市 スマートシティ構想の注目点

一方、Eバイクについては、大宮駅西口などさいたま市内の各所にシェアスクーターポートが設けられ、実証実験が継続的に進められていく予定です。

SDGs先進度ランキング1位のさいたま市 スマートシティ構想の注目点

このほか、さいたま市では期間限定の実証実験ではありますが、利用者のスマホアプリに基づきAIが最適な運行ルートの設定や配車を行う「AIオンデマンド交通サービス( サービス名:みそのREDバス)」を行った実績もあります。
※実証実験1期は2021年3月〜4月まで実施。2期は未定

さいたま市のSDGs推進3.「ハイパーエネルギーステーション」

電気自動車や水素自動車などの次世代自動車が日本で普及しない理由の1つに「充電(充填)スポットが少ない」ということが挙げられます。さいたま市では自治体が積極的に充電(充填)スポットを増やす取り組みをすることで、エリア内で次世代自動車が普及しやすい環境整備を進めています。

さいたま市では、水素や電気などさまざまなエネルギーをチャージできる「ハイパーエネルギーステーション」の整備を自ら進めるともに、 同設備を立ち上げたい民間事業者に対して一部補助を行っています。その結果、2021年3月現在、市内14カ所にハイパーエネルギーステーションが誕生しています(民間施設は4カ所)。

SDGs先進度ランキング1位のさいたま市 スマートシティ構想の注目点

このハイパーエネルギーステーションは、太陽光発電の設備や蓄電池を備えるため、災害時のエネルギー供給も可能です。レジリエンスな街づくりに貢献する施策といえるでしょう。

さいたま市は「SDGs未来都市」に選定されている

ここでご紹介した、さいたま市のSDGsの取り組みはごく一部です。さいたま市は2019年に政府が選定する「SDGs未来都市」に選定されており、独自の「SDGs未来都市計画」を作成して次の目標を設定しています。

  • さいたま市内の総生産の向上
  • 大宮駅グランドセントラルステーション化構想の推進
  • 市民1人当たりの温室効果ガス排出量の削減
  • 市民1人1日当たりのごみ総排出量の削減 など

この「SDGs未来都市計画」は2021年8月時点で第1版となっています(くわしい内容はこちら)。SDGsの先進度の高い街として、さいたま市が今後この計画をどのようにバージョンアップしていくのかに注目しましょう。

さいたま市がSDGsやスマートシティに力を入れている理由とは

最後に、さいたま市がなぜSDGsやスマートシティに力を入れているのか、根本の部分を確認したいと思います。そこには「将来の人口減少の危機感」があることをさいたま市の清水勇人市長はテレビ東京の取材(2021年3月放映)で明かしています。その内容を要約すると次のようになります。

現在のさいたま市は人口が増えていますが、2030年に入ると人口の減少局面に入ってくると予想されています。同時に高齢化が進んで扶助費や民生費などの歳出が増えていくことから、人口減少が始まる前段階から持続可能な成長ができる街に自治体経営の仕組み大きく変えていかなければなりません。そのなかで鍵を握るのがSDGsということで取り組んできました。

つまり、さいたま市は将来を見据えて、たくさんの人が集まる魅力的な街にするためにSDGsやスマートシティに力を入れているのです。これはほかの自治体だけでなく、企業にとっても持続的な経営のヒントになるのではないでしょうか。

人口減少が進むなかで人材不足が進むのは必至です。SDGsに取り組むことで会社の魅力を高め、人材が集まる環境にすることは可能です。

(提供:Renergy Online



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