日経平均株価(終値ベース)は9/14(火)に年初来高値を更新し、およそ31年ぶりの高値水準を回復してきました。次期政権への期待感や、新型コロナウイルスの新規感染者数が減少傾向にあることなどが好材料になっていると考えられます。

そうした中、上半期の営業日数も残り少なくなってきました。

9/28(火)には多くの上場企業で、配当・株主優待等の権利付最終日を迎えます。そこで今回は、9月に権利が確定する株主優待銘柄の特集を行います。

ポイントは、“仕組み”を活用すること。低コストかつ、比較的低いリスクで株主優待の権利を確保する方法を用いて銘柄を選びました。

当ページの内容につきましては、SBI証券 投資情報部長 鈴木による動画での詳しい解説も行っております。ぜひ、ご視聴ください。

日本株投資戦略
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■執筆者のプロフィール

鈴木英之
鈴木 英之
SBI証券 投資情報部長 
ラジオNIKKEI(月曜日)、中部経済新聞(水曜日)、ストックボイス(木曜日)、ダイヤモンドZAIなど、定期的寄稿も多数。
・出身 東京(下町)生まれ埼玉育ち
・趣味 ハロプロの応援と旅行(乗り鉄)
・特技 どこでもいつでも寝れます
・好きな食べ物 サイゼリヤのごはん

≪権利付き最終日接近≫9月優待20銘柄

日本株投資戦略,上方修正期待銘柄
(画像=PIXTA)

9月は株主優待の権利・配当が確定する銘柄に関心が集まる季節です。

中には、権利付最終日に優待実施銘柄を買って権利落ち日に売ることで、効率良く株主優待の権利獲得を考える投資家の方もいらっしゃるのではないでしょうか。

ここで注意すべき点は、買い付ける時の株価が予想外に高くなったり、売る時の株価が予想外に安くなるなど、相当額の売却損がでてしまうケースです。配当取りも同様で、権利落ち日には配当実施分だけ株価が下がるのが普通です。ノーコスト・ノーリスクで株主優待や配当を享受することは難しいでしょう。

ただ、コストやリスクを軽減して、株主優待の権利を確保する方法はあります。

それは「つなぎ売り」を活用した取引です。

つなぎ売りの手順はおおまかに以下の通りです。

(1)購入したい株に対して権利付最終日の寄付前までに「現物買い」の注文と、一般信用取引短期(15営業日)売りで「信用新規売り」の注文を寄成で発注する。
(2)権利落ち日以降に、信用売りを「現渡」で返済する。

「現渡」で返済することによって、現物取引の売却手数料と、信用取引の決済手数料をかけずに、少ないコストでリスクを低減することができます。

なお、「つなぎ売り」で株主優待をお得に活用する方法については、SBI証券のWebページでご紹介しています。

そこで今回はつなぎ売りの活用を前提に、9月優待銘柄を抽出しました。

以下、すべての条件を満たす銘柄をSBI証券株主優待検索ページで、閲覧回数の多い順(9/16時点)に20銘柄並べたものが図表1です。

(1)東証上場銘柄。
(2)9月に株主優待の権利確定を予定していること。
(3)SBI証券の株主優待検索機能で一般信用売り対象銘柄であること。
(4)9/1(水)~9/15(水)の期間で、1営業日あたりの最低売買高が1万株以上あること。
(5)株主優待の権利確保に必要な最低保有株数が100株であること。
(6)株主優待の権利確保に必要な最短保有期間の条件がないこと。
(7)継続企業の前提に疑義が生じている銘柄は除外。

なお、一般信用取引を活用するには、「信用取引口座」を開設しておく必要があります。 信用取引口座をお持ちでない方は現物株を買い付ける形で、株主優待の権利を確保することになりますのでご了承ください。

図表1で銘柄名右に“◎”が付いている銘柄は、四半期業績が好調でかつ、9月に配当実施を予定しています。業績変動リスクを抑えて配当を享受しながら中期投資を行うには、相対的に適した銘柄であると考えます。

なお、株主優待の権利獲得にあたっては、必要な最低保有株数や最短保有期間など条件が付いている銘柄もあるので、注意が必要です。最新の情報は必ず当該企業のホームページ等をご確認ください。

低コストで比較的、低リスクで権利確保可能な9月優待20銘柄 低コストで比較的、低リスクで権利確保可能な9月優待20銘柄
(画像=SBI証券)

図表1 低コストで比較的、低リスクで権利確保可能な9月優待20銘柄
コード / 銘柄 / 株価(9/16) / 株主優待に必要な最低投資単位での優待内容の概要
<2207> / 名糖産業◎ / 1,820 / 製品詰合せ(菓子等)1,500円相当
<7550> / ゼンショーホールディングス◎ / 2,810 / 優待券(500円)2枚
<3397> / トリドールホールディングス / 2,547 / 割引券(100円)30枚
<2594> / キーコーヒー / 2,275 / 自社製品詰合せ1,000円相当
<9831> / ヤマダホールディングス / 483 / 優待優待券(500円)2枚
<4732> / ユー・エス・エス◎ / 1,998 / クオカード500円相当
<3738> / ティーガイア◎ / 2,048 / クオカード1,000円相当
<3153> / 八洲電機 / 1,082 / ジェフグルメカード500円相当
<6055> / ジャパンマテリアル / 1,351 / クオカード1,000円相当
<9759> / NSD / 2,129 / クオカード1,000円相当
<4320 / CEホールディングス(9) / 600 / クオカード1,000円相当
<7421> / カッパ・クリエイト / 1,399 / 株主優待カードに3,000ポイント付与
<9470> / 学研ホールディングス(9)◎ / 1,233 / 自社グループ会社商品1セット
<3778> / さくらインターネット / 636 / クオカード500円相当
<9728> / 日本管財◎ / 2,698 / ギフトカタログより2,000円相当商品1点
<8798> / アドバンスクリエイト(9)◎ / 1,116 / 2,500円相当のカタログギフト他
<8101> / GSIクレオス / 1,055 / クオカード1,000円相当
<2931> / ユーグレナ(12) / 876 / 自社指定商品1品および同割引販売
<9997> / ベルーナ / 873 / 通信販売優待券1,000円相当など
<3167> / TOKAIホールディングス / 924 / 天然水(500ml入)など

※Bloomberg、会社公表データをもとにSBI証券が作成。
※図表1に記載の銘柄の権利付最終日は9/28(火)の予定です。9/29(水)以降に買い付けても配当および株主優待の権利を確保することはできませんので、ご注意ください。 ※銘柄名右が無印の銘柄は3月決算企業、(9)は9月決算企業、(12)は12月決算企業です。
※銘柄名右が◎の銘柄は直近の四半期(累計)営業利益が前年同期比増益で、会社側が9月に配当を予定している銘柄です。
※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
※株主優待内容のすべてを記載した訳ではありません。株主優待の内容、権利確定月、権利付最終日等は随時変更される可能性がありますので、最新の情報は必ず当該企業のホームページ等をご確認ください。
※本情報は原則として毎月下旬に更新しており、また、提供元データは東洋経済新報社が作成にあたり調査した、毎月中旬までの公表情報に基づくものです。そのため、株式分割・売買単位変更等のコーポレートアクションにより、優待獲得最低株数・優待獲得最低金額等が実際とは異なる場合がありますのでご注意ください。
※ご利用の際には、こちらの「新しいウィンドウで開きます。株主優待情報に関する注意事項等」を必ずご確認ください。

抽出銘柄の投資ポイント

この項では、図表1で抽出した銘柄の一部について、投資ポイントや直近の決算情報などをご紹介します。

ゼンショーホールディングス(7550) 「すき家」を全国展開する大手外食チェーン

ゼンショーホールディングス(7550)
(画像=SBI証券)

期間:2021/3/25~2021/9/17(日足)
※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

■牛丼店「すき家」などを展開

外食チェーン大手。主に牛丼店「すき家」を全国展開しています。このほか、丼ぶりと京風うどんを主力商品とした「なか卯」、ファミリーレストランの「ココス」「ビッグボーイ」「ジョリーパスタ」「華屋与兵衛」、回転寿司の「はま寿司」など複数の業態を運営しています。

2022/3期・第1四半期(2021/4~6期)は売上高1,526億円(前年同期比18.9%増)、営業利益28.8億円(黒字転換)と改善傾向。通期では売上高6,880億円(前期比15.6%増)、営業利益225億円(同86.3%増)が会社予想です。

■100株保有で優待券(500円)2枚を贈呈

上期末10円+期末10円=通期20円の配当を計画し、9/16(木)終値2,810円に対する年間予想配当利回りは0.71%と計算され、東証1部の予想配当利回り(1.72%)を下回っています。

9/28(火)時点で100株以上保有する株主は、優待券(500円)2枚が贈呈されます。保有株数が増えるごとに、贈呈される優待券も増加。300株以上では6枚、500株以上では12枚、1,000株以上で24枚、5,000株以上で60枚贈呈される予定です。

トリドールホールディングス(3397) 「丸亀製麺」は国内のみならず海外にも展開

トリドールホールディングス(3397)
(画像=SBI証券)

期間:2021/3/25~2021/9/17(日足)
※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

■セルフうどんの「丸亀製麺」を展開

低単価なセルフうどんの「丸亀製麺」を展開する外食チェーンです。このほか、ハワイアンカフェ「コナズ珈琲」、かつ丼・トンテキ専門店「豚屋とん一」、焼き鳥ファミリーダイニング「とりどーる」など複数業態を手掛けています。

2022/3期・第1四半期の売上高は374億円(前年同期比37.1%増)、営業利益は19.6億円(黒字転換)となりました。

主力の「丸亀製麺」(セルフうどん・国内、売上構成比71%)は店舗数が3店純減(前期末比)の852店。新型コロナウイルスの逆風を、テイクアウト強化でカバーして黒字転換しました。海外事業(売上構成比29%)は店舗数が3店純減の623店となり、減益となりました。

通期では売上高1,550億円(前期比15.0%増)、営業利益51億円(黒字転換)を計画しています。

■100株保有で割引券(100円)30枚を贈呈

配当政策は、原則配当性向20%以上、または調整後配当性向[配当総額÷(親会社の所有者に帰属する当期純利益+減価償却費及び償却費+その他営業費用-その他営業収益+減損損失+非経常的費用項目)×100]で2%以上を目標として配当を実現していく方針です。

9/28(火)時点で100株以上保有する株主は、割引券(100円)30枚が贈呈されます。保有株数が増えるごとに、贈呈される優待券も増加。200株以上では40枚、1,000株以上では100枚、2,000株以上で150枚の予定です。また、200株以上を1年以上継続保有の場合、30枚が追加される予定です。

八洲電機(3153) 金券等は保有株数ごとの現金換算額まで注意

八洲電機(3153)
(画像=SBI証券)

期間:2021/3/25~2021/9/17(日足)
※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

■日立系エンジニアリング会社

日立系の企業で産業機器などの販売から設備の提案・設計・施工まで手掛けるエンジニアリング会社です。

日立グループの特約店として同グループ製品を中心に取り扱い、同グループからの仕入割合は5割を超えています。

2022/3期・第1四半期は売上高119億円(前年同期比8.2%増)、営業利益4,200万円(同95.5%増)と順調。通期では営業利益24億円(前期比10.5%増)の計画です。

■100株で500円分、200株で2,000円分のグルメカード

上期末0円+期末20円=通期20円の配当を計画し、9/16(木)終値1,082円に対する年間予想配当利回りは1.84%と計算され、東証1部の予想配当利回り(1.72%)をやや上 回っています。

9/28(火)時点で100株以上保有する株主は、東日本復興支援ジェフグルメカード500円相当が贈呈される予定です。なお、200株保有では同カード2,000円相当、1,000株以上保有では5,000円相当と増額されます。

「100株で500円相当」の部分だけみると、他のクオカード等金券を贈呈する企業の株主優待から見劣る印象ですが、200株以上を保有すると、魅力度が一気に高まる印象です。

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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鈴木英之
SBI証券 投資調査部

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