Abalance【3856・東2】太陽光発電を企画から保守まで一貫担当 ソーラーパネル製造の日系最大メーカー
光行 康明社長

 Abalanceは太陽光発電を主軸とした事業を国内外で展開している企業。発電システムの立案、企画から製造、建設、保守までのグローバルなサプライチェーンに強みを持つ。一方で2020年に子会社化したベトナムVSUN社の太陽光パネル製造販売が急拡大し業績を牽引している。世界的なCO2削減の流れをチャンスと捉え、再生可能エネルギーのグローバル企業への発展を目指す。

光行 康明社長
Profile◉光行 康明(みつゆき・やすあき)社長
1951年生まれ。74年日本興業銀行入行。2005年大新東専務取締役。09年シダックス取締役。13年SFPダイニング取締役副社長。18年Abalance代表取締役社長(現任)、WWB取締役(現任)、バローズ取締役(現任)、バローズエンジニアリング取締役(現任)。

21年6月期業績が大幅に拡大
太陽光パネル製造輸出が好調

 同社の2021年6月期連結業績は、売上高269億100万円(前期比302・8%増)、営業利益13億6100万円(同276・5%増)と躍進。株価も今年4月23日に7300円と上場来高値を更新し注目されている。

 同社は4つのセグメントで事業を展開する。「グリーンエネルギー事業」では、太陽光発電所の設計、製造、建設、運営や保守管理、コンサルティングを行うワンストップソリューションを形成。国内外の産業用案件だけでなく、個人住宅への太陽光発電導入も担当。また発電所運営の知見を活かし、自社保有の太陽光発電所や風力発電所による売電も行う。国内外で同社が関わった太陽光発電設備の容量は、20年12月現在で約3・4ギガワットにのぼっている(1ギガワットは原子力発電所約1基分)。

「太陽光パネル製造事業」では、太陽光パネルの製造と販売を行っている。この事業は20年に子会社化したベトナムVSUN社によるもの。VSUN社の生産能力は2・6ギガワットと世界16位で、日系太陽光発電用パネルメーカーでは首位だ。

「当社は太陽光関連の上場企業で唯一、メーカー機能を持っており、発電用パネル需要が増加し、市場で品薄な状況でも安定供給できます。また発電所設計に多い仕様変更などにも迅速に対応できるのが強みです」(光行康明社長)

 発電用パネルをベトナムで製造していることも追い風だ。欧州各国でのカーボンニュートラル宣言、米国のパリ協定復帰、中国でも2060年カーボンニュートラルが宣言されるなど、世界的に再エネ需要が拡大。パネル製造の世界シェア上位は中国企業が占めるが、米中貿易摩擦の下で、VSUN社からアメリカへの輸出が拡大。米政権の大規模インフラ投資の中に太陽光発電が含まれており、今後も業績拡大が期待されている。

 同社は他にも、ソフトウェア開発や販売を手掛ける「IT事業」、光触媒を用いた抗菌・抗ウイルス製品の製造販売を行う「光触媒事業」の4セグメントで事業を展開している。

Abalance【3856・東2】太陽光発電を企画から保守まで一貫担当 ソーラーパネル製造の日系最大メーカー

発電所保有でストック収入増
企業の自家消費型発電にも進出

 同社は00年にIT企業として発足し、07年にマザーズに上場。しかし翌年のリーマン・ショックによって業容を変更させ、太陽光発電事業と建機リースを展開するWWB株式会社を子会社化、グリーンエネルギー事業へと舵を切った。政府が主導したFIT(再生可能エネルギーの固定価格買取制度)を背景に業績を拡大させ、卒FITにも対応するほか、海外事業、蓄電池事業も手掛ける。太陽光発電関連企業のM&Aを続け、20年にはベトナムVSUN社を連結子会社化するなど、再生エネルギー企業として業容を拡大してきた。

「CO2削減は世界各国の政策の最優先項目。日本でも2050年カーボンニュートラル目標が設定されました。企業がこぞって再生可能エネルギー活用を進める今、太陽光発電を主体としたグリーンエネルギーで社会に役立つことが当社の使命です」(同氏)

 同社は21年6月期を「事業構造転換の過渡期」ととらえ、フロー型からストック型モデルへの転換を急ぐ。その第1ステップが自社保有太陽光発電所の拡大だ。現在保有発電所の出力は140メガワットだが、これを30年までに約7倍の1ギガワットまで拡大する予定。21年2月にはM&Aを通じて兵庫県神戸市の発電所の権利を取得し、3月には宮城県角田市の発電所が売電を開始するなど、着実に歩みを進める。

 また企業向けの自家消費型発電モデルである「PPAモデル」の推進にも注力。これは企業から敷地や屋根の上を借り、そこに同社が太陽光発電設備をセッティングして運用・保守を行うもの。発電した電気は電力会社を通さず企業に販売する。企業側はグリーンエネルギーの使用証明が得られ、設備部分をリースとすることで節税にも役立つ。同社は電力販売で安定したストック収益が見込める。

「企業のCO2排出に対しては世界的にチェックが厳しくなっています。PPAモデルを採用すれば、下請けの中小企業でもグリーンエネルギーの使用を証明でき、大企業から選ばれやすくなる。そういう時代がそこまで来ています」(同氏)

東南アジア各国で事業注力
再エネ分野のグローバル企業へ

 東南アジアを中心にした海外事業への投資にも力を入れる。ベトナムではVSUN社への設備投資でパネル工場を増設するとともに、現地とのジョイントベンチャーで巨大製鉄工場の屋根を利用した太陽光発電設備を建設し、売電事業を展開。またカンボジアではバイオマス発電と太陽光発電を併用したプロジェクトが進行中だ。台湾やマレーシアでも計画が進む。エネルギー貯蔵システムの開発、パネルのリユース・リサイクル事業も開始した。

「経済成長率が高く、電力需要の伸びが大きい東南アジアに製造拠点を持っていることは当社の大きな強み。日本企業が多く進出しているベトナムを中心に、太陽光発電事業を展開していく。そして欧米市場、アジアを見据えた再生可能エネルギー分野の中核的グローバル企業を目指します」(同氏)

(提供=青潮出版株式会社