G7で際立つ日本の特異性、今後1年以内に1ドル=120円も
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G7で際立つ日本の特異性、今後1年以内に1ドル=120円も

みずほ銀行 チーフマーケット・エコノミスト / 唐鎌 大輔
週刊金融財政事情 2021年10月26日号

 国際通貨基金(IMF)は10月12日に世界経済見通しを発表し、世界経済全般にわたって7月の数値から成長率を引き下げた。今回の発表のサブタイトルは「パンデミック中の回復~公衆衛生の懸念、供給混乱、物価圧力~」だが、ここで挙げられた論点は相互に連関している。「デルタ変異株の感染拡大により世界の供給網が寸断され、需要超過の状況が極まって物価が上昇している」のだ。

 7月予想との違いを詳しく見てみよう。先進国に限ると、2021年の経済予測は前年比5.6%増から同5.2%増へ下方修正されている。主因は米国(同7.0%増から同6.0%増へ1ポイント減)の下方修正だ。次いで、ドイツ(同3.6%増から同3.1%へ0.5ポイント減)、日本(同2.8%増から同2.4%増へ0.4ポイント減)の影響が大きい。

 注目すべきはその理由である。米国は21年4~6月期に関しては大幅な在庫取り崩し、7~9月期に関しては消費減速が指摘されている。在庫取り崩しは供給制約の影響も当然あろうが、力強い需要の結果という面もある。国内製造業の力が強いドイツに関しては、生産活動全般にわたって部品不足が響いている。片や、日本は「7月から9月までに発せられた4回目の緊急事態宣言の影響」が指摘されており、世界経済が直面するリスクとは別の次元で悪化していることが分かる。

 日本の特異性は、IMFの今年4月予想と10月予想の予測修正幅を比較するとより明確に分かる(図表)。予測修正幅について、21年分を①、22年分を②とした場合、その合計がマイナスになっているのはG7諸国中、日本だけだ。つまり、世界はアフターコロナ時代の悩み(供給網の寸断やインフレ高進、需要超過など)を抱えているのに対し、日本だけはまだコロナ禍に苦しんでいる。

 年初から円独歩安が進んでいるのはこうした実体経済の結果であり、恐らく今後も同様の構図が続くと筆者はみている。欧米経済は「高いワクチン接種率」を手段、「経済正常化」を目的と設定し、その戦略が奏功した。他方、日本は高いワクチン接種率が目的化しており、経済正常化はいつまでたっても実現しない。経済正常化に向けたロードマップもない。岸田文雄政権ではそうした硬直化したコロナ対策が修正されることを期待したいが、先行きは不透明だ。

 世界経済は一歩も二歩も先を行っている。円に対する投資妙味を見出すにはあまりにも厳しい環境が続くと考え、今後1年のうちに1ドル=120円到達もあり得ると筆者は考えている。いくら日本が回復しても、為替は常に「相手がある相対的な話」ということを忘れてはならない。

(21年10月15日時点の分析による。本欄はあくまで個人的見解であり、所属組織とは無関係である)

G7で際立つ日本の特異性、今後1年以内に1ドル=120円も
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