コロナ禍の影響もさることながら、もとより働き方改革や働く人の意識が多様化していたこともあり、テレワーク(リモートワーク)の存在感が増してきています。テレワークと親和性が高い業種では最初から雇用条件にテレワークが盛り込まれていることが多く、これからの家づくりでは「自宅で仕事をする人がいる」ことを意識する必要性が高まっています。テレワークが当たり前になる時代にふさわしい注文住宅のあり方では、どのような点に留意するべきなのでしょうか。
テレワークによくある悩み
すでにテレワークを導入している企業も多くなっており、そこからさまざまな声や課題が浮かび上がっています。
株式会社LASSICがインターネットを使って行った「テレワークの懸念点・悩み」というアンケート調査(調査期間:2020年9月1日~2020年9月4日)によると、42.15%の人が「仕事とプライベートの区別ができない」と回答しており、1位となっています。テレワーク経験者の半分近くの人が自宅の仕事環境に何らかの不満や悩みをもっていることが窺えます。
(出典:PRTIMES テレワーク・リモートワーク総合研究所が、「テレワークの懸念点・悩み」に関するアンケート結果を公開!)
その他にも10.86%の人が「周囲のノイズ、騒音が気になる」と回答しており、自宅にテレワークのための最適なスペースをなかなか確保できていない様子が浮かび上がります。同じ趣旨の調査は他にも行われていますが、そこでも同様の傾向が見られます。
その一方でテレワークに対する認知度は上昇しており、「アフターコロナ」の時代においてもテレワークを希望する人が増えていく可能性を考えると、これからのファミリー向け注文住宅では家族の生活からある程度独立したテレワーク向けのスペースを確保することがひとつの課題となるでしょう。
それでは、具体的にテレワークを前提とした注文住宅とはどのような住宅になるのかを考えてみましょう。
昔書斎、今テレワーク
主に男性向けの個室として使用する部屋に書斎があります。しかし実際に書斎がある家を見た方はそれほど多くないと思います。
資産家や執筆活動を生業としている人であればともかく、一般的な注文住宅の設計に書斎を盛り込むことは少ないのではないでしょうか。これは、自宅で仕事をすることを前提にしている注文住宅が少なかったからとも考えられます。
自宅で仕事をする人が多くなれば、テレワークのために書斎のようなスペースを必要とする人が今後多くなると思われます。
テレワーク向けスペースは3種類
テレワークに使えるスペースとして考えられるパターンは3種類があります。
完全個室
独立した部屋なので集中できるうえにオンライン会議にも適していますが、そのために専用の部屋を1つ確保する必要があります。半個室
完全に間仕切りされているわけではないものの、もっぱらテレワークに用いることができるスペースです。例えば、ロフトなど。設置しやすいメリットがある一方で、音はどうしても入ってきます。オープンコーナー
リビングや廊下の一部などを有効活用して設置するタイプです。費用や別途スペースを確保する必要ないなどのメリットがある一方で、そもそも問題解決にはならないかもしれません。
注文住宅でありがちな失敗例5選
テレワークにも対応できるファミリー向け注文住宅において、ありがちな失敗例を5つ紹介します。こうした失敗例から学び、同じ轍を踏んでしまわないよう家づくりの参考にしてください。
1.Wi-Fiが届かない
テレワークではパソコンやスマホ、タブレット端末などを多用します。そのために自宅内のWi-Fiを利用することが多くなるわけですが、テレワークのためのスペースにWi-Fiの電波が届かないようだと、仕事になりません。
特に注意したいのは3階建て住宅で、1階に無線ルーターを設置してテレワーク部屋を3階に設置するような間取りにすると、電波が届かない可能性があります。
テレワーク部屋を変更しにくい場合は、2階など家の中心になる場所にルーターを設置するか、アクセスポイントを置いて電波を中継するなどの解決法が考えられます。
また、通信速度にも気をつけたいところです。固定費を節約しようとインターネット回線を安価なプランにしてしまうと、インターネットはできても通信の速度が遅いといったことがあります。この通信速度の遅さが仕事に影響を及ぼす可能性があります。
例えば、テレワークが中心になると、ZOOMなどのWeb会議ツールを使うことが日常的にあるでしょう。通信速度が遅いと、うまく繋がらない、画質が荒い、声が伝わりにくい(または相手の聞こえにくい)といったことがありえます。
ストレスなく仕事をするためには、通信速度にも気を配りたいところです。
2.コンセントが足りない
Wi-Fiなどネット環境と同様にテレワークで重要になるのが、電源コンセントです。パソコンだけでなく各種充電器、プリンターなど複数の電子機器を使うことになるため、テレワークのスペースを設ける場合は電子機器を多く利用することを前提に、コンセントの口数に余裕を持たせておくと便利です。
テレワークのスペースを他の用途と兼用する場合、さらに電源コンセントが競合することが考えられるので、この場合は電源タップを用意したほうが手っ取り早いかもしれません。ただし、許容電流量にはくれぐれもご注意ください。
3.椅子の音が下に響く
テレワークは自宅でも仕事ができる特性上、日中のデイタイムに仕事をするとは限りません。ときには深夜に仕事をすることもあるわけですが、そのスペースの真下に寝室やリビングがあると、足音や椅子の音が下に響いてしまい、家族に迷惑をかける可能性があります。
この場合は間取りを工夫してテレワーク部屋を1階にするか、床に防音床材を使うなど、注文住宅の利点を十分にいかしたいところです。
4.スペースが足りなくなる
オフィスに出社してやっていた仕事を自宅でやるのですから、「テレワーク=パソコン1台」ではないことは感覚的におわかりいただけると思います。注文住宅で自宅内にテレワークのスペースを設ける際、「パソコン1台分のスペースがあれば」という設計にしてしまうと、拡張性がなくなってしまいます。
例えば、ノートパソコン1台が置けるだけのスペースを設計したとします。仕事をしていくうちに、1画面では不自由を感じ、外付けのディスプレイも使用し2画面にしたいと思っても、そのスペースがなければ置くことができません。
また、仕事用の資料なども置くことができないでしょう。日常生活をしているだけでも家のなかがもので一杯になってしまうのと同じように、テレワークに利用する「自宅オフィス」も油断しているとすぐにものが多くなります。
こうしたことを見越して、可能な限り余裕をもった設計しておくことをおすすめします。
5.日当たりの問題
注文住宅では日当たりに関心を払う人が多いと思いますが、それは生活だけでなくテレワークにおいても同じです。ただしテレワークの場合は、日当たりとの関係が一筋縄ではいきません。日当たりが悪くて暗い部屋だと、日中時間にそこで仕事をするために照明を長時間つけておく必要が生じ、光熱費が高くつきます。
それでは逆に日当たりのよい部屋にするべきかというと、その場合暑い夏だと日当たりがよすぎるばかりにエアコンをつける時間が長くなり、これも光熱費を押し上げてしまいます。また、日当たりが良いことで使用しているパソコンが熱くなり、不具合を起こすことも十分に考えられます。これらの対策としては、最低限の光を取り入れるため薄手のカーテンを使用するといった方法があります。
生活スペースの場合だと日当たりがよいことをポジティブに捉える人が多いと思いますが、テレワークの場合は少々事情が異なる点も考慮しておきましょう。
テレワーク時代に適した住宅づくり
注文住宅は文字どおり、設計段階から家づくりに自分たちの希望を盛り込むことができます。これからの時代は、テレワークに適した空間を設けることは必須となっていくとも考えられます。
しかし、ただ「仕事ができそうなスペース」を設けるだけでは本来の目的を果たせない可能性もあるので、その家で始まる生活をイメージし、そのなかでテレワークがどう調和するかを考えるのがテレワーク型注文住宅のセオリーです。失敗することがないよう、当記事の失敗例もぜひ参考にしてください。
(提供:タツマガ)
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