EU(欧州連合)が2035年にガソリン車の新車販売を禁止する包括案を発表しました。国内外の自動車メーカーはどのように対応するのでしょうか。個人もEV(電気自動車)への切り替えを考える必要があります。

ここでは国内外各自動車メーカーの取り組みと、充電スタンド設置のために太陽光発電システムを導入するメリットについて紹介します。 

EUが目指す2035年ゼロエミッション車計画

EUが打ち出した「2035年ガソリン車販売禁止」で、太陽光発電導入は待ったなし
(画像=NewAfrica/stock.adobe.com)

日本経済新聞の報道によると、2021年7月14日、EUの欧州委員会は2035年にガソリン車をはじめとする内燃機関車の新車販売を禁止する方針を打ち出しました。

EUが目指すのはCO2(二酸化炭素)排出ゼロの「ゼロエミッション」を義務付けることです。欧州委員会では、2030年までにEU域内の温暖化ガス排出量を1990年比で55%減らすことを目指していますが、今回の販売禁止政策はそのための対策の一環です。

さらにEUは、2030年時点における乗用車のCO2規制も強化します。EUは2019年に2021年比で37.5%減らす目標を決めたばかりです。しかし、2050年の「温室効果ガス実質ゼロ」の目標達成には一段の強化が必要と判断し、55%に引き上げることにしたものです。

世界で最も早く全車ゼロエミッションを義務付けているのは2025年が目標のノルウェーです。そして2030年が目標のオランダ、イスラエルがこれに続きます。世界的に脱エンジン車の時期は早まりつつあります。

ガソリン車販売禁止は世界的な流れ

いま世界ではガソリン車販売禁止が大きな流れになっています。NHKの報道によると、米国のバイデン大統領は2021年8月5日、2030年に新車販売の50%を「ゼロエミッション車」にする方針を打ち出しました。トランプ前政権が緩和した燃費・排ガス規制についても強化する方針で、前政権との違いをアピールします。

ただ、EUが打ち出したガソリン車の販売全面禁止に比べると、ハイブリッド車を含むガソリン車の販売を認める点ではやや中途半端な印象もあります。目標達成に向けては充電設備の拡大や燃費規制の強化を進める方針です。米国の2020年の新車全体に占めるEV車の割合は2%程度にとどまっており、50%の実現には自動車メーカーの協力も必要になるでしょう。

EU、米国以外では、英国が2030年までにガソリン車やディーゼル車の新車販売を禁止します。世界最大の自動車市場である中国は2035年を目途に新車をEV車やハイブリッド車にする方針です。そして日本では2035年までに新車の乗用車をEV車やハイブリッド車、燃料電池車にする目標を掲げています。

海外自動車メーカーのEV車への取り組み

では、海外の自動車メーカーはEVの開発・販売にどのように取り組んでいるのでしょうか。各国の具体的な数値目標を交えて見てみましょう。

まず米国は、バイデン大統領が発表したゼロエミッション車50%の目標表明を受け、GMやフォードなどが2030年までに年間販売台数の40~50%をゼロエミッション車に切り替える目標を示しています。

欧州では、ドイツ自動車メーカーの取り組みが活発です。フォルクスワーゲンは、2030年における欧州での新車販売の6割をEV車にする計画を立てています。BMWは小型自動車「MINI」シリーズで、2025年発売のモデルを最後に、2030年代の早い時期に完全EV化を目指します。

最も早く完全EV化を実現しそうなのが、メルセデス・ベンツを販売するダイムラーです。同社では2025年以降に発売するメルセデス・ベンツの新型車を全てEVとする事業戦略を発表しています。同社が工場ネットワークの構築など、2022~2030年にかけてEV関連に投じる予算は実に400億ユーロ(1ユーロ130円レートで約5兆2,000億円)にも及びます。

ドイツ以外では、フランスのルノーが次世代EVコンセプトとなる「ルノーメガーヌeヴィジョン」を2021年に発売する予定です。メガーヌの名前を冠したこの車は、電動車専用のプラットフォーム「CMF-EV」を採用しています。このプラットフォームは日産EV「アリア」と共有であることでも注目されています。

海外自動車メーカーでは完全EV化を発表しているメーカーは少数ですが、概ね半分はEV車になる見込みと考えてよいでしょう。

国内自動車メーカーのEV車への取り組み

一方、国内自動車メーカーもEVの開発に取り組んでいます。最大手トヨタ自動車は、2021年4-6月期の決算が四半期ベースで過去最高益を更新するなど世界での販売台数が大きく伸びていますが、そのうち米国での販売が全体の25%程度を占めています。

同社は2030年に、販売する新車の70%をハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、EV、燃料電池車にする計画です。日本が掲げる2035年の目標車種ともマッチした計画といってよいでしょう。

本田技研工業は米国での販売比率が30%と、トヨタ以上に米国への依存度が高くなっています。同社では北米で販売する新車のうち、2030年にEVと燃料電池車の割合を40%、2040年に100%とする計画を立てています。

また、2021年からはEV強化のため世代交代を図り、2,000人の早期退職者を募集したことでも話題になりました。

日産自動車は、世界初の量産型EVとして発売した「リーフ」の販売が好調なことから、EVの開発ペースを加速させます。2022年度までに新型EV3車種と「e-POWER」を搭載した5車種を国内で発売する計画です。電動駆動車のラインアップを増やすことにより、2022年度に電動駆動車の割合が40%になる見通しです。

このほか、米国で自動車の販売を行っているSUBARU、マツダもハイブリッド車を含めたEVの投入目標を打ち出しています。SUBARUは2030年までに全世界の新車販売のうち、40%以上をEVやハイブリッド車とします。

マツダは、2030年に生産する車両のうち、EVの比率を25%程度に引き上げる計画です。2018年に発表したEV化率5%を大幅に上方修正しています。

日本の自動車メーカーも海外勢に劣らぬ取り組みの姿勢を見せているのはSDGsの観点からも喜ばしいことです。

自宅へのEV充電スタンド設置には太陽光発電導入が不可欠

2035年以降はEV車と中古のガソリン車を平行販売することが予想されますが、問題は年を追うごとにガソリン車の廃車が進み、希少性が増してガソリン車の価格が高騰する恐れがあることです。ガソリンスタンドも減少の傾向を辿るでしょう。ガソリン車に乗り続けるにはリスクがあることがわかります。

その点、EV車は自宅で充電が可能なので利便性が高まります。自宅にEV車の充電スタンドを設置する場合、太陽光発電システムを導入することで全体のコストを下げることができます。

EUが打ち出した「2035年ガソリン車販売禁止」で、太陽光発電導入は待ったなし

図のように太陽光発電システムで発電した電力からEV車に充電したり、蓄電池に電気を貯めておくこともできます。

エコキュート(自然冷媒ヒートポンプ給湯器)などと組み合わせることもできるため、EV以外にも活用方法があります。自宅で使い切れない電力は、電力事業者に売電する方法もあるので、全体的なコストダウンは大きなものになります。

導入費用はかかりますが、国からの補助金もあるので自己負担はそれほど大きくはなりません。「快適な室内環境と、年間で消費するエネルギー量が正味で概ねゼロ以下を同時に実現する住宅」(環境省の定義)である「ZEH住宅」を建てる際は、一般ZEH住宅で60万円+α(90万円の先進的再エネ熱等導入支援事業と併願可。2021年度分)の補助金が支給されます。

自動車のEV化と住宅のZEH化は時代の流れで、これからも加速することが予想されます。太陽光発電システムを今から導入し、電気代の削減ととともにEVへの切り替えに備えるのも有効な選択肢といえます。

(提供:Renergy Online



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