目次

  1. 1. 譲渡性預金とは?
  2. 2. 譲渡性預金のメリット
  3. 3. 譲渡性預金のデメリット
  4. 4. 譲渡性預金の利用に向いている人の特徴
  5. 5. 譲渡性預金の利用条件
  6. 6. まとめ:譲渡性預金は発行金額や期間、金利などを自由に設定できるオーダーメイド預金

譲渡性預金(NCD)は銀行預金のなかではあまり知られていない商品だろう。定期預金の一種だが、満期日前に第三者に譲渡できるため、大口の預金者、とくに企業が資金需要のために利用することが多い商品だ。その独自の仕組み、メリット・デメリット、そして、その利用条件、普通の定期預金との違いなどを紹介する。

1. 譲渡性預金とは?

譲渡性預金とは、満期日前に第三者に譲渡することができる定期預金証書である。銀行の定期預金証書は通常、第三者に譲り渡すことはできないが、銀行が無記名の証書を発行することで譲渡が可能となる。Negotiable Certificate of Depositの英語表記を略してNCDまたはCDと呼ばれている。

1961年に米シティバンクが発行したのが始まりで、その後、ユーロ市場に波及した。日本では1978年12月に金融制度調査会が導入を打ち出し、翌1979年5月から発行されるようになった。

金融機関や機関投資家、各種法人によって短期金融市場でも活発に取引されており、CD3ヵ月ものの金利は短期金融市場金利の重要な指標になっている。

1.1. 譲渡性預金の仕組み

譲渡性預金は、定められた満期日(払い戻し期限)はあるが、譲渡は禁止されていない。発行元の金融機関で手続きをすれば譲渡できる仕組みになっている。発行金額や期間、金利などを自由に設定でき、取引期間が1年未満の短期金融市場で売買されている。

譲渡の方法は、指名債権を譲渡する形で行われる。譲渡価格は、満期日前に譲渡する場合は市場の実勢価格となる。そのため、投資元本を割り込む場合がある。場合によっては買い手がつかずに譲渡できないこともある。

譲渡性預金は金融商品取引法で定義されている有価証券には該当しない。ただし、有価証券に類似しており、活発な市場があることから、取得した者は会計上、有価証券として計上することとされている。

1.2. 譲渡性預金は大口預金者向けの商品で個人、法人が取引できる

譲渡性預金は、大口預金者向けの商品で、個人および法人が取引できる。最低預入金額が金融機関によって1,000万円~5,000万円に設定されているため、法人の利用が多いといわれる。個人向けであれば、いわゆる富裕層が利用する商品である。

2. 譲渡性預金のメリット

どのような金融商品にも必ずメリットとデメリットがある。譲渡性預金のメリットとしては次の3つが挙げられる。

2.1. 譲渡性預金のメリット1:短期運用に有利で、通常の預金よりも有利な金利で運用できる

譲渡性預金の金利は、普通預金など通常の預金よりも高く設定されている。預入期間も自由に設定できるため、短期運用に有利な商品と言える。預入時の金利が満期まで適用されるので、金利の見直しによって利息が減るという心配はない。

2.2. 譲渡性預金のメリット2:元利金を第三者に譲渡することができる

譲渡性預金は、元利金を第三者に譲渡できる。預入期間の途中であっても預金証書額面の元利金を第三者に譲渡可能。預入期間が2年の場合、1年目の応当日(中間利払日)以降に預金者または譲渡があった場合の譲受人から請求があれば中間利払いが行われる。元利金をともに譲り受けできることで相手方が見つかりやすいというメリットがある。預入期間が2年未満の場合は満期時に一括して利息が支払われる。

2.3. 譲渡性預金のメリット3:急な資金需要にも対応できる

資産運用は余裕資金で行うべきだが、時には急に資金が必要になることもあるだろう。通常の定期預金では中途解約すると利率が下がるペナルティがあるが、譲渡性預金は譲渡であり、中途解約ではないため、利率が下がることはない。急な資金需要に対応できるのが譲渡性預金のメリットである。

3. 譲渡性預金のデメリット

譲渡性預金のデメリットは、普通の定期預金よりも預け入れる金額が高いことと、預金の一部のみを譲渡することができないことである。

3.1. 最低預入金額が高い銀行が多い

最低預入金額は銀行ごとに定められているが、5,000万円以上など、高額に設定している銀行が多い。預入金額の経緯を見ると、1979年5月から都市銀行等で譲渡性預金が始まった当初は最低預入金額が5億円以上で、超富裕層でなければ運用することが難しかった。その後、数度にわたって規制が改訂されたことにより、最低預入金額の規制は撤廃され、金融機関が自由に設定できるようになっている。現在では最低預入金額を1,000万円以上に設定している金融機関が多い。

付利単位(利息の付く金融商品において、1円単位、10円単位、100円単位など、利息を計算するための元本(元金)の金額単位)も各行で異なる。たとえば、りそな銀行は最低預入金額5,000万円以上、1,000万円単位で、付利単位は1,000万円。東邦銀行は1,000万円以上1円単位で、付利単位は1円である。仮に1,500万円を預け入れたい場合、1,000万円以上1円単位の銀行を選ぶ必要がある。

3.2. NCDの一部だけを譲渡することはできない

NCD(譲渡性預金)は預金の一部だけを譲渡することはできない。利息は満期になった時点で保有していた人に支払われる仕組みになっている。預入期間2年未満の場合、はじめに預けた人や転売した人に利息が入ることはない。したがって、元本のみを譲渡することはできないことを心得ておく必要がある。証書は1つであるから、当然分割して譲渡することもできない。

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4. 譲渡性預金の利用に向いている人の特徴

金融商品はそれぞれ違った特徴があるため、運用目的に合わせて選ぶ必要がある。譲渡性預金はどのような人に向いているのだろうか。

4.1. 譲渡性預金の利用に向いている人(1):手持ち資金があり、通常預金よりも高い金利を狙いたい人

手持ち資金が1,000万円以上あり、少しでも金利を狙いたい人に向いている。超低金利下で通常の普通預金や定期預金に預けても利息らしい利息は付かないのが現状だ。かといって株式投資をはじめ価格変動がある商品でリスクを負うのは避けたい。そのような人にとって、通常預金よりも有利な金利で預けられる譲渡性預金は魅力的に感じるかもしれない。

4.2. 譲渡性預金の利用に向いている人(2):計画性があり、ライフイベントに合わせて運用したい人

計画的に資金を運用したい人にも向いている。マイホームの建築または購入で2年後に頭金を入金しようと計画している場合、満期が直前になるように設定することができる。預入期間を自由に設定できる譲渡性預金は、マイホームの他にも大学入学、結婚、自家用車の購入など高額な資金が必要なライフイベントの準備資金として運用するのに適した商品といえる。

譲渡性預金にはいくつかの利用条件があり、普通の定期預金と異なる基準もある。資産状況や運用目的に合わせて、預けやすい銀行を選ぶことが求められる。

5.1. 利用条件:最低預入金額が設定されている

先に紹介したように、銀行ごとに最低預入金額が設定されている。最低預入金額が低い銀行でも1,000万円以上は必要となる。法人や大口預金者向けの商品であるため、残念ながら少額の預金者は対象外の商品となっている。

5.2. 預入期間:最低1日~2週間程度などさまざま

譲渡性預金は最低1日から預け入れできる。たとえば、七十七銀行の預入期間は1日以上2年以内である。その期間内で資金の必要に合わせて自由に設定できるので、無駄のない運用が可能になる。普通の定期預金の預入期間はほとんどが1ヵ月からなので、2週間程度でも運用できるのは譲渡性預金ならではの特徴といって良いだろう。

5.3. 商品の詳細は各行によって異なるため、Webサイトで確認するのが確実

譲渡性預金についての詳細は各行によって異なるので、商品の特徴を知りたいのなら、各行のWebサイトを見るのが最も確実である。ただし、ある種の都市銀行ではWebサイトで譲渡性預金の情報を公開していない。地方銀行ではほとんどの場合、掲載をしているので、1,000万円~5,000万円程度の預け入れを考えているなら、地方銀行のほうが、申し込みがしやすいかもしれない。

5.4. 譲渡性預金の申し込み手続き

譲渡性預金の申し込み手続きは、銀行の店舗窓口で行える。持参するものは当該銀行の通帳と届出印である。口座を持っていない場合は、口座を作るための届出印と確認書類(個人の場合は運転免許証、健康保険証、パスポート等、法人の場合は商業登記簿謄本、印鑑証明書等)を持参して手続きを行う(中国銀行の例)。

5.5. 譲渡性預金の商品概要

ここで改めて、証券化商品の概要を確認しよう。これらはあくまで一般例であり、金融機関によって異なる場合がある(引用元:金融情報サイトiFinance「金融経済用語集 譲渡性預金」)。

取扱機関 都市銀行や地方銀行など
利用対象者 法人および個人
預入期間 満期日指定方式
払戻方法 満期日以後に一括して払戻し/譲渡可能(中途転売可能)
預入金額 5,000万円以上や1,000万円以上など
適用利率 預入時期にその時点での市場実勢を反映し、決定
利払い
  • 預入期間2年未満のものは、元金の払戻し時(満期日)に元本と共に一括して支払う
  • 預入期間2年以上のものは、中間利払いを行う。この場合の中間利払い日は、預入日の1年ごとの応答日となる
中途解約 満期日前の解約はできない
税金 法人:総合課税、個人:源泉分離課税 ※除く非居住者
備考
  • 預金保険の対象ではない
  • 満期日以後は利息を付けない
  • 発行者の経営・財務状況の変化、および、それらに関する外部評価等により、損失を被ることがある

6. 余裕資金があり、いざという時に金利のペナルティなく資金化したい人には、譲渡性預金はうってつけ

日本銀行の資金循環統計によると、2021年6月末現在の家計金融資産は、現金・預金が1,072兆円、保険・年金・定型保証が538兆円、証券が325兆円、その他が56兆円となっている。家計総資産1,992兆円のうち現金・預金が53.8%と過半数を超えていることから、日本人の預金志向は依然、根強いことがうかがえる。つまり、余裕資金があったら定期預金(あるいは普通預金)にしておきたいと考えている人が多いということだ。

通常、定期預金を満期前に解約すると、金利減額というペナルティを受ける。急に資金が必要になった時に金利のペナルティを受けずに現金化したい人にとっては、譲渡性預金はうってつけの商品であるといえる。

譲渡性預金は、発行金額や期間、金利などを自由に設定できることから、オーダーメイド預金と考えることもできるだろう。普通の定期預金に魅力を感じない人は、譲渡性預金の利用を検討してみるのも良いのではないだろうか。

*本記事は譲渡性預金の概要について紹介するものであり、特定の金融機関や商品を推奨するものではありません。申し込みにあたっては、金融機関のWebサイトで最新の情報をご確認ください。

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丸山

丸山優太郎
日本大学法学部新聞学科卒業のライター。おもに企業系サイトで執筆。金融・経済・不動産系記事を中心に、社会情勢や経済動向を分析したトレンド記事を発信している。