注文住宅を「土地から購入して建てる」場合は、周辺環境をしっかり調べることが大事です。いくら住み心地のよい注文住宅を建てても、周辺環境に不満が出てくればストレスを感じながら生活をしなくてはなりません。ここでは売買契約前に、周辺環境を調べるコツをご紹介します。
周辺環境チェックでは「3回現地を訪れる」のが理想
まずは、土地の周辺環境を調べるときの基本的な考え方からです。周辺環境チェックで欠かせないのは「現地に何度も足を運ぶこと」です。なぜなら、騒音、交通量、夜間の雰囲気などは、現地を一度訪れただけではわかりにくいからです。
土地家屋調査士の高橋輝さんは著書『買ってはいけない家と土地』で、「異なる条件の時に、3度現地に足を運び、近隣の環境を見ることをおすすめします」と述べています。具体的に高橋さんは、次の3度現地を訪問することを推奨しています。
- 朝の時間帯
- 夜の時間帯
- 雨の日
「3度も現地を訪れるのは難しい……」という人でも、最低2回は契約前に現地を訪れたいものです。
注文住宅の土地選びで周辺環境を調べるコツ
実際の土地の周辺環境チェックでは、住み始めてから不満が出やすいことを意識するのがよいでしょう。
不動産・住宅情報サイト「LIFULL HOME'S」が過去5年以内に住宅を購入したことのある720人を対象に行った調査によると、「周辺環境について不満に思っていること」「事前に調べておけばよかったこと」を合わせた上位トップ10は次のような結果になりました。
順位 | 内容 | 不満を感じる割合 |
---|---|---|
1位 | 駅までの距離が遠い | 21.4% |
2位 | 買い物が不便 | 12.6% |
3位 | 駅周辺が栄えていない | 10.4% |
4位 | 会社までの距離が遠い | 8.6% |
5位 | 電車やバスなど公共交通機関が少ない | 8.1% |
6位 | 周辺の音がうるさい | 6.9% |
7位 | 都心に行きにくい | 6.8% |
8位 | 保育園や学校までの距離が遠い | 6.3% |
8位 | 坂が多い | 6.3% |
10位 | お隣の建物との間隔が狭い | 5.8% |
(出典:LIFULL HOME'S 事前に調べず後悔する人が多いのは○○~周辺環境編)
これらの不満は、事前に周辺環境をしっかり調べれば防げるものばかりです。実際にどのような視点で周辺環境を調べればよいかを見ていきたいと思います。
不満1位:駅までの距離が遠い、不満5位:電車やバスなど公共交通機関が少ない
不動産会社から提供される物件情報には「最寄り駅までの徒歩分数」が表記されていることがほとんどです。また、駅から離れている立地の場合は「最寄りのバス停までの徒歩分数」が表記されていることもあるでしょう。
ただ、この徒歩分数だけを見て、注文住宅用の土地を買うのは危険です。自分の足で、最寄り駅やバス停まで実際に歩いて体感してみることが非常に大切になってきます。歩いてみると「意外に遠い!」「坂が多くて大変!」ということもあるからです。
また、例えばス停や最寄り駅まで近くても、「電車やバスの本数が少なくて不便」というケースもあります。どれくらいのサイクルでバスや電車が来るのかも必ず確認しましょう。
不満2位:買い物が不便
食料や日用品を購入するスーパーマーケットまでの距離も、生活しやすさに大きな影響があります。理想は近隣に複数のスーパーマーケットがあることです。理由は、将来エリアの人口減少などによって、そのうち1店舗が撤退しても大きな支障がないからです。
さらにいえば、スーパーマーケットに加えて公共性の高い施設が近所にあると生活に便利です(例:役所、銀行、病院、図書館、学童クラブなど)。
こういった施設はGoogleマップで調べられますが、実際の雰囲気をたしかめたほうがよいでしょう。例えば、同じ近所の病院でも、人気のない病院と地域住人に利用されている病院では状況が変わってきます。
不満6位:周辺の音がうるさい
周辺の騒音は、1回の周辺環境チェックだけだと見逃してしまう可能性もあります。そのため、2〜3回現地を訪れるのが安全です。また、昼と夜、平日と休日では、周辺の状況が違うケースは多々あります。したがって、2回目の現地調査は1回目とまったく違うシチュエーションがよいでしょう。
例えば、1回目の現地調査が昼だったとしたら2回目は夜に行く、1回目が平日だったら2回目は休日に行くといった具合です。
不満8位/保育園や学校までの距離が遠い
幼児やお子さんがいるお宅は周辺環境をチェックするとき、保育園・幼稚園・学校に関する情報収集も必須です。幼稚園や保育園は距離が遠いと、送り迎えの負担が大きくなります。公共機関があまりない立地だと雨の日はとくに大変です。
また、小学校や中学校までの距離が遠いと、子どもが交通事故や不審者などに遭うリスクが高くなります。合わせて、通学区域の学校の雰囲気や学力などの評判も調べておくといいでしょう。情報源としては、不動産会社、ご近所さん、ネットの口コミ情報などがあります。
不満8位:坂が多い
「坂が多い」という不満の原因は大きく2つ考えられます。1つ目は周辺に坂が多いことに気がつかず契約したパターンです。丘陵地はもちろん、高台になくても坂の多い立地もあるため要注意です。
2つ目は、坂が多い立地とわかっていて購入したものの、実際に暮らしてみたら予想以上にキツかったパターンです。これは周辺環境のチェック時に、最寄り駅や買い物施設までの道のりを実際に歩いてみれば確かめられます。
不満10位/お隣の建物との間隔が狭い
土地だけを見ていると意外に感じにくいですが、実際に注文住宅を建ててみると「お隣の建物の間隔が狭すぎる!」ということもあります。そのため、希望する注文住宅のだいたいの広さをもとに、それを建てたときに「お隣との間隔がどれくらいか」を把握することも重要です。
ただし、間隔を割り出すことは一般の人には難しいため、不動産会社や工務店の担当者にサポートしてもらいましょう。
隣近所にその土地の住み心地や問題点をヒアリングするのも手
現地調査のときに隣近所の人を見かけたら、話しかけて情報収集するのもよいかもしれません。すべての人が好意的に対応してくれるわけではありませんが、「この土地を買おうと思っているものですが……」と話しかけると、気さくに話してくれる人もいるはずです。
なお、隣近所の人へのヒアリング項目の例は次の通りです。
- 住みやすい場所か
- ここ最近、大きな災害や事件はなかったか
- ご近所トラブルはないか
- 子育てをしやすい場所か など
土砂崩れ・水害リスクのある土地は、斜面・河川との近さも確認
最近では、集中豪雨による土砂崩れや水害のリスクが高まっています。合わせて、首都直下型地震や南海トラフ地震など大地震のリスクも高まっているため、土地を選ぶときには災害リスクがないかを確認することも大事です。
これらのリスクはネットで公開されているハザードマップなどでも確認できますが、実際に現地を歩いてみて、斜面・河川との近さや雰囲気を見てみるのが賢い選択です。
「一生無理なく暮らせそうか」の視点も欠かせない
ここでは、注文住宅の土地選びで「周辺環境を調べるコツ」を解説してきました。最後にもうひとつ、周辺環境を調べるときに欠かせない視点として、「将来のことをイメージしながらチェックすること」も挙げておきたいと思います。
例えば、若いときはあまり気にならなかった少し離れた最寄り駅やスーパーマーケットまでの距離も、中高年や高齢者になると苦痛になってくるものです。
今の時点で住みやすい土地が、数十年後や老後に住みやすい土地とは限りません。「一生無理なく暮らせそうか」。これを意識しながら周辺を歩いてみるとよいでしょう。
(提供:タツマガ)
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