9月中旬以降、東京株式市場は下落基調です。

日経平均株価は9/14(火)に一時、およそ31年ぶりの高値水準となる30,795円78銭まで上昇しましたが、10/1(金)には一時、28,600円台まで下落しました。中国の恒大集団問題に加え、米国株が長期金利の上昇や、債務上限問題を背景に下落基調となっていることが理由と考えられます。

中国の恒大集団問題については、市場が織り込むまで長期化が予想されます。まだ全容が判明した訳ではないため、今後もリスク要因として注意が必要です。

9月最終週(9/27~10/1)の波乱は主に、米長期金利の上昇やそれを嫌気して米国株が下げたことが理由であると考えられます。米債務上限問題やインフラ投資法案、歳出法案に対する不透明感、インフレ懸念等が背景と考えられます。米長期金利は10月に入り、ポジション調整の一巡で落ち着く可能性はありますが、FRB(米連邦準備制度理事会)によるテーパリングは11月にも開始され、2022年には利上げに移行する可能性が強まっています。米長期金利は、中期的な上昇トレンドの入り口にあるのかもしれません。

そうした中、9/29(水)に第27代自民党総裁に岸田文雄氏が選出されましたが、株式市場からは株価波乱という手荒い歓迎を受けた形です。では、今後はどうなるのでしょうか。岸田新総裁の政策と関連銘柄について改めてチェックしていきます。

当ページの内容につきましては、SBI証券 投資情報部長 鈴木による動画での詳しい解説も行っております。ぜひ、ご視聴ください。
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日本株投資戦略
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■執筆者のプロフィール

鈴木 英之
鈴木 英之
SBI証券 投資情報部長 
・出身 東京(下町)生まれ埼玉育ち
・趣味 ハロプロの応援と旅行(乗り鉄)
・特技 どこでもいつでも寝れます
・好きな食べ物 サイゼリヤのごはん
・好きな場所 秋葉原(末広町)
ラジオNIKKEI(月曜日)、中部経済新聞(水曜日)、ストックボイス(木曜日)、ダイヤモンドZAIなど、定期的寄稿も多数。

≪株価波乱≫株式市場の見方と岸田新総裁関連銘柄

日本株投資戦略,上方修正期待銘柄
(画像=PIXTA)

9/29(水)に自民党総裁選の投開票が行われ、第27代総裁に岸田 文雄氏が選出されました。今後、岸田氏は10/4(月)に行われる臨時国会の首班指名を経て、第100代内閣総理大臣に就任する見通しです。なお、報道等を見る限り、総選挙は11月前半までに実施される可能性が大きいようです。

株式市場ではこれまで、自民党総裁選関連銘柄への物色が盛んに行われてきました。

特に人気があったテーマは河野 太郎氏の脱炭素政策に関連した「再生エネルギー」や脱ハンコに象徴される「行政のデジタル化」に関連する銘柄でした。これらの銘柄は、岸田氏が新総裁になったことで、当面は人気が後退する可能性が大きいと考えられます。ただ、行政のデジタル化は地方と都市の格差是正を訴える岸田新総裁の政策にも含まれるため、動向に注目したいところです。

岸田新総裁は「新しい資本主義の構築」をめざす方針を示し、新型コロナウイルス対策への取り組みを強調した上で、年内に数十兆円規模の経済対策を打ち出す方針を表明。経済対策は大きく分けて以下の5点が挙げられます。

・数十兆円規模の経済対策。
・新しい資本主義。分配なくして成長なし。大企業と中小企業、高所得者と低所得者、都市と地方間の格差是正。
・健康危機管理庁の設置。医療難民ゼロ、野戦病院導入、電子ワクチン証明書の発行。
・原発再稼働を含むクリーンエネルギー政策。
・地方のデジタルインフラ整備。デジタル田園都市構想や5Gインフラ活用、デジタル推進。

図表1にSBI証券の投資情報レポートや各種報道などで紹介された関連銘柄を羅列しました。

過去1ヵ月間の騰落率をみる限り、これらの銘柄はまだ株式市場で十分に評価されていない可能性がありそうです。

岸田新総裁関連銘柄 岸田新総裁関連銘柄
(画像=SBI証券)

図表1 ≪岸田新総裁関連銘柄≫株価波乱で押し目買いのチャンス!?
コード / 銘柄 / 株価(9/30) / 騰落率(8/31~9/30) / 銘柄概要・投資ポイント
<1447> / ITbookホールディングス / 502 / 0.0% / ワクチンパスポートに必要なマイナンバーカードの普及促進
<2150> / ケアネット / 1,400 / ※-12.5% / 医師に医薬情報を提供し、製薬会社の営業活動を支援
<2175> / エス・エム・エス / 4,085 / 4.9% / 介護・医療の人材紹介。看護師紹介でトップシェア
<3738> / ティーガイア / 1,987 / 1.0% / 携帯ショップの人員を「デジタル推進員」とする構想も
<4013> / 勤次郎 / 1,868 / -5.6% / ワクチン証明書のデジタル化。
<4061> / デンカ / 3,930 / 2.1% / ファインケミカル製品と医薬品。コロナとインフルを同時に判定
<4480> / メドレー / 4,165 / -5.2% / 医療機関、介護・保育施設と人材をネットでマッチング
<4544> / H.U.グループホールディング / 3,035 / -6.6% / 受託臨床検査サービス、臨床検査薬
<4556> / カイノス / 1,291 / -5.6% / 血液や尿等を分析する体外診断薬
<4595> / ミズホメディー / 3,205 / -5.7% / 感染症迅速診断キット
<4974> / タカラバイオ / 3,165 / -0.6% / 宝HDグループのバイオ事業会社。PCR検査薬
<6034> / MRT / 2,392 / -1.2% / インターネットを通じ、医療人材を紹介。
<6326> / クボタ / 2,389 / 5.0% / 農業機械国内最大手。5Gを活用したスマート農業の担い手
<6580> / ライトアップ / 3,185 / -3.6% / 中小企業向け経営コンサルタント
<7681> / レオクラン / 3,210 / -8.3% / 医療機関をトータルサポート
<7732> / トプコン / 1,946 / 4.2% / スマート業農業でクボタと共同研究

※SBI証券Webサイト、各種報道等をもとにSBI証券が作成。
※騰落率は9/30(木)終値を8/31(火)終値と比較した騰落率。ケアネットは株式分割を加味した実質値。
※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

抽出銘柄の投資ポイント

この項では、図表1で抽出した銘柄について、投資ポイントなどをご紹介します。

ケアネット(2150) 医療DXの推進役

ケアネット(2150)
(画像=SBI証券)

期間:2021/4/5~2021/10/1(日足)
※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

■製薬企業向けに医薬営業支援サービス

同社は製薬企業向けの医薬営業支援サービスや医師・医療従事者向けの医療コンテンツサービスを展開しています。

1996年7月に医療情報提供サービスを目的として設立。1998年4月に郵政省(現総務省)より委託放送業務の認定を受け、同年7月に多チャンネルデジタル衛星放送「スカパー!」にて「ケアネットTV・メディカルCh.R」を開局しました。2010年1月に医薬情報提供サービス「eディテーリングR」に関して国内特許を取得し、11年4月に医師のための医療ソーシャルメディア「MRPlus」サービスを開始。2015年5月には、世界最大級の医療情報サイト「Medscape」を運営するWebMD社と業務提携しました。

■新型コロナウイルス感染拡大下で業績拡大

2021年12月期第2四半期累計(1~6月)の連結業績は、売上高が38.2億円(前年同期比2.1倍)、営業利益が13.9億円(同3.0倍)でした。

製薬企業はMRの医療機関への訪問自粛が続いている背景から、医薬営業支援サービスの各既存サービスのニーズが高まり、受注が増加しまた。医薬DX事業が伸びたほか、メディカルプラットフォーム事業では医療教育動画サービスも拡大しました。

2021年12月期の連結業績予想は、売上高を76.6億円(前期比44.5%増)、営業利益22億円(同46.4%増)を据え置いています。

岸田新総裁がめざす「医療難民ゼロ」を実現するには、医療機関のDX推進が必要とみられ、当社にとってはビジネスチャンスになりそうです。

メドレー(4480) 遠隔医療は「地方のデジタル化」の核的存在か?

メドレー(4480)
(画像=SBI証券)

期間:2021/4/5~2021/10/1(日足)
※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

■日本最大級の人材採用システム

日本最大級の人材採用システム、ジョブメドレー(人材プラットフォーム事業・2021/12期第2四半期累計売上高構成比は74.8%)が主力事業です。

この他、日本最大級のオンライン診療システムであるCLINICSオンライン診療を中核として、患者のための医療情報サービス、市民のための介護情報サービスなどの医療プラットフォーム事業(2021/12期第2四半期累計売上高構成比は23.1%)を手掛けています。

医療機関は患者をオンラインで診察する際に同社システムを活用すれば、スムーズな業務が可能に。PC上で患者の予約状況を一元管理し、ビデオカメラなどでの診察中にはチャットでのやり取りが可能となり、必要な画像ファイルも送受信できます。

同社は当面、ある程度損益を犠牲にしても、投資や買収を積極的に行っていく方針です。

■NTTドコモと業務資本提携。早くもその効果か。

同社は4/22(木)にNTTドコモとの業務資本提携を発表。

51億円の資本注入を得て、NTTドコモの約8千万人の顧客基盤を活かし、オンライン診療システムの普及を図ります。

こうした中、8/13(金)に2021/12期・上半期決算を発表。売上高55.4億円(前年同期比55.4%増)と高成長を維持し、営業利益8.24億円(同81.9%増)を確保。

2021/12期・会社予想営業利益は1.6~6.6億円(中心は4.1億円)ですが、市場では6.5億円を予想。また、2022/12期は11.6億円、2023/12期は16.8億円が市場コンセンサスです。

8/23(月)には、NTTドコモと共同で、患者と医師を予約なしでつなぐオンライン診療システムの提供を発表。これら一連の前向きな動きを背景に、株価の底値固めが進みつつあるようです。

8/30(月)に富士キメラ総研が発表したレポートでは、同社の電子契約サービス(有償プラン)が導入企業数において、市場占有率トップとなりました。 紙と印鑑をクラウドに置き換える同サービスは、DX事業の中核であり、同社の魅力の1つと言えるでしょう。

同社の遠隔医療システムは、地方のデジタル化の核になる技術かもしれません。

「地方のデジタル化」をめざす岸田新総裁の関連銘柄であると考えられます。

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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鈴木英之
SBI証券 投資調査部

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