みずほ

みずほフィナンシャルグループ(みずほ)のシステム障害が止まらない。抜本的な改善策を出せない状態が続いている事態を重く見た金融庁は、金融検査後の処分を出す前に、新たな業務改善命令を出すという「異例」の処分に出た。この処分はみずほにとって想像以上のダメージとなりそうだ。

8カ月で8回のシステム障害

みずほは2021年2月から10月にかけて、大小合わせて計8回のシステム障害を起こししている。中でも影響が大きかったのは、1回目と5回目の障害。最初の障害では、最大4318台のATMが停止した。ATM利用者のカードや通帳が取り込まれるという事態が相次いだ。

8月20日に発生した5回目の障害では、9時から9時45分まで全ての店頭取引を停止した。融資や外国為替の取引に至っては、11時58分まで取引停止の影響が続く有り様だった。顧客への周知の遅さも問題となった。システムが停止したのは8月19日の20時53分。翌20日の未明には、開発現場からシステム担当者に対し、「開店に間に合わない可能性がある」との連絡が来ていたにもかかわらず、ホームページに「お知らせ」を掲載したのは開店30分前だった。

2月、3月で4回の障害が相次いだ後、みずほは、外部の専門家で構成される第三者委員会を設置していた。調査報告書を受け取った6月には再発防止策を打ち出していたが、その後も障害が相次いでいる状態なのだ。

まさに前代未聞の「障害の連鎖」である。この事態を重く見た金融庁は9月22日、みずほ銀行とみずほFGに対して業務改善命令を出した。業務改善命令とは、銀行にとって、業務停止命令に次ぐ重い処分だ。

とはいえ、実は、金融庁による業務改善命令はもっと早いタイミングで出されていたはずだった。みずほが6月に再発防止策を公表したことを受け、金融庁では8月ごろに業務改善命令を出す準備を整えていたのだ。金融庁としても8月の業務改善命令で一連の事態の“幕引き”を図るつもりだった。

ところが、だ。まさに命令を出そうとしていた8月20日、みずほは5回目の障害を起こしてしまった。これには金融庁も激怒。その後も障害が相次ぐ状況に、金融庁は、「検査終了後の業務改善命令」という通常の処分では足りないと判断、「検査中の業務改善命令」という異例中の異例の処分をみずほに下した。

「みずほには任せられない」金融庁が激怒

この「検査中の業務改善命令」の内容はかなり重いものだ。

この行政処分では、みずほが計画しているシステム更改、更新の計画を抜本的に見直し、改めて金融庁に報告することを求めている。その上で「全般的な検証は継続する。その結果を踏まえて、改めて必要な行政対応について検討する」との注意書きまでつけた。

これまで金融庁は、みずほのシステム障害が起きるたびに行政処分を出してきた。ただし、あくまでみずほの「自主性」を尊重する形で進めてきたわけだが、今回の処分では「事細かな報告」を求めている。「箸の上げ下ろしまでチェックする」(みずほ幹部)レベルで事態の打開を図ろうとしているのだ。「もう、みずほに任せてはおけない」との意思の表れだと言える。

ここまで金融庁が怒っているのには理由がある。もちろん障害の連鎖に終わりが見えないことも大きな要因だが、それ以上に「みずほは金融庁をなめている節がある」(金融関係者)からだ。このことは6月のある出来事からも垣間見える。

6月に再発防止策を発表したことは先に述べたが、同時にみずほは、(みずほ銀行の)藤原弘治 代表取締役頭取の退任および、予定していた会長就任も取りやめる方向で動いていた。藤原頭取をクビにすることによって責任を取ったことにし、一連の事態の幕引きを図ろうとしていたわけだ。

ところが、「そもそもみずほは金融庁とコミュニケーションがとれていなかった」(みずほ幹部)。この人事に関しても、金融庁との間で十分なすり合わせが行われていなかった。金融庁は激怒、藤原頭取の退任にストップをかけた、というわけである。

「金融庁にしてみれば、障害に対するしっかりとした改善策も打ち出せていないのに、頭取1人をクビにしてお茶を濁そうとするなんて、『ふざけるな』という思いだったのだろう。要は金融庁をなめるなということだ」とある金融関係者は解説する。