日経平均株価は中国の不動産開発大手、恒大集団(こうだいしゅうだん)に対する過剰債務問題への懸念から9/21(火)は急落、9/22(水)も続落。9/24(金)は同問題への懸念が後退したことや、FOMC(米連邦公開市場委員会)を無難に通過したことで3営業日ぶりに大幅反発となりました。
そうした中、株式市場では経済活動の再開に向けた銘柄が本格的に注目されつつあるようです。 新型コロナウイルスの新規感染者数がようやく減少傾向となってきた今、今後上昇が期待される銘柄について、株価騰落率を用いてご紹介します。
当ページの内容につきましては、SBI証券 投資情報部長 鈴木による動画での詳しい解説も行っております。ぜひ、ご視聴ください。
日本株投資戦略
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■執筆者のプロフィール
ラジオNIKKEI(月曜日)、中部経済新聞(水曜日)、ストックボイス(木曜日)、ダイヤモンドZAIなど、定期的寄稿も多数。
・出身 東京(下町)生まれ埼玉育ち
・趣味 ハロプロの応援と旅行(乗り鉄)
・特技 どこでもいつでも寝れます
・好きな食べ物 サイゼリヤのごはん
・好きな場所 秋葉原(末広町)
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≪コロナ後相場の主役!?≫上昇期待の経済活動再開銘柄を探る
2021年の夏は新型コロナウイルスの新規感染者数が初めて1万人を超え、8/20(金)には25,000人超と過去最高を記録しました。こうした中、ワクチンの接種ぺースも進み、新型コロナウイルスの新規感染者数は縮小傾向にあります。9/23(木)にはおよそ3,700人(厚生労働省調べ・7日移動平均)まで減少。今後、政府はワクチン接種証明等を活用して旅行や外食等の行動制限を再開していく方針です。
こうした流れを受け、株式市場では新型コロナウイルスの収束を見据えた相場が始まりつつあるようです。
9/21(火)の東京株式市場は、中国恒大集団の債務不履行問題をきっかけに大幅安となりました。一方、陸運や海運関連銘柄が買われるなど、物色対象が変化する兆しがみえていました。
そこで今回は、新型コロナウイルスの収束によって上昇が期待される銘柄を抽出しました。
以下の抽出条件を全て満たしたものが図表1です。
≪抽出条件≫
(1)東証1部上場銘柄。
(2)時価総額250億円以上。
(3)東証33業種が「小売」または、「サービス」、「陸運」、「空運」であること。
または“旅行”および“リベンジ消費”関連とみなされる銘柄であること。
(4)「陸運」、「空運」以外の銘柄である場合は流動比率が200%以上であること。
(5)52週高値からの株価下落率が10%超。
(6)「継続企業の前提」に疑義が生じていない銘柄であること。
なお、9月末日が決算の銘柄は、基本的に9/28(火)が権利付最終売買日、9/29(水)が権利落ち日となります。株主権利を取得したい場合は9/28(火)までに買い付ける必要があるのでご注意ください。
なお、2021年9月権利確定銘柄の中には権利確定日9/30とは異なる銘柄もございます。その場合の権利付最終日は9/28(火)とは異なりますのでご注意ください。各銘柄の権利付最終日は「株主優待検索」画面に遷移後、各銘柄の「優待情報の詳細を見る」ボタンをクリックして四季報の株主優待情報にてご確認ください。
図表1 ≪コロナ後相場の主役!?≫上昇期待の経済活動再開銘柄を探る
コード / 銘柄 / 株価(9/22) / 52週高値比の騰落率 / 銘柄概要・投資ポイント
<9048> / 名古屋鉄道 / 2,003 / -36.3% / 愛知・岐阜県に鉄道網
<9010> / 富士急行 / 4,535 / -30.2% / レジャー・サービスが売上の6割弱を占める
<9900> / サガミホールディングス / 1,065 / -27.3% / 和食麺類店。東海地盤
<9007> / 小田急電鉄 / 2,546 / -26.9% / 新宿・小田原間が中心の私鉄>
<9041> / 近鉄グループホールディングス / 3,690 / -26.5% / 近畿・東海エリアの私鉄。運行距離は日本の私鉄最長
<9021> / 西日本旅客鉄道 / 5,200 / -25.7% / 西日本で運行。公募売出を実施
<8185> / チヨダ / 817 / -22.1% / 東京靴流通センターを運営>
<9044> / 南海電気鉄道 / 2,341 / -21.0% / 難波から関西空港や高野山など鉄道を運行
<8163> / SRSホールディングス / 827 / -18.3% / 「和食さと」を中心に展開。関西地盤
<7085> / カーブスホールディングス / 880 / -17.9% / 女性専用の健康体操教室を運営
<4680> / ラウンドワン / 1,362 / -17.7% / 屋内型複合レジャー施設を運営
<9001> / 東武鉄道 / 2,943 / -17.1% / 浅草・日光間他。スカイツリー運営
<9743> / 丹青社 / 840 / -15.5% / 商業・文化施設の内装・展示
<7611> / ハイデイ日高 / 1,703 / -13.2% / ラーメンチェーン「日高屋」を運営>
<9009> / 京成電鉄 / 3,515 / -12.6% / 上野・成田空港間を結ぶ
※Bloomberg、会社公表データをもとにSBI証券が作成。
※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
※52週高値からの下落率が大きい順に掲載。
抽出銘柄の投資ポイント
この項では、図表1で抽出した銘柄についてご紹介します。
名古屋鉄道(9048) 私鉄の中で株価下落率が最大級
期間:2020/9/28~2021/9/24(週足)
※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
■中部地盤の私鉄大手
名古屋を起点に岐阜や豊橋と結ぶ私鉄大手です。
売上構成比(2021/3期)は交通(鉄道、タクシー、バス等)21.4%、運送(トラック、海運)26.7%、不動産15.6%、レジャー・サービス4.1%、流通(百貨店等)21.3%、航空関連サービス4.8%等と幅広く分散しています。
2021/3期は新型コロナウイルス感染拡大の影響で、本業の交通部門の他、流通部門が赤字となり、営業損益は163億円の赤字(2020/3期は473億円の黒字)になりました。会社側は2022/3期、130億円の営業黒字へ改善を予想しています。
なお、今年度第1四半期(2021/4~6期)は営業赤字18億円にとどまったものの、前年同期からの営業損益改善幅は84億円となりました。
不況のさなかですが、流通部門(百貨店)において2割増収を目指し、名古屋本店の改装開業(12/1)を予定しています。
■株価下落率は私鉄最大級
株価下落率は私鉄の中でも大きく、2020/11の高値3,145円から本年8/2安値1,790円までの下落率は43%に達しました。新型コロナウイルス収束後の相場が本格化した場合は陸運株の中でも、反発力が大きくなる可能性がありそうです。
9/28(火)現在で600株以上保有する株主は「電車線片道乗車証」2枚が贈呈推される予定です。保有する株式数に応じて贈呈される乗車証数が増加。8,000株以上の保有で「電車・バス全線乗車証」が贈呈されます。
富士急(9010) インバウンド需要の急減等で売上高が急減
期間:2020/9/28~2021/9/24(週足)
※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
■「レジャー・サービス業」が売上高の5割超
富士急ハイランドに代表される「レジャー・サービス業」が売上高の52.2%(2021/3期)を占めています。鉄道等の「運輸業」は27.1%、「不動産業」が8.3%(同)となっています。業種としては陸運業ですが、内容的にはサービス業的な部分が中心となっています。
新型コロナウイルスの感染拡大や、それに伴うインバウンド需要の急減等で業績は悪化。2021/3期は売上高304億円(前期比41.8%減)、営業損益は30.9億円の赤字(前期比75.9億円の悪化)となりました。
会社側は2022/3期、営業利益25億円への改善を見込んでいるようですが、市場は会社側より慎重な予想となっているようです。
株価は業績悪化を嫌気する形で2021/3高値6,500円から2021/8安値4,225円まで35%も下落しています。夏場の天候不順が第2四半期の業績に逆風となっている点は注意ですが、今後は押し目買いチャンス到来の可能性もありそうです。
■株主優待制度も充実
9/28(火)現在で100株以上保有する株主は、利用範囲が広範囲な「電車・バス・観光施設共通優待券」5枚の贈呈が予定されています。100株以上の保有で享受できる株主優待は、この他にも多くの種類があります。また、保有株式数の増加に応じ、上記「共通優待券」の贈呈枚数が増える仕組みになっており、充実した株主優待制度になっています。
ラウンドワン(4680) 屋内型複合レジャー施設を運営、海外出店も積極的に展開。
期間:2020/9/28~2021/9/24(週足)
※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
■郊外ロードサイドに複合アミューズメント施設
屋内型複合レジャー施設を展開。ボウリングやゲーム機器、カラオケ、各種スポーツ、ビリヤード・ダーツなど多くの遊戯施設を楽しめます。
日本を中心に米国他にも展開。店舗数(2021/6末)は国内99店舗、米国46店舗、ロシア1店舗、中国1店舗等合計147店舗を展開しています。
新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、2021/3期は売上高が609億円と、前期比41.8%減少。営業損益は192億円の赤字となりました。
■逆行下で収益回復策
国内既存店の売上対策としては各種コラボキャンペーンやアミューズメント機器の新規導入を通じ、収益力の強化をはかる方針です。
一方、米国については、売上対策としてリデンプションマシン(チケット等が払い戻される機器)と、体感機の新規導入を予定。さらには7月より、5%程度の値上げとなるよう価格改定を実施。出店計画については前向きに計画しているものの、おおむね2年の準備期間を要するため、2024/3期には5店舗以上の出店を目指します。
中国については早期に8店舗以上の出店を目指し、現状では3店舗分のリース契約が提携済みです。
株価は5月末高値1,654円から8月に1,026円まで約38%下げた後、現在は戻り局面にあるように見受けられます。
※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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鈴木英之
SBI証券 投資調査部
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