自社ビルを利用して太陽光発電を導入する企業が増えています。自社ビルの屋根を使って導入するにはおもに4つの方法があります。これから太陽光発電の導入を検討する企業にとっては、どの方法を選んだらよいか迷うところでしょう。太陽光発電を導入する4つの方法について解説します。

自社ビルの屋根有効活用が必須の時代へ

自社ビルの屋根を利用するなら検討したい、太陽光発電導入4つの方法
(画像=naka/stock.adobe.com)

地球温暖化の影響で、世界的に異常気象による災害が頻発しています。地球温暖化につながるCO2(二酸化炭素)の削減は世界共通の課題になっています。CO2削減の鍵を握っているのが再生可能エネルギーの普及です。

再生可能エネルギー普及に伴う「再エネ賦課金」の増加で電気料金は長期上昇傾向にあります。再エネ賦課金の単価は、2021年5月検針分から3.36円/kWhになり、前年の2.98円/kWhから12.75%上昇しました。

再エネ賦課金は今後も上昇が見込まれます。企業にとって太陽光発電システムを導入し、電気代を削減するため自社ビルの屋根を有効活用することが必須の時代になってきたといえるでしょう。

電気料金の上昇に加え、ESGやSDGsへの取り組みが企業に要求されていることも導入する理由の1つになっています。企業のホームページにもESG、SDGs、サステナビリティという言葉が多く見られるようになっています。

太陽光発電システムの導入方法には「屋根貸し」「リース契約」「自社保有」「PPAモデル(第三者保有)」の4種類があります。4つの方法のメリット・デメリットを確認しましょう。

不動産賃貸に近い「屋根貸し」

1つめの方法は、自社ビルの屋根を太陽光発電事業者に貸し出す「屋根貸し」です。太陽光発電設備を設置した事業者が、発電した電気を電力会社に売電し、収入のなかから建物所有者に賃借料を支払うという仕組みです。自社で発電せず場所だけ貸し出すため、不動産賃貸に近い形といえます。

屋根貸しのメリット

屋根貸しは発電事業者が設備を無償で設置し、メンテナンスも行うため、建物所有者に一切コストが発生しません。コストをかけずに定期収入が入るのがメリットで、マイナスになるリスクが少ない運用方法といえます。

屋根貸しのデメリット

デメリットは発電した電気の所有権は発電事業者にあるため、それほど多くの収入を得られないことです。チェーン店になっているようなビジネスモデルならともかく、本社ビルでのみ屋根貸しを行っても、事業の柱になるような収入を得ることは難しいでしょう。

契約期間が長期になるのもデメリットです。契約期間中は屋根の使用が制限され、契約終了後も設備は自社の所有になりません。

太陽光発電設備を借りる「リース契約」

2つめは馴染みが深い「リース契約」という方法です。車やコピー機をリースするのと同じような契約スタイルにあたります。

リース契約のメリット

リース契約は太陽光発電設備を借りる形ですので、初期費用はかかりません。また、発電した電気は自社で使用でき、売電収入も得られます。初期費用をかけずに自家消費や売電ができるのは大きなメリットです。屋根貸しと違い、契約期間終了後は設備が自社の所有になります。

リース契約のデメリット

デメリットは、リース料金を回収できない可能性があることです。リース料金は毎月一定であるのに対し、発電量は保証されていないため、売電した収入とリース料金を相殺すると、それほど多くの利益は得られない恐れがあります。比較的リスクが高い方法といえます。

また、設備のメンテナンス費用が住宅用と産業用で異なる場合があります。住宅用ではメンテナンスは業者が行いますが、産業用ではメンテナンス費用も使用者が負担するケースがあります。事業者が負担するケースでも、メンテナンス料金を含んだリース料金になっている場合があるので注意が必要です。契約によって負担する側が異なるので条件をよく確認して契約することが大事です。

オーソドックスな「自社保有型」

「自社保有型」は、太陽光発電設備を購入して自社で運用やメンテナンスを行う方法です。4つの方法のなかでは最もオーソドックスといえます。

自社保有型のメリット

自社保有型のメリットは、設備の権利が自社にあるので、制約なしに自由に運用できることです。自社保有なので発電した電気は自社で使うことができ、電気代を節約できます。また、余った電気は電力会社に売電できるので、無駄なく運用することが可能です。発電した電気を自社で使用すれば「再エネ賦課金」はかかりません。

自家消費した電力には「環境価値」がつくので、環境対策への取り組みが評価され、企業価値の向上につながります。設備は自社保有のため、減価償却費を計上することにより節税になるメリットがあります。

自社保有型のデメリット

一方デメリットは、ある程度の初期費用がかかることです。自社で保有しているため、保守・メンテナンス費用を定期的に負担しなければなりません。また、固定資産税や保険料の負担も生じます。自社保有ではコストはほとんど自社で負担すると考えたほうがよいでしょう。

初期費用がかからず節電にもなる「PPAモデル」

以前からある自社保有型に代わり、最近導入する企業が増えているのが「PPAモデル」です。別名「第三者保有」とも呼ばれます。PPAモデルには「オンサイトPPA」と「オフサイトPPA」があります。一般的に利用されているのがオンサイトPPAです。

オンサイトPPAは、自社ビルなど企業施設の屋根や隣接する土地(オンサイト)に太陽光発電設備を設置して電力供給契約を結ぶ仕組みです。もう1つのオフサイトPPAは、企業施設に隣接する土地から離れている遠隔地(オフサイト)に発電設備を設置し、公共の送配電網を通じて電力を供給する仕組みです。広い土地を確保できるため、大規模な発電に向いています。

PPAモデルのメリット

PPAモデルのメリットは、初期費用と保守・メンテナンス費用がかからないことです。太陽光発電設備は事業者が保有しているため、資産計上する必要がありません。自社保有型と同じく発電した電気を自家消費した場合は「再エネ賦課金」がかからないので、電気料金の節約になります。

PPAモデルのデメリット

PPAモデルは長期契約となり、交換や処分が自由にできないというデメリットがあります。自社ビルに建て替え予定がある場合は、事業者とよく相談して契約する必要があります。また、自家消費する電気は事業者に料金を払って使用します。安い料金にはなりますが、自社保有型に比べると電気代の削減効果は低くなります。

4つの方法を比較して自社に最適な選択を

4つの方法のメリット・デメリットを確認しましたが、表にまとめると下表のようになります。

屋根貸しリース契約自社保有PPAモデル
所有形態事業者事業者自社事業者
契約期間長期長期なし長期
契約終了後所有権事業者自社自社
発電電力使用権契約によるありありあり(有料)
売電権なしありありなし
メンテナンス費用なし契約によるありなし
資産計上不要不要必要(減価償却も)不要

企業によって再エネへの取り組み方針、屋根の広さ、建て替え予定の有無、初期費用やメンテナンス費用の負担余力など、置かれている環境が異なりますので、社内で最適な方法はどれか十分に検討する必要があります。

また、公的な補助金制度を利用できる場合もありますので、可能な限り活用するようにしましょう。SDGs活動が求められる昨今、企業にとって自社ビルの屋根を有効活用し、電気料金の節約と社会貢献を両立できれば一挙両得といえるでしょう。

※本記事は太陽光発電システムの導入方法について一般的な内容を紹介するものです。事業者によって細かい契約内容が異なる場合がありますので、参考程度にお考え下さい。

(提供:Renergy Online



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