日本システム技術【4323・東1】
平林武昭社長

 日本システム技術(JAST)は、教育・医療・金融など幅広い分野でパッケージソフトの自社開発、運用・保守などを行う企業だ。特に大学向けの一元管理システム「GAKUENシリーズ」はシェア30%強とトップを走る。2021年3月期は同シリーズの新製品RX発売、医療ビッグデータ事業の売上高更新など好材料を背景に10期連続の増収、6期連続の増益となった。22年3月期も好調を維持し、売上高は195億円、営業利益は13億3000万円を目指す。

平林武昭社長
Profile◉平林武昭(ひらばやし・たけあき)社長
1938年生まれ。IHI(旧石川島播磨重工業)に勤務した後、73年日本システム技術を設立、代表取締役に就任。2005年、代表取締役社長執行役員を経て、20年に代表取締役社長に就任(現任)。

教育・医療・金融など
知見活かし自社商品を開発

 日本システム技術は1973年、当時ハードウェアが重要視されていた中「これからはソフトウェアの時代」と確信した平林武昭社長が創業。システムエンジニアリング業界の草分け的存在である。

 特徴のひとつは、完全独立系企業という点だ。システム開発会社の多くは大企業の系列に属するが、同社は創業以来一貫して独立を保ってきた。こういった立ち位置もあり、特定の分野に縛られることなく様々な業界や企業にサービスを提供。これまで金融・通信・流通・製造・教育・医療・官公庁など幅広い分野で実績があり、「特定分野が不況になった場合も他分野で補完できるのが強み」(平林武昭社長)という。

 もうひとつの特徴は、自社ブランド製品を多く持つ点だ。システム開発会社では、取引先のニーズに合わせて取引先のみに特化したシステムを受託開発する場合が多い。一方で日本システム技術は、それぞれの業界で培った知見や実績を活かして自社独自のITサービスを開発している。

「ソフトウェアの受託開発を売上の基盤としながらも、自社ブランドの開発を進めてきました。自社ブランドには多くのメリットがあります。まず社会のニーズ・マーケットを創り出し、その主役になれること。また価格決定権も当社にあります。さらにカスタマイズがないため、予算が限られたお客様でも導入しやすく、当社にとっても収益性が高い」(同氏)

主軸のGAKUEN事業
大学・短大417校が導入

 2021年3月期の売上高は前期比4・3%増の187億8900万円、営業利益は25・3%増の12億1600万円と10期連続の増収、6期連続の増益となった。同社の事業は大きく分けて、①顧客の個別ニーズに合わせオーダーメイドでソフトウェアの受託開発などを行うソフトウェア事業、②主に教育機関向けのパッケージソフトを手掛けるGAKUEN事業、③ハードウェア・ソフトウェアの販売などを行うシステム販売事業、④レセプトの自動点検・分析・医療費通知のサービスを行う医療ビッグデータ事業の4つとなる。

 事業別の売上高比率でみると①ソフトウェア事業は67・5%、②GAKUEN事業は17・1%、③システム販売事業は7・8%、④医療ビッグデータ事業は7・6%とソフトウェア事業の割合が大きい。一方営業利益率でみると、新製品、導入支援、保守サービスなどの好材料に支えられた②GAKUEN事業が27・0%と最も高かった。

 GAKUEN事業は1994年、大学事務の効率化を目的とした自社ブランド製品「GAKUENシリーズ」の発売から始まった。

「どの学校も必要とされるシステムはほぼ同じなのに、自己流で運営していて効率が悪く、その現状を変えたかった。先生の要望や学生のニーズを聞き、少しずつ内容を増やしました」(同氏)

 現在は入学から卒業までの学校、学生、教員のすべての業務を包括したパッケージソフトが完成している(左図参照)。生徒の履修登録や課題提出、掲示情報の閲覧や就職セミナーの案内、授業の出欠管理まで、ありとあらゆる情報・手続きが網羅され、スマホからのアクセスも可能だ。

時流に合わせてラインナップの強化も進める。2018年7月には、eラーニング機能の付いた「UNIVERSAL PASSPORT RX」を発売。既存客からの反響が大きく、載せ替え需要を取り込んだ。また20年9月には学生数1000名以下の小規模な学校にも導入を拡げたいと、サブスク形式でRXシリーズを利用できる「GAKUENサブスクリプション」をリリース。大学だけでなく、専門学校からの問い合わせも多かったという。

 こうした迅速な開発もあり、導入校数は年々上昇。同社によると国内の大学・短大の総数は1114校となるが、21年5月末時点でうち417校がGAKUENを導入。シェアは30%強と、同分野のけん引役を担っている。

▼大学の業務を包括的に支援する

日本システム技術【4323・東1】

少子化見据えアジア進出
AIなど新商品開発も

 同社は「GAKUENシリーズ」の他にも、金融機関向け情報系統合システム「BankNeo」、医療ビッグデータ事業では保険者向けトータルサービス「JMICS」など様々なブランドのソリューションを手掛けている。また1980年代から少子高齢化の日本市場に代わるアジア市場の重要性に着目し、シンガポール、タイ、マレーシア、中国で会社設立や現地企業の子会社化を推進。国内外でのグループ企業は、現在12社にのぼる。

「GAKUEN事業では、AIや暗号化技術を活用した新商材の開発、社会人教育への参入を踏まえた準備も進めています。また成長株の医療ビッグデータ事業では、データ利活用サービスの拡大、BtoBtoC向けサービスの強化を目指します。今後も社会貢献を第一目的に、いろいろな製品開発に取り組み、事業を拡大していきたい」(同氏)

 同社では各ブランド事業のトップシェア、新サービス・新商材の拡大などを目標に掲げ、2022年3月期は売上高195億円、営業利益13億3000万円を目指す。


2021年3月期 連結業績

売上高187億8900万円前期比4.3%増
営業利益12億1600万円同25.3%増
経常利益13億1000万円同28.3%増
当期純利益5億7800万円

2022年3月期 連結業績予想

売上高195億円前期比3.8%増
営業利益13億3000万円同9.3%増
経常利益13億6000万円同3.8%増
当期純利益8億2000万円同41.7%増

※株主手帳11月号発売日時点

(提供=青潮出版株式会社