近年、大雨や台風、またそれらによる土砂災害や洪水、そして大地震などの災害リスクが高まっています。これから注文住宅を建てる人は、災害対策を万全に行うことが重要です。そこで本稿では、それぞれの災害対策の背景と具体的に何をすればいいかについて解説します。
目次
注文住宅の災害対策1「大地震リスク」
注文住宅を建てるとき、関東地方から関西・四国・九州にかけての太平洋沿岸の地域の人は、大地震のリスクが気になるのではないでしょうか。下の地図は、国立研究開発法人 防災科学技術研究所が今後30年以内に太平洋沿岸で、震度6以上の地震が起こる地域を予想したものになります。紫のエリアが震度6以上の地震が起こる確率が非常に高いエリアになります。
(引用:国立研究開発法人 防災科学技術研究所 J-SHIS)
とくに「首都直下型地震」と「南海トラフ地震」に対する不安が高まっています。マグニチュード7クラスといわれる「首都直下地震」の発生確率は30年以内で70%、マグニチュード8〜9クラスといわれる「南海トラフ地震」は30年以内に70~80%と予測されています。
(参考:国土交通白書2020 第2節 地球環境・自然災害に関する予測)
注文住宅を建てるとき、この大地震リスクを減らすために次の2つの災害対策が有効だといえます。
- 地震に強い施工技術を選ぶ
- (土地を購入する場合)地震に強い土地を選ぶ
上記のうちの1つ目の災害対策「地震に強い施工技術を選ぶ」ですが、地震に強い家には耐震・免震・制震の3つの技術が使われています。
地震対策の技術 | 特徴 |
---|---|
耐震 (揺れに耐える) |
・建物の強度を高めて揺れに耐える ・戸建て住宅の大半で採用されている |
免震 (揺れを受け流す) |
・免震装置を組み込み地盤と建物を切り離し揺れを吸収する ・マンションなど高層の建物で採用されている |
制震 (揺れを吸収する) |
・建物にオモリやダンパーを組み込み揺れを吸収する ・建物のダメージを抑えて継続使用が可能に |
注文住宅に多く採用されている木造構造では、耐震技術のみが使われているケースが多いです。ただ最近では、耐震と制震の技術を組み合わせて地震リスクを軽減しているハウスメーカーや工務店もあります。
いずれにせよ、耐震・免震・制震の3つの技術を理解したうえで、複数のハウスメーカーや工務店の施工技術を比較するのがよいでしょう。
ハザードマップを確認し土地を選ぶ
もうひとつの災害対策である「地震に強い土地を選ぶ(土地を購入する場合)」については、各市区町村が提供しているハザードマップなどを利用してその土地の状況を確認しましょう。
国土交通省が提供する「わがまちハザードマップ(地震被害・危険度マップ)」経由すれば、次の種類のハザードマップが閲覧できます。
- 震度被害マップ
- 地盤被害マップ
- 液状化マップ
- 建物被害マップ
- 火災被害マップ など
ただし、上記のハザードマップをすべての市区町村が網羅されているわけではありません。なかった場合には、購入を予定している土地の市区町村のホームページを確認しましょう。
注文住宅の災害対策2「大雨と台風のリスク」
最近では、毎年のように日本各地で大雨と台風の大きな被害が発生しています。地球温暖化によって、今後さらに大雨と台風が強くなることが予想され、災害のリスクが高まっています。注文住宅を建てるときには、これらの災害対策も強く意識する必要があるでしょう。
気象庁の観測データの分析によると、大雨の日数は増え続けています。下記のグラフが示すように、1日の降水量が200ミリ以上の年間日数はこの約120年の間、右肩上がりの傾向にあります(グラフ内の赤線部分)。ちなみに、降り始めからの雨量が100ミリ以上になると土砂災害リスクが出てくるといわれています。
(引用:気象庁 特集 激甚化する豪雨災害から命と暮らしを守るために)
気象庁がスーパーコンピュータで割り出した予測によると、1日の降水量が200ミリ以上の大雨の年間発生回数を20世紀末と21世紀末で比べると全国平均で約2.3倍になるとの結果になっています(下記のグラフ参照)。
※温室効果ガスの排出が高いレベルで続いた場合の今世紀末のシミュレーション
(引用:気象庁 特集 激甚化する豪雨災害から命と暮らしを守るために)
合わせて、気象庁の台風の将来予測では、地球温暖化がこのまま進めば、台風など熱帯低気圧の強さが増す可能性を示しています。
注文住宅を建てるときに、この大雨、台風のリスクを減らすには、次の2つの災害対策が有効です。
- 強風に耐えられる施工技術を選ぶ
- 窓にシャッターや雨戸を設置する
上記のうちの「強風に耐えられる施工技術を選ぶ」については、前項で紹介した地震に強い家とほぼ共通と考えてよいでしょう。耐久性のある構造にすることが大切です。
もうひとつの「窓にシャッターや雨戸を施工する」も大雨や台風の被害緩和に有効です。大雨や台風などの強風、これにともなう飛来物によって窓ガラスが破損すると、室内にガラスの破片が散乱し危険な状態になります。
合わせて、窓から室内に強風が吹き込むことで天井や屋根が吹き上げられ、建物が壊れる可能性も出てきます。通常のシャッターや雨戸を設置するだけでも、大雨や台風のリスクを減らす効果があると思われます。最近では、風速80メートル超の大型台風の風圧力にも耐えられる高性能のシャッターも出てきています。
どのようなシャッター・雨戸を採用すればよいかは、立地・要望・予算などによってケースバイケースのため、ハウスメーカー・工務店・設計士などに相談するとよいでしょう。
注文住宅の災害対策3「土砂災害リスク」
大雨の増加や台風の大型化によって土砂災害リスクも高まっています。土砂災害とは、土石流、地すべり、がけ崩れなどの総称です。土地を購入して注文住宅を建てる人は、この土砂災害リスクを意識して土地選びをしたほうがよいでしょう。
具体的な災害対策としては、「土砂災害警戒区域(通称:イエローゾーン)」の対象となっている土地の購入を慎重に判断すべきでしょう。
土砂災害警戒区域とは、土砂災害が発生した場合、そこに住んでいる人の生命や身体に危害がおよぶ可能性がある地域のことです。土砂災害警戒区域では、土砂災害防止法によって市区町村は警戒避難体制を整備することが求められています。
なお、対象地域が警戒区域(または特別警戒区域)なのかについては、国土交通省が提供する「わがまちハザードマップ(土砂災害)」で土砂災害リスクを確認できます。
注意したいのは、土砂災害警戒区域はあくまでも「土砂災害リスクの可能性」を示すものです。そこに「絶対に住んではいけない」ということではありません。不動産会社などに以下のリスクを確認したうえで、納得できれば購入する選択肢もあるかもしれません。
- 過去に土砂災害が発生したことがあるか、その被害状況はどんな内容か
- 土砂災害の発生時にどのような被害が想定できるか
- どのような避難体制になっているか
※さらに土砂災害リスクの高い特別警戒区域(通称:レッドゾーン)もあります。この区域では、宅地分譲などの開発が許可制になるなどの制限がされます。
沿岸部であれば津波、河川近くであれば洪水にも要注意
ここでは、近年リスクの高まっている大地震、大雨、台風、土砂災害の災害対策をテーマにお話してきました。これ以外にも、沿岸部や河川が近くにあれば洪水リスクなどもあります。いずれにしても、注文住宅を建てる際は、土地のリスクを知って備えることが大切です。
注文住宅を建てるときの災害対策で最も効果的な方法は、「土地を購入する場合はなるべくリスクのない土地を選ぶこと」です。もし、所有している土地に注文住宅を建てる場合は、その土地のリスクに合わせて設計や建築をすることが重要になってきます。
(提供:タツマガ)
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