早い時期から再生可能エネルギー事業に進出したオリックスは金融業だけでなく、再エネ先進企業としても知られています。オリックスは今後どのようなESG活動を展開していくのでしょうか。オリックスの事業内容やESGへの取り組みを紹介し、併せてESG投資価値を分析します。

オリックスは再エネ先進企業

再エネ先進企業オリックスのESG投資価値を分析する
(画像=metamorworks/stock.adobe.com)

オリックスは1995年から風力発電事業等を行っている再生可能エネルギー先進企業です。「脱炭素社会への移行」を掲げて再生可能エネルギーの普及に取り組み、2021年3月末時点で稼働済みの発電所設備容量は全世界で3GWに達します。

この数字は日本の事業者のなかでもトップクラスです。具体的には以下のような分野の再生可能エネルギー事業を展開しています。

メガソーラー発電事業

自治体や企業などが保有する遊休地を賃借して、設備容量1,000kW(1MW)以上の大規模な太陽光発電所(メガソーラー)を建設・運営しています。遠隔監視システムを使って各発電所の状況を把握し、高い品質と発電効率を維持しています。

屋根設置型太陽光発電事業

工場や倉庫など大型施設の屋根を賃借して太陽光発電パネルを設置する「屋根借り方式」の太陽光発電事業を行っています。「PPA高圧モデル」に該当する事業で、屋根を貸す顧客は自己負担なしで太陽光発電パネルを設置できます。そのため、顧客にとって本来収益を生まない屋根を有効活用でき、太陽光パネルの遮熱効果で施設内空調の効率が改善し、自家消費電源として利用できるメリットがあります。

バイオマス発電事業

群馬県吾妻町で、国内材を燃料チップとした木質チップ専焼の「吾妻木質バイオマス発電所」を運営しています。設備容量は1万3,600kWで2020年3月期の年間送電量は9,000万kWに達します。木質バイオマス発電によって地域の森林整備や木質チップのリサイクル率向上にも貢献しています。

風力発電事業

1995年に国内で陸上風力発電事業に出資して以降、蓄積してきた風力発電への知見を生かし、洋上風力発電を加えた風力発電事業の開発に向け調査・検討しています。千葉県銚子沖で洋上風力発電の事業性を検討するため、海底地質調査等を実施しました。今後の風力発電事業の拡大が注目されます。

地熱発電事業

オリックスはホテル事業も展開していますが、保有する「別府温泉杉乃井ホテル」(大分県別府市)で自家用としては国内最大規模となる設備容量1,900kWの地熱発電所を保有・運営しています。また、2022年を目途に、北海道函館市南茅部地域で設備容量6,500kW程度、東京都八丈町で最大出力4,400kWの地熱発電所の運転開始を計画しています。その後も東北地域や九州地域で地熱発電所を建設する計画です。

海外の再生可能エネルギー事業

オリックスは海外でも再生可能エネルギー事業を展開しています。インドでは大手再生可能エネルギー事業者「Greenko」に資本参加しています。Greenkoはインド国内で太陽光発電、風力発電、水力発電など設備容量合計6.9GW(2021年2月末時点)の稼働済み再エネ発電施設を運営しています。

ベトナムでは水力発電事業者「BPC」に資本参加しています。BPCは2020年3月現在、ベトナム全土で20カ所の水力や太陽光発電事業所を建設・運営しています。ベトナムでは電力需要が年平均8.5%以上伸びていることから、オリックスはベトナムでも幅広く事業を展開する意向です。

米国では「ORIX Corporation USA」が、2021年3月時点で全米12州63カ所において太陽光発電事業所を運営しています。想定する合計設備容量は8万kWです。

オリックスは海外での地熱発電にも注目しており、地熱発電事業などを手掛ける「Ormat」に資本参加しています。Ormatの地熱発電設備は2020年3月現在、全世界で設備容量300万kWの累積導入実績を有します。この数値はバイナリー式発電設備導入量で世界トップの約7割のシェアを占めています。

参考:オリックスグループ公式サイト(各数値は公式サイト掲載のものです)

オリックスは農業にも進出している

オリックスは2014年から農業にも進出しています。「生産事業」では、「オリックス八ヶ岳農園」(長野県諏訪郡富士見町)、「やぶファーム」(兵庫県養父市)、「オリックス農業」(兵庫県養父市)、「スマートアグリカルチャー磐田」(静岡県磐田市)の4つの事業所で事業パートナーと野菜の生産事業を展開。生産した青果はオリックスグループの営業ネットワークを活用して小売業や飲食業などに販売しています。

「青果流通事業」では、オリックスフードサプライ株式会社が自社生産の野菜だけでなく、提携している生産者の青果の仕入れや販売を行っています。

近年日本では農業従事者の高齢化や後継者不足で生産量の減少が課題となっていますが、オリックスでは生産者と小売業者をつなぐことで、青果を全国へ安定供給することを目指しています。

環境負荷低減を目指す新たな取り組みとは

オリックスは2021年7月19日、環境負荷低減を目指して新たな取り組みを発表しています。同社のプレスリリースによると、広島県福山市に本社のある常石造船株式会社が開発した、新型のばら積み貨物船「TESS66エアロライン」2隻を、船主として初の発注を行っています。竣工は2023年の予定です。

今回発注した船は、2025年以降の国際環境規制である「EEDIフェーズ3」(CO2を基準値比で30%削減)を前倒しでクリアし、従来の船より環境負荷の低減と燃費の向上が期待できます。オリックスは1960年代後半から国内で中古船のリース事業を始め、1970年代前半から国際的規模で船舶ファイナンス事業を展開しています。

同社はプレスリリースのなかで、「今後もこれまで培った経験や専門性をもとに、企業活動を通じた持続可能な社会の実現に貢献しながら、環境負荷の低減に積極的に取り組んでいく」としています。

オリックスはESG投資価値が高い

環境意識の高いオリックスですが、同社にESG投資した場合、どの程度のリターンを得られるのか計算してみましょう。オリックスの年間配当金は2021年3月期の実績で78円です。2021年8月12日終値株価 2,079円で換算した配当利回りは3.75%の高利回りになっています。

株主優待も充実しており、関連事業を割引料金で利用できる株主カードが株主通信に同封される形で贈呈されます。また、取引企業の商品をギフトカタログにした「ふるさと優待」が100株以上の保有で贈呈され、好きな商品1品を選ぶことができます。

「ふるさと優待」は保有期間3年未満で5,000円相当の商品、3年以上の継続保有で1万円相当の商品に分かれますが、5,000円相当の場合、配当と併せた総リターン(100株保有の場合)は以下のようになります。

(7,800円+5,000円)÷(株価2,079円×100株)=6.16%(配当金はNISAを利用して非課税の場合)

配当金と株主優待で6%以上の利回りを確保できれば、ESG投資価値はかなり高いと判断してよいでしょう。200株保有でも優待内容は同じであるため、100株保有が最も総合利回りが高くなります。

オリックスの投資指標

最後にオリックスの投資指標を確認しましょう。

【オリックスの投資指標】
・株価 2,079円(2021年8月12日終値)
・配当金 78円(2021年3月期)
・配当利回り 3.75%(2021年8月12日終値で換算)
・PER(株価収益率) 10.06倍(予想1株利益206.6円で算出)
・PBR(株価純資産倍率) 0.84倍(実績1株純資産2,487.77円で算出)

オリックス株はPER10.06倍、PBR0.84倍とかなり割安に放置されています。株式市場では過小評価されているオリックスですが、メガ企業らしいスケールの大きな再生可能エネルギー普及への取り組みは、今後も脱炭素社会になくてはならぬ存在となりそうです。

※本記事はオリックスの事業内容やESG投資について分析するもので、当該銘柄への投資を推奨するものではありません。

(提供:Renergy Online



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