東京株式市場は荒い値動きが続いています。

日経平均株価は9/27(月)~10/6(水)にかけて8営業日続落となり、2009/7/1~7/13の9営業日続落以来、およそ12年3ヵ月ぶりの連続下落日数となって、9/14(火)終値で付けた30,670円10 銭の年初来高値からは2,700円超も下げた水準となりました。

10/7(木)は米長期金利の上昇や原油高が一服し、株価はようやく反発して、10/8(金)も米株高を受けて上昇しました。

こうした中、10月下旬にはいよいよ3月決算企業等の2021/7~9期決算発表が本格化します。

国内外のさまざまな不透明要因に覆われている日本の株式市場ですが、市場では10月下旬から本格化する2021/7~9期をきっかけに企業業績の強さが再評価され、日本株が上昇基調になると予想する向きも多いようです。

そこで今回は、決算発表を控えて物色対象になり得るような銘柄の抽出を行いました。

当ページの内容につきましては、SBI証券 投資情報部長 鈴木による動画での詳しい解説も行っております。ぜひ、ご視聴ください。

日本株投資戦略
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■執筆者のプロフィール

鈴木 英之
鈴木 英之
SBI証券 投資情報部長 
ラジオNIKKEI(月曜日)、中部経済新聞(水曜日)、ストックボイス(木曜日)、ダイヤモンドZAIなど、定期的寄稿も多数。
・出身 東京(下町)生まれ埼玉育ち
・趣味 ハロプロの応援と旅行(乗り鉄)
・特技 どこでもいつでも寝れます
・好きな食べ物 サイゼリヤのごはん
・好きな場所 秋葉原(末広町)
ラジオNIKKEI(月曜日)、中部経済新聞(水曜日)、ストックボイス(木曜日)、ダイヤモンドZAIなど、定期的寄稿も多数。

【決算発表直前】好業績が期待される銘柄

日本株投資戦略,上方修正期待銘柄
(画像=PIXTA)

10/1(金)に日本銀行が公表した9月の日銀短観では、3ヵ月前に想定していたよりも、輸送用機器、造船・重機等、不動産、対個人サービスなど、景況感が悪化している業種が散見されました。また、仕入れ価格も上昇傾向にあり、今後企業の利ザヤが縮小する可能性もあります。こうした企業業績の変調は、株価への懸念材料とならないのでしょうか。

9月の日銀短観は、今年の7~9月の統計結果です。同期間は、新型コロナウイルスの新規感染者数が急増し、緊急事態宣言が長期化していた時期と重なります。対個人サービスや小売などの業績は、その影響も想定されるため、新型コロナウイルスの感染者数が減少してきた現在はそれほど悲観視しなくても、よいかもしれません。ただ、半導体不足なども影響となった自動車や自動車部品を含む輸送用機器の下振れは、関連業界のすそ野も広いため要注意と考えられます。

図表1は、東証1部の主要銘柄(時価総額1千億円超・3月決算)について、2022/3期・第1四半期(2021/4~6期)の営業増益率が大きかった銘柄を、増益率の大きい順(黒字転換は最優先)に20銘柄並べたものです。

ただし、以下の銘柄は除外しています。

・9月の日銀短観で、景況感が下振れた業種(輸送用機器や物品賃貸、個人用サービスなど)
・営業赤字銘柄

今後、今期業績予想の上方修正が期待される銘柄に物色が向かった場合、図表1の銘柄が注目される可能性が高いでしょう。

なお、関連情報として「今期予想増益率」に加え、「来期予想増益率」も併記しました。今期・来期共にアナリストの期待が大きい銘柄は、人気が持続する可能性がありそうです。逆に、足元の予想増益率が高くても、来期に減益が予想されている銘柄は、好材料出尽くしのタイミングが接近している可能性もあります。

大幅営業増益を達成した東証1部企業 大幅営業増益を達成した東証1部企業 大幅営業増益を達成した東証1部企業
(画像=SBI証券)

図表1 2022/3期・第1四半期に大幅営業増益を達成した東証1部企業(一部業種除く)
コード / 銘柄 / 株価(10/7) / Q1増益率 / 今期予想増益率 / 来期予想増益率>
<5802> / 住友電気工業 / 1,461.5 / 黒転 / 48.7% / 17.0%
<5401> / 日本製鉄 / 1,896.5 / 黒転 / 黒転 / -29.9%
<4183> / 三井化学 / 3,525 / 黒転 / 97.9% / -9.0%
<2433> / 博報堂DYホールディングス / 1,810 / 2936.9% / 26.8% / 11.5%
<6752> / パナソニック / 1,256.5 / 2677.5% / 31.5% / 12.4%
<5803> / フジクラ / 631 / 1439.1% / 32.2% / 7.4%
<7994> / オカムラ / 1,549 / 1178.4% / 23.8% / 8.0%
<6724> / セイコーエプソン / 2,126 / 1052.4% / 54.4% / 3.2%
<6951> / 日本電子 / 8,050 / 1003.8% / 90.5% / 46.5%
<4544> / H.U.グループホールディングス / 2,850 / 987.8% / 29.6% / -46.9%
<5929> / 三和ホールディングス / 1,351 / 986.9% / 7.5% / 8.3%
<7733> / オリンパス / 2,307 / 644.5% / 67.3% / 18.1%
<5711> / 三菱マテリアル / 2,176 / 492.9% / 83.0% / -9.3%
<9101> / 日本郵船 / 7,750 / 492.4% / 138.9% / -26.7%
<4118> / カネカ / 4,390 / 483.9% / 48.2% / 3.9%
<4202> / ダイセル / 858 / 350.7% / 15.2% / -14.7%
<4114> / 日本触媒 / 5,580 / 347.5% / 黒転 / -1.4%
<6971> / 京セラ / 6,576 / 327.5% / 85.6% / 14.5%
<8053> / 住友商事 / 1,565.5 / 327.4% / 黒転 / -14.5%
<9936> / 王将フードサービス / 5,790 / 310.1% / 31.7% / 12.5%
<6503> / 三菱電機 / 1,493.5 / 309.7% / 28.4% / 10.9%
<5714> / DOWAホールディングス / 4,320 / 299.2% / 57.3% / -10.6%
<6098> / リクルートホールディングス / 6,688 / 292.6% / 96.9% / 11.1%

※会社公表データ、BloombergデータをもとにSBI証券が作成。
※収益認識基準の変更に伴い、2022/3期から多くの企業で決算短信上では増益率の記載がない企業が多くなっていますが、ここでは「Q1増益率」は2022/3期・第1四半期(4~6月期)の営業増益率、「今期予想増益率」と「来期予想増益率」はBloomberg集計の市場コンセンサンセスをベースに、前期利益と単純計算しています。
※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

抽出銘柄の投資ポイント

図表1の銘柄について、投資ポイントは以下の通りです。

また、一部の銘柄については、動画にてチャートを交えて詳細をご説明します。

■住友電気工業(5802)
ワイヤーハーネスが好調。ただ、東南アジアの新型コロナウイルスの拡大でトヨタ自動車(7203)など、減産の影響も。

■日本製鉄(5401)
海外事業の好調などを理由に、今期業績の上振れを示唆する報道も。ただ、市場コンセンサスは来期減益予想。

■三井化学(4183)
SBI証券の企業調査部では、今期最高益予想も、来期は基盤素材悪化で減益を予想。

■博報堂DYホールディングス(2433)
東京五輪の規模が縮小されるなど厳しい環境下で、粗利率が改善傾向。第2四半期も粗利増加の可能性。

■パナソニック(6752)
9/17(金)に米ソフトウェア会社をおよそ71億ドルで買収。新型の車載電池を開発し、世界標準狙う。一方、中国景気はリスクか。

■フジクラ(5803)
光ケーブルの受注が好調。米アップルが顧客。フレキシブル基板でトップクラスの販売シェア。

■オカムラ(7994)
個室のワークブースを施工。新型コロナウイルスの感染拡大でリモート勤務が増えた逆風の中、最高益予想。

■セイコーエプソン(6724)
新型コロナウイルスの感染拡大による在宅ワークで、家庭用プリンタが活躍!

■日本電子(6951)
露光装置で世界最大規模のASML社のEUV露光装置向け、描画装置を製作。ASMLは今後数年間の売り上げ見通しを引き上げている。

■H.U.グループホールディングス(4544)
PCR検査薬や抗原検査試薬などの売上が好調。市場は来期の反動減を予想。

■三和ホールディングス(5929)
重量・軽量シャッターで最大手。日本・欧米を中心に展開。多発する豪雨災害で防水シャッターに需要。

■オリンパス(7733)
消化器内視鏡で世界シェア70%。医療の効率化をめざす岸田内閣の政策は追い風か。

■三菱マテリアル(5711)
自動車向けや、半導体向け製品が好調で、8/6(金)に通期予想を上方修正。

■日本郵船(9101)
中国の景気鈍化や原材料価格の高騰が逆風。来期は利益が反動減の予想。予想配当利回り9%台。

■カネカ(4118)
塩化ビニール樹脂などの主力製品が好調。市場コンセンサスでは、安定成長が続くとの見方。

■ダイセル(4202)
半導体や化粧品の他、自動車向けの材料などの売上が想定以上。

■日本触媒(4114)
2030年に向け、セグメントを変更し、事業ポートフォリオを明確化。海外市況の上昇で8/5に上方修正。

■京セラ(6971)
半導体製造装置用部品や、5G向けセラミックパッケージ等が好調。車載カメラの需要増。ただし、半導体不足の影響には要注意。

■住友商事(8053)
四半期ベースで最高益。銀や亜鉛、鉄鉱石などの採算が改善。

■王将フードサービス(9936)
既存店売上高(前年同月比)が7月は+5.4%から、8月は-8.6%、9月は-9.5%。株価は9/14(火)の高値から下落基調。

■三菱電機(6503)
長崎製作所の品質不正問題が逆風に。

■DOWAホールディングス(5714)
8/6(金)に今期予想営業利益等を上方修正。環境・リサイクル関連の好調続きそう。

■リクルートホールディングス(6098)
三菱UFJ銀行とキャッシュレス決済サービスを展開。

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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鈴木英之
SBI証券 投資調査部

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