環境関連の報道やレポートで「COP26」というキーワードと出会う機会が増えてきました。2021年10月末から開催されるCOP26は、再生可能エネルギーや温暖化対策の行方に多大な影響を与える重要な会議です。そもそもCOP26とはどんな枠組みなのか、なぜ重要度が高いのかを改めて学んでいきましょう。

COPのあとに続く数字は開催回数を示す

今さら聞けない環境キーワード「COP26」 再エネ促進・温暖化対策の鍵を握る国際会議
(画像=Ricochet64/stock.adobe.com)

COPとは「締約国会議」(Conference of the Parties)の略で読み方は「コップ」です。加盟国同士でテーマに沿った話し合いを進め、国際条約を決めるための最高機関の位置づけです。

報道やレポートでこのキーワードが出てくるときは、COPの後に数字が併記されることが多いです。G7やG20のように数字が「参加する国・地域の数」を示すこともありますが、COPの場合は「これまでに会議が開催された回数」を示します。

例えば、2019年12月にスペインのマドリードで開催された25回目の会議は「COP25」、2021年10月末から11月にかけてイギリスのグラスゴーで開催される26回目の会議は「COP26」になります。

COPにはいくつかの種類がある

COPというと多国間で「環境問題について話し合う場」というイメージをお持ちの人もいるかもしれません。しかし、実際には環境問題問題だけでなく、生物多様性、砂漠化対処などほかのテーマの締約国会議もあります

COPの種類COPの表記
気候変動枠組条約COP-FCCC
生物多様性条約COP-CBD
砂漠化対処条約COP-CCD

それぞれのCOPで必要に応じて国際間で話し合いを進めていきますが、最終決定はCOPでされます。そのため、COPの話し合いの過程や決定内容に注目が集まるのです。

日本で何の説明もなくCOPというキーワードが出てきた場合は、「気候変動枠組条約」のと捉えてよいでしょう。COP26では197カ国・地域が参加し、締結を目指します。

この参加国の多さがCOPの長所でもあり、短所でもあるといえます。話し合いがまとまれば参加国が多いため、世界全体で共有する大きな流れをつくれます。逆に、参加国が多いせいで一枚岩になれず、不完全燃焼で終わるケースもあります。

これまでのCOPのポイント「京都議定書」と「パリ協定」

過去のCOP(気候変動枠組条約)の流れを把握しておくと、2021年10月末から開催のCOP26の背景を理解しやすくなります。抑えたいポイントは「京都議定書(1997年採択)」と「パリ協定(2015年)」です。

COPがスタートしたのは1994年、このときに気候変動枠組条約が発効されました その後、日本で行われたCOP3で「京都議定書」が採択され、2005年から発効されることになりました。京都議定書の内容は、先進国全体で温室効果ガス削減を目指すものでした。しかし、発効前の2001年にアメリカが京都議定書から離脱をしてしまいます。

その後、2015年のCOP21で京都議定書に代わる「パリ協定」が採択されました。これは世界の平均気温の上昇を(産業革命以前と比べて)2度未満に抑えることを目指し、努力目標として1.5度以下を掲げました。

しかし、2020年にトランプ政権下だったアメリカがパリ協定から離脱。バイデン政権が誕生した後の2021年に復帰するという一幕もありました。COP26の注目点は、温室効果ガスの人口一人当たり排出量世界一のアメリカを交えながら下記の3つをどこまで詰められるかが鍵になるでしょう。

  1. 各国が設定した2030年までの排出量削減目標の引き上げ
  2. 複数の国が協力して排出量を減らす6条のルールづくり
  3. 排出量取引など温暖化防止のシステムについての協議

日本は前回のCOP25で国際的な信頼を失った

COP26に対しては「世界の温暖化対策の正念場」というような表現が使われますが、日本単体で見てもまさに正念場です。日本は前回のCOP25で「温暖化対策で消極的な国」とのイメージを世界中に拡散してしまいました。この不信感をCOP26で解消できるかに注目が集まります。

日本がCOP25でネガティブなイメージを拡散してしまった要因の1つは、不名誉な「化石賞」を受賞してしまったことです。化石賞は温暖化対策に消極的と見なされた国に贈られる賞です。ちなみに、「化石」という言葉には「化石燃料」と「化石のような古い考え方」の2つの意味が込められています。

化石賞はCOP公式の賞ではありませんが、1,300団体を超えるNGOのネットーワークを束ねるCANインターナショナルが温暖化対策に消極的な国に与えるものでメディア露出が高いイベントです。化石賞の受賞によって日本は「温暖化対策で遅れた国」というレッテルを貼られることになりました。

日本が化石賞を受賞した理由は、石炭火力発電の依存度の高さ、それに伴う閣僚の発言です。COP25では、日本の石炭火力発電の依存度が「世界的な脱炭素に逆行している」と指摘されていました。これに加えて、梶山弘志経済産業大臣が「石炭火力発電を必要とする」と誤解されるような発言したことで不信感が一気に強まりました。

対照的に、ヨーロッパの主要国はCOP25を契機に石炭火力発電の全廃目標を打ち出しています。たとえば、フランスは2022年、イギリスは2024年、イタリアは2025年を目安に石炭火力発電の全廃を発表しています。

日本の新たな電源構成案では再生可能エネルギーの比率が上昇

日本がCOP25でつくってしまった「温暖化対策で消極的な国」というイメージをCOP26で払拭するには、国際的に共感を得られる電源構成を示すことが求められます。電源構成とは、発電電源の内訳のことで火力(天然ガス・石油・石炭)、原子力、再生可能エネルギーなどの種類があります。

当然ながら、世界的な脱炭素の流れのなかでは火力の比率を抑えるほど(再生可能エネルギーの比率があがるほど)評価されやすくなります。

日本では2020年10月、菅首相が就任後初の所信表明演説で「2050年までのカーボンニュートラル宣言」をしました。これを実行するための裏付けとしてよりハードルの高い電源構成を提示する必要がありました。

COP26を数ヶ月後に控えた2021年7月、経済産業省は新たなエネルギー基本計画の原案を発表、新たな2030年の電源構成案が提示されました。その内容は下記の通りです。

電源現計画の比率新計画の比率
再生可能エネルギー22~24%36~38%
原子力20~22%現計画のまま
水素やアンモニア-1%
火力56%41%

この電源構成案の一番の注目点は、再生可能エネルギー比率が14%上がり、火力比率が15%下がった脱炭素の流れを受けた改善内容になっているところです。

なお、欧州委員会が2021年7月に発表した「再生可能エネルギー指令の改正案」では2030年の再生可能エネルギー比率目標を現計画の「少なくとも32%」から「少なくとも40%」に引き上げたことが注目されています。日本の目標値はこれを下回っているため、国際的に共感が得られるかは微妙なところです。

COP26議長から届けられた日本に対する苦言とは

ここでは、COP26が今後の再エネ促進・温暖化対策にとって重要な国際会議であることをお伝えしてきました。最後にCOP26の議長であるアロック・シャルマ氏が2021年7月、朝日新聞に寄稿した内容の一部を抜粋します。

世界全体の平均気温の上昇を(産業革命以前と比べて)1.5度に収めるという目標についてシャルマ氏は「気候変動による最悪の影響を回避できると科学的に示された目標」と強調。この目標を世界で共有し実行することの大切さを説いています。

また、日本に対しては「2050年までのカーボンニュートラル宣言」を評価しつつも次のような苦言も呈しています。

1.5度目標を目指すのであれば、COP26で二酸化炭素(CO2)の最大の排出源である石炭火力発電に終止符を打ち、クリーンなエネルギーへの移行を促進していくべきだ。

上記の議長の提言に対して、日本がCOP26で石炭火力発電の全廃する年の公表、あるいはその道筋となる発言ができるかに世界的な注目が集まります。

※新たな2030年の電源構成案での石炭火力発電の比率は19%です。

(提供:Renergy Online



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