電気料金の上昇や世界的なESG、SDGs活動の高まりで、企業も再生可能エネルギーを利用して事業を行うことが避けられない状況になりつつあります。

太陽光発電システムを導入する場合、PPAモデル(第三者保有)と自社保有のどちらを選べばよいのでしょうか。それぞれのメリット・デメリットを比較し、PPAの種類についても紹介します。

第三者保有と自社保有の違い

太陽光発電を導入するならPPAモデル(第三者保有)と自社保有のどちらを選ぶ?
(画像=lovelyday12/stock.adobe.com)

電気料金上昇の大きな要因になっているのが「再エネ賦課金」の存在です。グラフのように再エネ賦課金は年々増加の傾向を辿っています。2021年の再エネ賦課金はさらに上がって3.36円/kWhとなり、5月検針分から適用されています。

再生可能エネルギー普及のためにはやむを得ない賦課金ではありますが、負担を軽減できる方法があれば取り入れたいところでしょう。その方法の1つが太陽光発電設備の第三者保有と自社保有です。再エネ賦課金は電力会社から購入する電力量に比例して負担が大きくなる仕組みになっています。

そこで自社で発電する電力量を増やすことによって、電力会社から購入する電力量が減れば、再エネ賦課金の負担を軽減することができるのです。

では、太陽光発電設備の第三者保有と自社保有にはどのような違いがあるのでしょうか。第三者保有と自社保有の一番大きな違いは太陽光発電設備の所有形態です。

自社所有は設備が自社のものですので、保守・メンテナンスも自分で行う必要があります。第三者保有はPPA事業者が設備を保有しますので、自社で保守・メンテナンスを行う必要はありません。

次に大きな違いは電気料金の負担です。自社保有においては自社で消費した電気は無料になります。第三者保有では、原則として自社で消費した分もあらかじめ契約した料金で事業者に支払う必要があります。

このほかにも第三者保有と自社保有にはさまざまな違いがありますので、重視する目的別にそれぞれのメリット・デメリットを知っておく必要があります。

初期費用を抑えたいなら第三者保有

初期費用を抑えたい場合は第三者保有が適しています。経済産業省・調達価格等算定委員会の調べによると、太陽光発電パネルのシステム導入には下表のような費用がかかります。システム容量4kWの場合は106万4,000円の初期費用がかかることになります。決して少ない金額ではありません。

初期費用をあまりかけたくないという方針であれば、第三者保有を選ぶことにより初期費用無料で導入することができます。第三者保有の場合、自家消費分の電気料金はPPA事業者に支払う必要が生じますが、一般の電力会社よりも安い料金設定で契約できるメリットがあります。

▽システム費用の内訳(2019年、システム容量1kWあたり)

工事費6.4万円
設備費太陽光パネル14.1万円
パワーコンディショナー4.1万円
架台2.8万円
その他1.9万円
値引き▲2.7万円
合計26.6万円

出典:経済産業省・調達価格等算定委員会「令和2年度の調達価格等に関する意見」を基に作成

電気料金・売電収入で選ぶなら自社保有

一方で設置費用はかかっても、長い目で見て電気料金を削減できたほうがよいという考え方もあるでしょう。太陽光発電システムを自社保有すると、自社で発電した分の電気料金がかからないだけでなく、余剰電力が出た場合に売電して収入を得ることができます。

事業用太陽光発電(10kW以上50kW未満)の2021年度の買取価格は12円+税で、前年の13円+税よりも1円低くなっています。ただし、この価格で売電するには自家消費を最低30%行う必要があります。

また、蓄電池を使って災害時のために電気を貯めておくことも可能です。蓄電池システムを併用することで災害時の非常用電源となるため、事業再開に備えたBCP対策にもなります。

初期費用を何年で回収できるかは、自社ビルの立地にもよります。日照時間を十分に確保できる立地であれば安定した発電を行える可能性が高いでしょう。

資産管理・保守メンテナンスが容易な第三者保有

第三者保有は設備が発電事業者の保有になりますので、自社の資産として計上する必要はありません。自社保有の場合は設備が資産の1つとして扱われます。会計上は決算時に減価償却する必要があります。

第三者保有はメンテナンス費用もかからないので、修繕費など臨時の出費が出ないというメリットがあります。資産管理や保守・メンテナンスの手間がないため、容易に運営できるのが第三者保有の魅力といってよいでしょう。自社保有の場合は、メンテナンス費用のほかにも固定資産税や保険料も負担しなければなりません。

また、第三者保有は契約期間が15~20年と長期にわたりますので、自社ビルの建て替えや改修を行う予定がある場合は事業者とよく相談し、慎重に判断する必要があります。

契約終了後、太陽光発電設備は無償で事業者から自社に譲渡されますが、所有権が移転するため保守・メンテナンスを自社で行わなければなりません。

設置場所の条件が少ない自社保有

第三者保有には、設置する場所に多くの条件が付くというデメリットがあります。PPA事業者にとっては十分な日射量が見込める場所であることが望ましく、積雪・塩害・強風などがない地域である必要があります。

また、容量に関しては設置容量が下限値を下回らないことが条件になります。さらに長期契約であることから与信面の条件が厳しい場合もあります。必ず設置できるわけではないことに留意しなければなりません。

その点、自社保有は第三者保有よりも設置場所の条件が少ない点で有利といえます。ただし、財団法人新エネルギー財団が示した太陽光パネルの設置基準である「屋根に要求される耐久性・防水性」「安全性を確保できる強度を有する」「荷重に耐えられる強度と構造を持つ」という条件は自社保有であってもクリアする必要があるでしょう。

自社に最適なPPAモデルを選ぶことが大事

PPAモデルを検討する場合、いくつかの種類がありますので、自社に最適なPPAモデルを選ぶことが大事です。PPAモデルには大きく分けて「オンサイトPPA」「オフサイトPPA」「バーチャルPPA」の3つがあります。

オンサイトPPAは、需要家である企業の施設の屋根や隣接する土地に太陽光発電設備を設置して電力供給契約を結ぶ仕組みです。日本ではオンサイトPPAが主流になっています。

もう1つのオフサイトPPAは、企業施設に隣接していない遠隔地に発電設備を設置し、公共の送配電網を通じて電力を供給する仕組みの契約です。

自社施設や隣接地に限定されるオンサイトPPAに比べ、オフサイトPPAのほうが敷地面積に制限がないため、大規模な発電に向いています。オンサイトPPAとオフサイトPPAは現実(フィジカル)に電力を供給することから、フィジカルPPAと呼ばれています。

これに対しバーチャルPPAは、発電事業者が企業に電力を供給することはありません。発電事業者は発電した電力を卸電力市場で売却します。企業は小売電気事業者から契約した価格で電力を購入し、発電した電力と同量の環境価値を得ることができます。

しかし、発電事業者が企業と契約した固定価格と市場価格に差額が生じます。そこで月ごとに差額を計算し、発電事業者と企業の間で精算するという仕組みです。現実に電力を供給しないことから、バーチャル(仮想)PPAと呼ばれています。

電気料金の長期上昇が続き、自社の経営コストを圧迫しています。コストダウンと環境対策を両立できる太陽光発電システムの導入は待ったなしの状況といえます。第三者保有と自社保有のどちらが自社に適しているかを慎重に検討し、電気料金のコストダウンにつなげることが求められます。

(提供:Renergy Online



【オススメ記事 Renergy Online】
太陽光発電投資の利回りとリスク対策、メリット、儲かる仕組みを解説
セブン-イレブン、スタバなど企業の紙ストロー導入が意味するもの
Googleが取り組む再生可能エネルギー対策とは
RE100とは?Apple、Google、IKEAなど世界的企業が参画する理由と実例
ESG投資とは?注目される理由と太陽光発電投資との関係性