食品ロスや廃棄物の削減に力を入れる外食企業が増えています。その背景にはSDGsの意識の高まり、食品ロス削減推進法のスタートなどがあります。ここでは、私たちの身近なファーストフードの食品ロスや廃棄物の削減の取り組みの本気度をチェックします。

マクドナルドの食品ロス/廃棄物の削減:独自のMFYシステムで半減を実現

マック、ケンタッキー、モス……食品ロスと廃棄物の削減で本気度の高いファーストフードは?
(画像=AndreyArmyagov/stock.adobe.com)

日本マクドナルドホールディングス(以下、マクドナルド)は、食品ロスや容器包装などの廃棄物に関する情報開示において積極的な印象です。公式サイト上で食品ロスや廃棄物の削減についてのデータが手軽に見られます。しかも、グラフやインフォグラフィックス を用いてわかりやすく伝えているのも特徴的です。

さらにその中身を見ても、食品ロス削減に貢献する独自システムを全社的に導入したり、長期スパンで廃棄物削減の成果を出したりするなど本気度を感じさせます。

マクドナルドの食品ロス削減の要は「メイド・フォー・ユー(略称:MFY)」と呼ばれるシステムです。これは顧客からオーダーを受けてからバーガー類を調理する同社独自システムです。同社では、食品ロス削減を目指してMFYを開発し、2005年に全店導入を達成しています。なお、MFYは2017年の「第4回 食品産業もったいない大賞(農林水産省食料産業局長賞)」を受賞した食品産業でも注目度の高いシステムです。

下記のグラフはマクドナルドの食品ロス量(完成品廃棄量)のグラフですが、MFYが導入される前の2001年(赤の棒グラフ)と全店導入を終えた2005年(黄色の棒グラフ)を比較すると、廃棄量が約半分に減っていることがわかります。

マクドナルドの直近の食品ロスや廃棄物の削減状況もチェックしてみましょう。2020年の食品・容器包装廃棄物量を全店で見ると、対前年比で3.4%増加しています。

しかし、これはマクドナルド全体の売上が伸びた影響が大きいです(2020年12月期の売上高は前年比65.69億円増)。売上100万円あたりで見ると、下記のように食品・容器包装廃棄物量が対前年比で3.7%削減になっています。

ケンタッキーの食品ロス/廃棄物の削減:廃食油のリサイクル率100%を達成

日本ケンタッキー・フライド・チキン(以下、ケンタッキー)といえば、2019年に廃棄される商品をフードバンク経由で「こども食堂」などに提供する取り組みを始めたことが話題になりました。外食大手でいち早く「調理済みの食品」の提供を決めたケンタッキーの食品ロスや廃棄物の削減に関するデータを確認してみましょう。

ケンタッキーが「コミュニケーションレポート(2020年版)」で公開している再生利用等実施率は59.8%(2019年度の実績)。再生利用等実施率とは、食品廃棄物を発生抑制・減量化・再生利用などの手法でセーブしていく取り組みのことです。

同社の再生利用等実施率は食品リサイクル法に基づいて設定された外食産業の再生利用等実施率目標値50%を約10%上回っており、この目標値との比較だけで見ると「食品ロス削減が進んでいる企業」といえます。

ただ気になるのは、ケンタッキーの再生利用等実施率の直近5年間の推移です。同社の2015年度の再生利用等実施率は60.3%でした。

その後2016〜2018年度の間は再生利用等実施率が50%台に落ち込み、2019年度に2015年度レベルに近い59.8%まで戻した流れです。ケンタッキーの再生利用等実施率が一時的に低下した理由はレポートで明らかにされていませんが、今後の推移が気になります。

一方、廃棄物の排出量自体は2015年度の22,172トンから2019年度の19,718トンに低下し、取り組みが進んでいる様子がわかります。

加えて、チキンを揚げるときなどに使われた廃食油のリサイクル率は100%になっています。さらに関西地区の直営店舗で使用済みの調理油を国内鶏の飼料として再利用。この飼料で育った国内鶏が再び商品になるリサイクル・サイクルも構築されています。

モスバーガーの食品ロス/廃棄物の削減:フードバンクへの寄贈量が増加傾向

モスフードサービス(以下、モスバーガー)は、ファーストフードのなかでもエコ&ヘルシーなイメージがあります。その背景には農薬や化学肥料に頼らず育てた「モスの生野菜」の全店導入、エコマークの全店認定などの取り組みがあるでしょう。

同社は食品ロスや廃棄物の削減を進めることでエコ&ヘルシーのブランドイメージを強化し、ESGやSDGsが重視される時代においてアドバンテージを得ることも可能なポジションです。

しかし現時点のデータで見ると、モスバーガーは再生利用等実施率や廃食油のリサイクル率などにおいて際立った活動や成果がない印象です。前出のケンタッキーと比較してみましょう。

まず、2019年の再生利用等実施率ではケンタッキーの59.8%に対して、モスバーガーは50.7%。ケンタッキーを約9%下回ります。また、廃食油のリサイクル率では、ケンタッキーのリサイクル率100%に対し、モスバーガーは60%(2019年)と大きな差があります。

モスバーガーの食品ロス削減に関するポジティブな情報としては、日本ではじめて法人化されたフードバンクの「セカンドハーベスト・ジャパン」を経由して福祉施設や生活困窮者に食材を無償提供していることが挙げられます。直近のフードバンクへの食材の寄贈量は2017年よりも2018年・2019年のほうが大きく上回っています。

2017年2018年2019年
13.2トン44.8トン26.0トン

出所:モスフードサービス「ESGデータ集」

そのほかのファーストフード各社の食品ロスと廃棄物の削減

そのほかのファーストフードの食品ロスと廃棄物の削減の動きも見てみましょう。

ミスタードーナツでは、製造スケジュールと廃棄チェックリストの管理によって廃棄される商品量を抑えているとのこと。一部のエリアでは売れ残ったドーナツを飼料にしてリサイクルする活動も実施しています。また、使い終わった廃食油は液体洗剤の原料などにリサイクルし、その一部はミスタードーナツの店舗で使われています。

フレッシュネスバーガーでは、ベーカリー部門のある店舗の食品ロスを削減するために2020年からフードシェアリングアプリ「TABETE」に参加。このアプリは廃棄間近の食品を登録者にお知らせすることで食品ロス削減に貢献するものです。

フレッシュネスバーガーの「TABETE」では、好きなパン5点を詰め合わせられるサービスで食品ロスを削減しています。
※ベーカリー部門のある一部店舗で導入の施策

本気度を感じたのはマクドナルドとケンタッキーの2社

ここでは、主なファーストフードの食品ロスや廃棄物の削減についてのデータや活動をお伝えしてきました。リサーチしてみて食品ロスや廃棄物の削減の本気度を感じたのはマクドナルドとケンタッキーです。この2社は実際に削減が進んでおり、消費者にわかりやすい形で情報公開をしています。

一方、ここでは具体的な名は挙げていませんが、ファーストフードのなかには食品ロスや廃棄物の削減で「目立った活動をしていない」「情報公開をする気のない」と感じられるところも見受けられました。こういった企業の食品ロスや廃棄物の削減のモチベーションを高めるためにも、「ESGやSDGsに積極的なブランドを選ぶ」という私たち生活者の消費行動が大切です。

(提供:Renergy Online



【オススメ記事 Renergy Online】
太陽光発電投資の利回りとリスク対策、メリット、儲かる仕組みを解説
セブン-イレブン、スタバなど企業の紙ストロー導入が意味するもの
Googleが取り組む再生可能エネルギー対策とは
RE100とは?Apple、Google、IKEAなど世界的企業が参画する理由と実例
ESG投資とは?注目される理由と太陽光発電投資との関係性