正興電機製作所【6653・東1】電力、水処理インフラ支えるシステムを開発再エネ・ロボットなど新分野開拓で売上倍へ
添田 英俊社長

 2021年に創業100周年を迎える正興電機製作所は、九州地盤に電力や水処理向けといった社会インフラを支える制御システムや製品を開発製造している。売上の4分の3を占める電力、環境エネルギー事業を基盤に、近年は再生可能エネルギー、AI/AR、ロボット事業など新分野の開拓を進める。中期経営計画の最終年度を迎える21年12月期は、売上高が前期比3割増の300億円、営業利益率6・7%、ROE13・4%を計画。さらに5年後には売上高500億円を目標に掲げる。

添田 英俊社長
Profile◉添田 英俊(そえだ・ひでとし)社長
1955年福岡県出身。78年九州工業大工卒、正興電機製作所入社。2008年同社執行役員、正興社会システムカンパニー社長。12年取締役上級執行役員。15年取締役常務執行役員。18年代表取締役社長兼営業統括本部長。19年代表取締役社長(現任)。

社会インフラをサポート
電力と環境エネルギー事業

 同社の事業セグメントは、「電力部門」「環境エネルギー部門」「情報部門」「サービス部門」の4つ。部門別売上高比率は、電力が約25%、環境エネルギーが約50%と、2つのコア事業で全体の4分の3を占める。

 祖業の「電力部門」では、電力の安定供給をサポートするため発電、変電、配電に関わる総合制御システムや製品を開発・製造して電力会社に販売。主要顧客の九州電力とは共同開発なども手掛け、その技術を全国の電力会社に展開している。

「環境エネルギー部門」では3つの事業を行っている。1つ目は上下水、ダム、道路電力などを監視制御するシステムや製品を手掛ける公共インフラ事業。2つ目は小水力発電、太陽光など再生可能エネルギー向けの製品・システムなどを提供する産業事業。そして3つ目は、企業や一般家庭向け蓄電システムなどを製造販売するパワーエレクトロニクス事業だ。

 2020年12月期の連結売上高は、新型コロナウイルスの影響で海外拠点での営業活動が停滞したことを受け、前期比4・6%減の233億8300万円。一方、営業利益率は同46%増の13億2500万円。セグメント別でみると、コア事業の電力と環境エネルギー部門は、売上高、利益共に増加となった。特に、環境エネルギーのセグメント利益は、前年比239%増と増加が著しい。その要因を、「社内の管理体制を刷新した」と添田英俊社長は話す。

「一般的に公共事業をやっている企業は本来利益率8~10%です。我々も自治体などから元請けで受注いただいているので、それくらいの利益は出るはず。つまり、今までの利益率が悪すぎたということです。そこを改善するために、責任者を変え管理体制を大幅に変えました」(添田英俊社長)

正興電機製作所【6653・東1】電力、水処理インフラ支えるシステムを開発再エネ・ロボットなど新分野開拓で売上倍へ
▲電力の安定供給をサポートする総合制御システム

他社との協業を積極推進
AI、ロボット開発に注力

 1921年創業の同社は、21年に創立100周年を迎える。創業時から電気機械器具類の販売、電気工事及び配電盤製作などを手掛け、日本の高度経済成長と共に電力を安定事業として成長した。

「昔は日本の電力事業が大きく伸び、私共もそれに従って伸びてきました。しかし電力が頭打ちになり、それほど伸びなくなった。その時たまたま環境事業が伸びて、電力で落ちた分を補いました」(同氏)

 同社の強みは、電力と環境エネルギーのコア事業で培った、OT(制御・運用技術)、IT(情報技術)、プロダクト(モノづくり)の3つの技術を併せ持つ点だ。これらの技術力を活かし近年は、新素材液晶、ロボット、AI/DXなどの分野にも注力する。既存の安定事業にとらわれることなく、他社との協業を積極的に行いながら新事業、新製品の開発に取り組んでいる。

 2020年1月には、事業創出や製品開発を目的に福岡市の本社内にオープンイノベーション室を開設した。また同年11月は古賀事業所に「SEIKO ELECTRIC INNOVATION FIELD」を開設。NTTドコモなどとの協業で、5Gを活用した次世代警備サービスの実証実験を行った。21年1月には、産業用AIスマートカメラ、ARグラス開発で技術力を持つ福岡のスタートアップHMS社に出資。さらに同年5月にも、新たに社内にロボットセンターを開設した。

「基本事業にしがみついていたのではなかなか売上は上がりません。新しいものにチャレンジしない限り(成長は)無理です。一緒に組めるパートナーが多ければ事業も大きくなってくるので、今後も積極的に協業していきたい」(同氏)

 また、同社は電気機器メーカーだが商社部門も持っており、自社開発以外にも海外から最新の製品を輸入販売している。コロナ禍では、中国から検温カメラやサーマルデバイスを輸入販売した。商社部門で仕入れた製品のメンテナンスができるのも、技術力を誇る同社の強みだ。

5年で500億円を計画
「RE100」で再エネに期待

 中期経営計画の最終年度となる21年12月期は、売上高300億円(前期比28・3%増)、営業利益20億円(同50・9%増)と過去最高を見込む。

 さらに次の目標として、5カ年計画で売上高500億円を目指している。成長戦略としては、現在引き合いの多い、AI、ロボット、再生可能エネルギーの分野を伸ばしていく。再生可能エネルギーでは、ソーラーカーポートや工場向け蓄電池など再生化に必要な製品の開発を推進している。

「今は、RE100(※)の取り組みを2030年までにやっていこうという企業が多いので、まずはその手伝いを我々がしていきたい。また売上500億円を目指すには海外や新規事業を育成する必要があるので、こちらも意欲的に取り組みたいと思います」(同氏)

 数値計画としては、年間で再生可能エネルギーを50億円、AIを10億円積み上げていき、ロボットも5年間で30億円ほどを見込む。さらに海外の売上比率を5%から10%まで伸ばしていくという。

※RE100:企業が自らの事業の使用電力を100%再生可能エネルギーで賄うことを目指す国際的な取り組み

正興電機製作所【6653・東1】電力、水処理インフラ支えるシステムを開発再エネ・ロボットなど新分野開拓で売上倍へ
▲ソーラーカーポート蓄電システムと巡視点検ロボット

(提供=青潮出版株式会社