サステナビリティ経営の導入を検討する企業が増えています。サステナビリティ経営とは「CSR、ESG、SDGsを意識した持続的に成長する経営」のことですが、本質はCSR、ESG、SDGsを実行することで長期的に利益を出しやすい企業体質をつくるための経営改革です。

ここではサステナビリティ経営のメリット、フレームワーク、実践方法などをご紹介します。

サステナビリティ経営とは、長期的な視点に基づくリソース配分

サステナビリティ経営 ESGやSDGsで生き残りを実現する戦略とは
(画像=BluePlanetStudio/stock.adobe.com)

サステナビリティ経営(サステナブル経営)については絶対的な定義はありませんが、日本経済新聞 電子版では「従業員、顧客、取引先、株主、非政府組織(NGO)などと連携し、社会的責任を重視しつつ持続的な企業価値向上を目指す経営のこと」と解説しています。

さらに、サステナビリティを軸にした経営改革(SX:サステナビリティ・トランスフォーメーション)の重要性を説いた書籍『SXの時代』では、サステナビリティ経営を「長期で利益を出し続けるために、リソース配分を行うこと」と解説し、次の3つの長期的な視点の重要性を挙げています。

  1. SDGs時代に対応した新しい市場から長期にわたって求められ続けること
  2. 原材料、知財、人材などの供給を長期的に維持すること
  3. 社会から信頼され続けること

上記の3つの長期的な視点は、それぞれが単体で存在しているのではなく、3つの視点が連動しているイメージです。

まず前提として、SDGsやESGの意識の高まりとともに新たな市場が生まれることが予想されます。この新しい市場のニーズに応える商品やサービスを開拓しつつ(視点1)、それに即した長期的な供給体制を整え(視点2)、社会からの信頼性を確保し続けることで(視点3)長期的に利益を出し続けることが可能になるというわけです。

サステナビリティ経営を進めるうえで、この長期的な視点がなければ「何のためにSDGsやESGを推進しているか」が希薄になります。その結果、「競合他社がやっているからSDGsに取り組もう」「資金が集まりやすいからESGに基づいた経営をしよう」といった付け焼き刃的な発想になってしまいます。

このような結果にならないよう、サステナビリティ経営、あるいは、SDGsやESGに取り組む際には「どんな新しい市場のニーズが生まれ、それに対して自社は何ができるか」「どのように供給体制と信頼性を構築すべきか」を社内外のメンバーやステークホルダーで検討・追求し、指針としてまとめて実行するのがポイントになります。

サステナビリティ経営によってステークホルダーの評価向上の効果も

前項でお伝えしたように、サステナビリティ経営を導入するメリットは「長期的に利益を出しやすい企業体質をつくれること」でした。

このサステナビリティ経営のメリットを三菱総合研究所のレポートでは、より丁寧に解説しています。同研究所ではサステナビリティ経営のメリットを「経営・事業のサステナビリティ向上」と「ステークホルダーからの評価向上」にわけて解説しています。

メリット具体的な内容
経営・事業のサステナビリティ向上事業リスクの低下
新たな事業機会の創出
ステークホルダーからの評価向上ESG投資家からの投資拡大
企業イメージ向上、顧客獲得
従業員の仕事に対する誇り・自信の醸成
志ある人材の獲得

参照:三菱総合研究所「サステナビリティ経営で不確実な時代を生き抜く」

サステナビリティ経営の上記2つのメリットが組み合わさることで「長期的に利益を出しやすい企業体質が実現しやすくなる」と理解するとわかりやすいです。

サステナビリティ経営のフレームワーク

ここまでの内容で「サステナビリティ経営とは何か」「サステナビリティ経営のメリットは何か」についてはご理解いただけたと思います。次にご紹介したいのは、サステナビリティ経営」の方向性を整理するためのフレームワークです。

サステナビリティ経営のフレームワークはいくつもの選択があります。ここではその一例として、書籍『SDGsが問いかける経営の未来』で紹介されているSDGs時代の新たな経営モデルへ変革するための5つの問いをご紹介します。

問い主な内容
1. 何を目指して変革を進めるか
(勝利の大義は何か)
自社が戦略的に目指す姿を規定する
2.どこで戦うか事業領域を改めて問い直す
3.どう勝ち抜くか社会課題解決がビジネス上の競争優位につながるロジックを明らかにして戦略を組み立てる
4.新たにどんな能力を備えるか社外のパートナーと価値を生み出す
5.どんなマネジメントシステムが必要か上記1〜4をもとに組み立てた戦略ストーリーを効率的に実行するために組織、管理指標、プロセスを適切なものに選択し直す

※上記はフレームワークのごく一部のエッセンスです。

サステナビリティ経営の実践方法

サステナビリティ経営の実践方法についてもいくつもの選択があります。ここでは三菱総合研究所の提唱する3ステップをご紹介します。

  1. マテリアリティ(重要課題)の特定
  2. 長期ビジョンの策定
  3. 目標設定と実践

ステップ1「マテリアリティ(重要課題)の特定」とは、サステナビリティ経営を通して達成したい重要課題(例:気候変動や多様性の課題など)の絞り込みと決定のことです。

流れとしては、はじめにSDGsやISOなどの国際的な目標や基準を参考にしながら候補となる課題を用意。この課題を「社会における重要度」と「自社における重要度」という2つの軸で絞り込むというものです。

ステップ2「長期ビジョンの策定」では、ステップ1で決めた重要課題をもとに、目標とする年(例:2050年など)の自社のありたい姿を描きます。ただし、やみくもに理想を描くのではなく、目標とする年の社会変化などに基づいたシナリオを設定したうえで、ありたい姿を描くことが重要です。

ステップ3「目標設定と実践」では、上記のありたい姿に基づいて、バックキャスティング思考で短期目標や中期目標を設定し実践していきます。バックキャスティング思考とは、目標とする未来を起点に現在を振り返りながら解決策を探っていくアプローチです。

参照:三菱総合研究所「サステナビリティ経営で不確実な時代を生き抜く」

上記はあくまでもエッセンスです。くわしくはこちらの三菱総合研究所の公式サイトをご参照ください。

サステナビリティ経営では外部の視点も必要

サステナビリティ経営を実践していくうえでは、経営層や従業員の視点に加えて「外部の視点」も大切です。例えば日本経済新聞 電子版では、外部の声を取り入れながらサステナビリティ経営を進める企業の実例を紹介しています。

例えばリクルートホールディングスでは、下記の3つの組織を軸にサステナビリティ経営を進めていますが、いずれも外部メンバーが所属しています。

取締役会社内メンバー4人
社外メンバー2人
サステナビリティ
推進グループ
社内メンバー5人
社外メンバー2人
サステナビリティ委員会社内メンバー5人
社外メンバー4人

なお同社の場合、外部メンバーは人権コンサルタントやNGO関係者などが務めています。
※メンバー構成は新聞記事出稿時(2020年8月30日)のものです。

サステナビリティ経営を深く知るのに役立つ3冊

本稿を通してお伝えしたかったことは、少なくともCSR、SDGs、ESGに表面的に取り組むことがサステナビリティ経営ではないということです。サステナビリティ経営のゴールは長期的な生き残りをかけて社会にインパクトのある企業活動を達成することです。その過程では事業領域や社内外の体制を問い直す必要があります。

いずれにせよ、サステナビリティ経営の方向性を決め、実践していくことは容易ではありません。必要があれば外部コンサルタントなどのサポートも必要でしょう。

最後にその前段階としてサステナビリティ経営を深く知るのに役立つ3冊の書籍タイトルを列記いたします。ご興味のある人はぜひお手にとってみてください。

・『SXの時代 ~究極の生き残り戦略としてのサステナビリティ経営(著:坂野 俊哉、磯貝 友紀)』
・SDGsが問いかける経営の未来(編:モニターデロイト)
・サステナブル経営と資本市場(著:北川哲雄ほか)

(提供:Renergy Online



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