不動産投資は「やめとけ」の理由 |
1. 不動産投資はリスクの種類が多い |
2. 大規模修繕の費用がかかる |
3. ローン返済の保証がない |
目次
本コラムでは、「不動産投資はやめとけ」と言われる理由と、その対応策として成功率を高めるために「どのようなリスクがあるか」「各リスクにどのような対策があるか」を初心者向けに分かりやすく解説していく。
なお、不動産投資には物件の種類がいくつかあるが、ここでは種類を限定せずに解説していくことを前提としたい。
不動産投資の9つのリスクと低減させる対策
不動産投資は、多額の資金が必要なことや借入を利用することもあり、「なんか怖い」「借金はしたくない」といったイメージを抱いている人も少なくない。
不動産投資を始めるにあたっては、不動産投資にはどのようなリスクがあるのか、自分がどの程度までのリスクであれば許容できるのかといった点をまず理解するのが得策である。
リスクをしっかり理解して適切に対応していけば、ある程度リスクを低減することも可能だ。
不動産投資の主なリスクには、以下の9つが挙げられる。
不動産投資の9つのリスク |
1.空室リスク|低減させる対策 |
2.家賃滞納リスク|低減させる対策 |
3.家賃下落リスク|低減させる対策 |
4.事件事故リスク|低減させる対策 |
5.修繕リスク|低減させる対策 |
6.物件価格変動リスク|低減させる対策 |
7.金利上昇リスク|低減させる対策 |
8.災害リスク|低減させる対策 |
9.法的・財務的リスク|低減させる対策 |
いずれにおいても、リスクが顕在化すると大きな出費やキャッシュフローの悪化、資産価値の下落といったネガティブな結果につながる可能性がある。
空室リスク
空室リスクとは、入居者が入らないために賃料収入が減少するリスクを指す。
不動産投資の主な収益源は賃料収入であることから、空室リスクは不動産投資における最大のリスクといっても過言ではない。
賃料収入が減少した場合でも、ローン返済や管理委託料、税金をはじめとする各種固定費および修繕費や入退去費といった変動費は発生し続けるため、空室リスクが顕在化すると、投資として破綻してしまうことも想定される。
では、実際にどれくらいの空室リスクがあるのだろうか。これについては、物件があるエリアや築年数などによって変わる。賃貸需要の低いエリアや賃料とのバランスが悪い築古物件などは、空室リスクが高まる。入居率は、エリアによって以下のような差がある。
上図では「入居率」が示されているが、これは「空室率」と相反関係にある。例えば、入居率が100%なら空室率は0%、入居率が95%なら空室率は5%となる。上図に基づくと、人口が集中している「首都圏・関西圏」は、人口減少エリアを含む「その他のエリア」よりも入居率が高い(空室率が低い)という傾向がある。
空室リスクを低減させる対策
空室リスクを低減させる対策としては、次の4つが考えられる。
・物件の価値を高める
・賃貸需要が高いエリアの物件を購入する
・単身者向け物件を選ぶ
・入居者募集に強い不動産業者を選ぶ
1つ目の対策である「物件の価値を高める」の具体策としては、入居者に人気のある住宅設備(例:宅配ボックスや無料Wi-Fiなど)を導入するのが有効だ。
区分マンションにおけるワンルーム投資では宅配ボックスの設置は難しいが、アパートや戸建て等一棟では有効な対策といえる。
2つ目の対策である「賃貸需要が高いエリアの物件を購入する」の具体策としては、 公的データをもとに人口が増えている(かつ、今後も人口が安定すると予想される)エリアに着目するのが有効だ。役立つ公的データの例としては、国勢調査や各市町村がまとめた人口予測などがある。例えば、国勢調査によると人口増加数が大きい上位の市町村は以下のとおりだ。
上記のグラフから、2020年までは東京特別区の増加傾向が顕著に表れているといえるだろう。やはり、賃貸ニーズは東京23区が高いことがうかがえる。
ただし人口が増えているエリアでも、賃貸需要に対して物件供給が多い場合は空室リスクが高いので注意したい。人口が増えているからといって、必ず賃貸需要が高くなるわけではなく、賃貸需要が高いエリアを選定するための参考程度に考えよう。賃貸需要については、対象エリアに強い不動産業者からヒアリングするとよいだろう。
3つ目の対策の「単身者向け物件を選ぶ」だが、特に都心部では賃貸住宅に住む大半が単身者である。下図を見てみると、東京都の住宅の中で単身者向け(延べ面積29㎡以下・30〜49㎡の住宅)が7割超となっている。そのため借り手が大勢いるマーケットで不動産投資を行ったほうが空室リスクを低減しやすい。
4つ目の対策の「入居者募集に強い不動産業者を選ぶ」だが、仲介会社や管理会社の賃貸募集の強さは会社ごとに差がある。そのため実績などをもとに集客力と決定力のある不動産業者を選べば、空室をスピーディーに埋める効果が期待できるだろう。
家賃滞納リスク
家賃滞納リスクとは、入居者から賃料を回収できないリスクのことである。
不動産投資の主な収入源は賃料収入であるため、入居者がいたとしても家賃滞納があると収支が悪化する。家賃滞納が長期化すると、滞納入居者を追い出さなければならなくなることもあり、多大な手間と費用が発生することもあり得る。
物件を購入する前に、現入居者が過去に家賃滞納したことはないか、賃料を支払い続けられるだけの収入があるかといった点を確認しておこう。また、入居者が入れ替わる際も同様だ。
実際の家賃滞納率は、滞納期間やエリアによって変わる。(公財)日本賃貸住宅管理協会のデータを参考にすると、2ヵ月以上の長期的な家賃滞納率は以下のとおりだ。
上記の結果によると、2ヵ月以上の長期的な家賃滞納はおおむね1%程度、「約100戸に1戸の割合」とイメージしておくとよいだろう。
家賃滞納リスクを低減させる対策
家賃滞納リスクへの対策としては、次の3つが考えられる。
- 家賃滞納対策をしっかりと行っている不動産業者を選ぶ
- 引っ越し前の状況を確認する
- 家賃保証会社の加入を入居条件にする
1つ目の「家賃滞納対策をしっかりと行っている不動産業者を選ぶ」について具体例としては、入居者募集・審査を委託する管理会社や仲介会社を選ぶ際にヒアリングを実施してみよう。ヒアリング項目としては「どんな審査基準を設定しているか」「どんな部分を重視して入居者審査を行うのか」などが挙げられる。
2つ目の「引っ越し前の状況を確認する」は、入居者募集を担当する仲介会社に内見者のヒアリングをしてもらうというものだ。ヒアリング内容としては、引っ越し前の居住期間、引っ越し理由、勤務状況などが挙げられる。
頻繁に引っ越しを繰り返していたり、引っ越し理由が不自然だったりする場合は要注意だ。また、転職したばかりの人や転職回数が多い人は収入が不安定であり、家賃滞納リスクが高まる可能性があるので審査が厳しくなる。
3つ目の「家賃保証会社の加入を入居条件にする」を行うことができれば、家賃滞納リスクを排除できる。なぜなら、家賃滞納が発生しても家賃保証会社がその分を補てんしてくれるからだ。保証会社への手数料は入居者が支払うため、オーナーの負担がない点もメリットである。しかし、保証料の支払いが生じることから入居者が嫌がる可能性もあるため、結果的に入居率が低下することも考えられる。
家賃下落リスク
家賃下落リスクとは、建物の経年劣化によって家賃が下がり経営が苦しくなるリスクだ。家賃が下がる一番の理由は、どのようなものがあるだろうか。例えば築年数が経過した物件は、空室期間が長期化しやすくなるため、それを回避すべく家賃を下げてしまうケースもある。
家賃が下落すると、家賃収入が減ってキャッシュフローが悪化。また家賃収入が減ることで利回りが低下し、物件の売却価格が安くなったり売れにくくなったりする。
家賃の下落率は、築年数・エリア・ 物件のタイプ(マンションやアパートなど)で変わってくる。なかには「新築から築10年は家賃下落率が大きい」というとの意見もあるが、実際に分析してみると一概にいえないだろう。競合物件と十分に比較したうえで、家賃下落が平均値を超えているかを判断したい。
家賃下落リスクを低減させる対策
家賃下落リスクを低減させる対策としては、次の4つが考えられる。
- 好立地の物件を選ぶ
- 競合が少ないエリアを選ぶ
- 人気設備を採用する
- 大規模修繕を計画的に行う
1つ目の「好立地の物件を選ぶ」は、不動産投資を成功させる鉄則だ。「都心の駅近である」「複数の路線を使える」といった好立地の物件であれば賃貸ニーズが高い。家賃下落リスク対策の観点でいえば、空室が発生してもすぐに埋まりやすいため、必要以上に家賃を下げなくて済みやすい。
2つ目の「競合が少ないエリアを選ぶ」は、見落としやすいポイントなので注意しよう。いくら好立地でも「現時点で賃貸物件が飽和状態」「新築物件が林立している」といった状況だと競争激化から家賃下落が起こりやすい。そのため好立地を選ぶだけでなく、賃貸物件が飽和しているエリアを避ける意識も必要だ。
3つ目の「人気設備を採用する」は、入居者が求める住宅設備を充実させることで築古などの弱点をカバーするものだ。2022年の人気設備の一例としては「インターネット無料」「エントランスのオートロック」「宅配ボックス」「浴室換気乾燥機」などが挙げられる。ただし入居者ニーズは、時代とともに変化することも意識しておきたい。また、エントランスのオートロックや宅配ボックスなど、一棟に関する修繕は一棟を所有しているときでなければ実施は難しい。ワンルームなど区分所有の場合は設備導入できるものが限られているため注意したい。
4つ目の「大規模修繕を計画的に行う」は、例えば同じ築年数の物件でも大規模修繕をしっかりと行ってきたか否かで外観や共用部の傷みは大きく変わってくる。資金面も含めて大規模修繕を計画的に進めることが大切だ。
事件事故リスク
事件事故リスクとは、所有物件において殺人や自殺、孤独死等が発生するリスクを指す。マンションおよびアパートという集合住宅には、不特定多数の入居者が同時かつ入れ替わり居住するため、事件事故が発生するリスクがある。
物件内で事件事故が発生すると、「事故物件」としてのレッテルを貼られて入居者探しが難航する、賃料を下げなければ入居者がつかない、売却価格が下落するといったこともあり得る。
ここでは、事件事故リスクに関するデータとして、都道府県別の孤独死(立会人のいない死亡)割合を確認してみよう。下の表は、孤独死の割合が約3%を超えるエリアをまとめたものである。
全国で孤独死の割合上位1位は、単身者世帯の多い東京都(9.6%)だが長崎県(5.5%)や山形県(3.2%)など地方でも割合が高いところもある。そのため、「孤独死は大都市の賃貸物件だけのリスク」という思い込みは禁物だ。
事件事故リスクを低減させる対策
管理会社や家主の努力で、殺人や自殺、孤独死などを回避するのは難しい。対策としては、入居者の事件事故リスクに備える保険に加入するのが有効だ。この手の保険は大きく分けて、「単独で加入できるもの」「火災保険とセットで加入できるもの」がある。
補償内容は商品によって異なるが、主なものとしては「家賃収入の保証(補償)」「原状回復費の補てん」などがある。家賃収入の保証期間は「1年」が目立つが、「修繕完了までの期間」や「2年」などもある。
保険料も保険金も商品によって変わるため、加入する場合は複数の保険商品を比較するのがよいだろう。ただし、こうした保険は事件事故から原状回復するまでをカバーするものであって、その後心理的瑕疵物件となり家賃が下がることまではカバーできないことは覚えておこう。
修繕リスク
修繕リスクとは、専有部(貸室内部)および共用部(共用廊下やエレベーター等)の設備が劣化または故障し、修繕をしなければならなくなるリスクを指す。
設備の中でもエアコンや給湯器、エレベーターは高額であるため、修繕が発生した際には高額な修繕費を要することもあるだろう。設備の故障や不具合は突発的に発生することも多いため、高額な設備の修繕に備えて手元資金を確保しておくことが無難だ。
修繕費用がどれくらいかかるかは、賃貸物件のタイプや規模、築年数などによって変わるが、国土交通省のガイドブックを参考にすると、木造10戸(1LDK~2DK)の新築から30年目までの修繕費用の目安は以下のようになる。これは、アパート経営を考える人にとって参考になるデータだ。
上図からいえることは、定期的にある程度の金額が修繕費として必要になるということだろう。特に、11〜15年目と21〜25年目は大規模修繕が想定されるため金額も大きくなっている。
また、30年目以降も継続して運用する場合は、当然ながら修繕費が必要になることは覚えておきたい点だ。
修繕リスクを低減させる対策
修繕リスクを低減させる対策としては、次の2つが考えられる。
- 耐久性の高い物件を選ぶ
- 修繕記録をチェックする
1つ目の「耐久性の高い物件を選ぶ」は、RC造やSRC造など一般的に耐久性が高い(寿命が長い)といわれる建物で不動産投資をすることで修繕リスクを低減する考え方だ。ただし、木造とRC造を比較すると修繕費の金額自体は後者のほうが高い傾向がある。あくまでも賃料と修繕費のバランスで考えることが大切だ。
2つ目の「修繕記録をチェックする」は、中古物件を購入する際、売買契約前に過去の修繕記録をチェックすることで修繕リスクへの事前対策が可能だ。
一棟物件は不動産業者経由で「維持修繕の実施状況の記録」を取り寄せることで、過去の修繕状況がわかる。この記録を確認して、適切に修繕が行われていれば「現時点では、修繕リスクが低い」と判断できる。
この記録は必ず具備されているとは限らないが、存在する場合は売買契約前の重要事項説明で宅建業者に説明義務が課されている(宅地建物取引業法35条1項5号の2、同法施行規則16条の2第9号)。
なお、区分マンションの場合は不動産業者経由で「重要事項調査報告書」を取り寄せることで、修繕積立金の積立総額や滞納状況などを確認できる。これにより、「修繕積立金が十分ストックされているか」を判断しやすくなる。また、この報告書には修繕履歴や修繕計画も網羅されているため、適切なタイミングで修繕が行われているかどうかもわかる。
物件価格変動リスク
物件価格変動リスクとは、物件価格の騰落により売却価格と購入価格にギャップが生じるリスクを指す。
不動産も株式のように価格変動があるため、売却時に物件価格変動リスクが顕在化することがある。購入後に物件価格が大きく下落すると、物件の売却価格がローンの借入残高を下回り、全額を返済に充てたとしても借金だけが残る結果になることもあり得る。
関連するデータを確認してみよう。賃貸物件の価格は通常、築年数が増えれば下落する。例えば、一般的に不動産投資に向いているエリアといわれる1都3県の中古マンションでも、築年数が経つと価格は下落していく。
特に築30年を超えてくると価格が一段と下がっていることが見て取れるだろう。売却を考えるのであれば、築30年になる前に検討しておくのが賢明だろう。
物件価格変動リスクを低減させる対策
上記のような物件価格変動リスクを低減させる対策としては、「建物のメンテナンス(一棟物件)」と「好立地の選択(区分・一棟物件)」 の両面からのアプローチによって、物件価格の下落を緩やかにすることも期待できる>。
「建物のメンテナンス」については、物件の経年劣化が激しい場合は価格を下げないと買い手が付きづらいため、売却価格の下落率が大きくなりやすい。経年劣化を緩やかにするために定期的なメンテナンス計画を立て、それを実行していくことが大切だ。
どのくらいの経年で何をするといいのか、どのくらいのコストがかかるのか、具体的なことを知りたい方は以下の記事を参考にするといいだろう。
「好立地の選択」については賃貸需要が高いなど、資産価値(地価)が下落しにくい、または上昇が期待できるエリア選びがポイントになる。
金利上昇リスク
金利上昇リスクとは、変動金利で融資を受けた場合に発生するリスクで、金融機関の基準金利が上昇することによって当該融資における金利も上昇するリスクである。
金利が上昇すると、毎月のローン返済における金利負担が大きくなり、支払総額の増大やキャッシュフローの悪化を招く可能性がある。
金利上昇リスクを低減させる対策
不動産投資の金利上昇リスクの事前対策は、経済情勢や金利状況などに合わせて行うといいだろう。例えば「中長期的に低金利が続く」と判断した場合は、変動金利を選びつつも繰り上げ返済で元本を減らしていくという手がある。
具体的には、ローンの返済方式には「元金均等返済」と「元利均等返済」があるが(下記の表参照)、「元金均等返済」を選択すると元金の返済ペースが速くなるので、金利上昇リスクを緩和できる。とはいえ「元金均等返済」を選ぶと、当初は返済金額が重くなるので注意が必要だ(一般的には、元利均等返済が選ばれるケースが多い)。
返済方式 | 特徴 |
元金均等返済 | ・返済額のうち元金が一定 ・元金の返済ペースが速くなる ・当初の返済金額が重くなる |
元利均等返済 | ・返済額が毎月一定 ・返済計画を立てやすい ・元金の返済ペースが遅くなる |
逆に「近いうちに金利が上がる」と判断すれば、固定金利への借り換えを相談するという手がある。ただし金利は長期的に変動するものなので、慎重に判断してほしい。また、金利の選択は金融機関によって異なる。そもそも元利均等返済のみ扱っている金融機関や固定金利の選択ができないケースもある。事前に融資可能な金融機関の情報を確認しておくことが重要だ。
災害リスク
災害リスクとは、地震や台風等の自然災害によって建物が損壊したり浸水したりするリスクのことだ。
日本は大きな地震や台風等が多く発生するため、不動産という現物資産を保有することにはリスクが付きまとう。
災害によって建物が損壊したり浸水したりすると、多額の修繕費が発生するだけでなく、修繕工事中は建物を賃貸できなくなるため、賃料収入が途絶えることもある。
建物を所有する際は火災保険や地震保険および特約等に加入し、災害の発生に備えることが重要だ。
災害リスクを低減させる対策
災害リスクへの対策としては、「ハザードマップの有効活用」が効果的だ。
台風や地震などが頻発する日本では、どのエリアで不動産投資をしても自然災害を完全に避けることはできない。しかし、物件情報を収集している時や、売買契約を交わす前にハザードマップを確認し、災害が発生しやすいエリアを避けることで事前対策になる。
ハザードマップの検索方法だが、これは国土交通省が運営するポータルサイトで住所や都道府県名・市町村名を入力するだけで実行できる。
例えば同ポータルサイトで「東京都港区」と入力して検索すると、下記のような詳細なハザードマップが表示される。
法的・財務的リスク
法的リスクとは、不動産投資に関する契約(売買契約や賃貸借契約など)で法的な不備があることで、裁判になったり賠償請求を問われたりするリスクのことだ。不動産投資に関わる主な法規制は、次のとおりである。
・民法
・借地借家法
・宅建業法
・建築基準法
・各自治体の条例
一方、財務的リスクとは不動産投資の経費や税金についての認識が誤っていることで収益を出しにくかったり、税務調査で経費を否認されたりするリスクのことだ。
法的・財務的リスクを低減させる対策
法的リスクを低減させる対策としては、まず日ごろから法規制に関する情報収集をして適切な対応をとることだ。法規制は、常に変化することを意識しよう。
次に財務的リスクを低減させる対策としては、経費や税金について学び不動産投資の支出についての正しい認識を深めておきたい。
リスク | 低減させる対応策 |
---|---|
法的リスク | ・不動産契約と法的義務に関する情報 ・各自治体の不動産規制と法律の変更に関する情報 |
財務的リスク | ・不動産投資に関連する経費 ・不動産投資に関する支払う税金 |
法的・財務的リスクともに上記が理想だが、内容が複雑なため「自身では対応が難しい」という人もいるかもしれない。情報収集や勉強の努力をしつつも現実的に起こった問題に関しては、弁護士や税理士に相談するのが得策だ。
不動産投資は「やめとけ」との意見もある理由
「不動産投資はやめとけ」の意見がある理由とその対応策 |
1. 不動産投資はリスクの種類が多い →【対応策】リスクの対策を実行すれば低減が可能 |
2. 大規模修繕の費用がかかる →【対応策】何年後にどういった修繕が必要でコストはいくらか、事前にリサーチしておく |
3. ローン返済の保証がない →【対応策】空室期間や家賃滞納が起こる想定で収支シミュレーションしておく |
否定的な意見がある1つ目の理由は「不動産投資はリスクの種類が多い」というものだ。本コラムで解説してきたように空室リスクや家賃滞納リスクなど実に多くのリスクがある。その反面、それぞれのリスクに有効な対策があるため、それを実行すればリスクを少しでも低減することが可能だ。
2つ目は「大規模修繕の費用がかかる」という理由だ。不動産投資の初心者は、大規模修繕の費用を考えずに(あるいは甘く見て)物件を購入しやすい傾向がある。結果的に、手元資金では大規模修繕を賄えないような事態に陥ることも少なくない。そうならないように、「どのくらいの時期にどういった修繕が必要で、おおよその金額はどれくらいか」、経営計画を綿密に立てて物件購入を検討しよう。
3つ目は「ローン返済の保証がない」というものだ。不動産投資を始める際、多くの人がローンを利用する。返済の原資となるのは家賃収入だが、家賃滞納や空室が発生すると当然収入が減るため、ローンの返済への負担が増える。このような状況に陥らないように、ある程度の空室や家賃滞納を見込んだ収支シミュレーションをしておくことで、突発的な支出でも返済が滞らずに済む可能性が高い。
不動産投資で失敗した典型的なケース例
前項で不動産投資の否定意見があることに触れたが、実際に不動産投資で失敗したケースもある。ここでは、典型的なケース例を紹介していく。
失敗ケース「予想以上に空室率が高くなった」
不動産投資の初心者にありがちな失敗したケースに、予想以上に空室率が高まり、予定していた家賃収入が得られないというものがある。
具体的には、区分マンションであれば「入居者募集をしても決まらない」「空室期間が長期化している」など、アパートであれば「新築で建てたが最初の入居者が決まるまでに時間がかかった」などが挙げられる。
空室リスクを低減させる対策を再確認してみよう。次の4つが挙げられる。
- 物件の価値を高める
- 賃貸需要が高いエリアの物件を購入する
- 単身者向け物件を選ぶ
- 入居者募集に強い不動産業者選ぶ
失敗ケース「中古物件を購入後、まとまった修繕費用が必要になった」
中古物件特有の失敗したケースもある。一般的に中古物件は、新築・築浅の物件よりも価格が安い。不動産投資の初心者は、この安さに飛びついてしまいがちだが、物件の状態が悪ければ購入直後に修繕費用が必要になることもある。
具体的には、区分マンションであれば「入居者募集を始めるためにリフォーム費用が必要」「エアコンの調子が悪いので交換が必要」など、アパートであれば「大規模修繕の時期なので、まとまった修繕費が必要」といった具合だ。
修繕リスク低減対策としては、次の2つが挙げられる。
- 状態がいい物件を選ぶ
- 修繕記録をチェックする
上記に加えて、物件の状態に合わせて修繕費用を見積もり、綿密な事業計画・融資/返済計画を立てて物件購入を検討することも有効だ。
リスクを想定したシミュレーション・保険への加入で安心
本コラムでは、個別のリスクを低減するための対策について解説してきた。すべてのリスクを横断する「不動産投資で失敗しないための心構え」として、物件購入前に収支シミュレーションを行うことを推奨したい。
不動産投資の初心者だと、収支シミュレーションの方法がわからない人もいるかもしれない。この疑問については、入門書で解説されている不動産投資の収益計算を参考にしたり、ネット上で提供されているキャッシュフロー計算シミュレーターを利用したりすることで専門知識がなくても実行できる。
さらに補足をすると、災害リスクは火災・地震保険の加入、万が一のときの団信への加入(ほとんどが加入義務)があれば安心できる面もある。
不動産投資で失敗しやすい人の特徴3つ
不動産投資にはリスクが伴うため、リスクを看過すると失敗して損失を出してしまう可能性がある。
不動産投資で失敗するリスクが高い人の特徴として、以下3つが挙げられる。
- 利回りを重要視しすぎている
- マーケット調査が甘い
- 必要な経費まで削減しようとする
利回りを重要視しすぎている
投資をする以上、高い利回りを期待すること自体は投資家として正しい姿勢であるが、利回りを重要視しすぎることは危険な場合もある。
高い利回りを重要視しすぎると、賃貸需要が縮小するエリアの物件や瑕疵のある物件を購入してしまうことにも繋がり得るため、注意が必要だ。
投資におけるリスクとリターンは表裏一体の関係にあるのが一般的であることから、高利回りという高いリターンが期待できる物件においては相応のハイリスクが潜んでいる可能性があるという認識を持っておくといいだろう。
マーケット調査が甘い
マーケット調査とは、購入後の賃貸需要および売却時の流動性といった市場についての情報収集である。
マーケット調査をする際は、エリアの人口や賃貸住宅のニーズの多寡といった客観的なデータをもとに、安定的に入居付けができるか、売却時に買い手を見つけられるかといった点を考察する必要があるだろう。
マーケット調査が甘いと、購入後に空室が続いたり、売却活動が思うようにいかなくなったりする可能性がある。
必要な経費まで削減しようとする
不動産投資には経費が付きものであるため、可能な限り経費は安くするのが得策である。しかし、過度に経費をかけたくないために必要な経費まで削減してしまうと、かえって投資としてのパフォーマンスが落ちることもある。
不動産投資において必要な経費とは、損害保険料や空室を埋める際に賃貸仲介業者に支払う成約報酬、物件のメンテナンス費用といったものが挙げられる。
必要な経費まで削減しようとすることで、保険が使えないために「災害時に多大な修繕費がかかる」「賃貸仲介業者への訴求力が弱いために空室が埋まらない」「適切なメンテナンスが行き届かないために物件の劣化が早まる」といった事態に陥ってしまうこともある。
不動産投資のリスクに関するよくあるQ&A
Q.不動産投資のリスクにはどんなものがある?
不動産投資の代表的なリスクには、「空室リスク」「家賃滞納リスク」「事件事故リスク」「修繕リスク」「物件価格変動リスク」「金利上昇リスク」「災害リスク」などがある。ポイントは、これらのリスクには必ず事前に打てる対策があり、それによってリスクを回避・緩和できるということだ。
逆にいうと、不動産投資のリスクについて知らない、あるいはリスクを知っていても対策を打たなければ、失敗する可能性が高くなるので注意しよう。
Q.空室リスクの事前対策は?
空室リスクの事前対策としては、「物件の価値を高める」と「賃貸需要の高いエリアの物件を購入する」が考えられる。「物件の価値を高める」という対策の具体例としては、入居者に人気のある住宅設備を導入するのが有効だ。(ワンルーム等の区分投資を除く。)
また、「賃貸需要の高いエリアの物件を購入する」対策の具体策としては、 公的データをもとに人口が増えている(かつ、今後も人口が安定している)エリアに着目するのが有効だ。
Q.災害リスクの事前対策は?
台風や地震などが多い日本では、自然災害を完全に避けるのは難しいが、ハザードマップを確認し、災害が発生しやすいエリアを避けることで事前対策になる。ハザードマップの検索は、国土交通省が運営する「ハザードマップポータルサイト」を利用するといいだろう。住所や都道府県名・市町村名を入力するだけで、対象エリアのハザードマップを閲覧できる。
Q.不動産投資の最大のリスクは何?
不動産投資の一番のリスクについては、さまざまな意見があるが、そのなかの一つが「ローンの借り過ぎが最大のリスク」というものだ。不動産投資には、借入をすることで手元資金へのレバレッジがかけられるメリットがある。
しかし不動産投資ローンで借り過ぎてしまえば「キャッシュフローが確保しにくい」「空室や家賃下落などに弱い経営体質」といった環境に陥りかねない。自分にとってどれくらいの借入が適切かをしっかりと見極めよう。
Q.不動産投資で危険なエリアは?
不動産投資で危険なエリアを一口でいえば「賃貸需要が少ないエリア」である。このような危険なエリアで不動産投資をしても空室リスクや家賃下落リスクなどが高く、十分な収益を確保しにくい。
不動産投資で危険なエリアの具体例としては、以下のような場所が挙げられる。
- 周辺地域と比べて人口が急減している
- 日常生活に欠かせない施設が近隣にない(例:スーパー、病院、保育園、学校など)
交通の利便性が極端に悪い(例:駅から遠い、バスしか利用できないなど)
(提供:manabu不動産投資 )
- コラムに関する注意事項 -
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