資産運用の投資先として、これまでは株や債券・不動産・金などがポートフォリオの中心を占めてきた。しかし近年、技術革新によりブロックチェーンが確立され、仮想通貨をはじめとするデジタルアセットの存在感が増している。

過去には取引所で消失事件が発生するも価格が急騰

老後の資産防衛にデジタルアセットは持つべき?
(画像=tippapatt / stock.adobe.com)

仮想通貨を巡っては、過去数年間にわたって大手取引所がビットコインを消失させたり、外部からの不正アクセスで流出させたりとネガティブなニュースが相次ぎ、投資先としての信頼性に難点があった。

しかし、直近1年間においてはその価格が急騰している。代表的なデジタルアセットであるビットコインは、2020年3月の60万円台から2021年3月には1ビットコイン=600万円を超える水準で推移している。

企業での仮想通貨の利用が拡大し、投資信託も登場

短期的での価格の急騰もさることながら、米国では新興企業が相次いでビットコインを購入している。また、仮想通貨を自社製品購入の決済手段として認める動きも見られる。

こうしたデジタルアセットを積極的に活用する企業の動きを評価し、仮想通貨の値上げ圧力が強くなっているといえるだろう。

また、資産運用への活用の動きも加速している。実際にビットコインを対象とした投資信託「パーパス・ビットコインETF」も登場し、2021年2月にはカナダのトロント証券取引所に上場した。

デジタルアセットの配分は1~5%が目安

資産運用において、新しいプレイヤーとして勢いを見せるデジタルアセットとどのように向き合うべきなのか。

一般的に老後の資産防衛策として、ポートフォリオをリスクの高い株式から債券へシフトさせることが考えられる。また、現金比率を上げて、資産の目減りを最小限に抑えることがセオリーだ。

一方で、資産の大半を現金として保有することはインフレに対する脆弱性が高まることが考えられる。折しも、コロナ禍による経済の落ち込みに対処すべく、世界各国の中央銀行は大規模な金融緩和に乗り出している。市場に供給される通貨量が増えれば、インフレへの警戒感が高まる。

老後まで20~30年の時間が残されている場合は、インフレに備えて株や金など現物資産への投資割合を引き上げる選択肢もある。しかし、老後を間近に控えるシニア世代にとって、この選択肢は大きなリスクが伴う。

従来、インフレヘッジとして金が代表的な資産運用先の1つであった。

ボラティリティーが10%の場合、金は資産全体の約9%とするのが最適とされている。同様にデジタルアセットをインフレヘッジとしてポートフォリオに組み込む場合、ポートフォリオの1~5%が1つの目安と考えられている。

仮にポートフォリオの5%をビットコインに配分していた場合、直近1年で約10倍の値上がりを記録したことにより、資産の増加に大きく貢献していただろう。

一方、ポートフォリオを形成する他の資産に大きな変化がなければ、デジタルアセットのポートフォリオに占める割合が30%を超える水準にまで達する計算となり、ポートフォリオ全体でみるとリスク資産の割合も高まってしまうことになる。

リスクを適切に管理するには、デジタルアセットが急騰した場合、資産の一部を売却し、ポートフォリオ全体に占める割合が常に1~5%に収まるようにリバランスすることが重要だ。

デジタルアセットは分散投資にも貢献

投資先としてのデジタルアセットの存在感が高まる中、株や債券・不動産・金といった伝統資産以外の資産としてポートフォリオに組み込むことは、分散投資でリスクを管理する上でも1つの戦略となるだろう。

ただし、足元ではデジタルアセットのボラティリティーは非常に高くリスクが十分に見通せないため、ポートフォリオに占める割合は控えめにした方が良い。また、価格が急落した場合の損失を最小限にとどめることが大切だ。逆に価格が急騰した場合にはポートフォリオのリバランスも忘れないようにしよう。

老後の資産防衛にデジタルアセットという、新たな投資先への不安を完全に払しょくすることはできないかもしれない。

しかし、企業での商品購入や仮想通貨の投資信託の開始など、デジタルアセットは着実に浸透してきている。資産運用の選択肢として上手に活用すれば、分散投資の機能を適切に果たしてくれるだろう。

(提供:大和ネクスト銀行


【関連記事 大和ネクスト銀行】
大切なのは「お金より時間」? お金の管理を「時間」に応用しよう
個人投資家の強みを活かす ! 機関投資家が参入しづらい銘柄の特徴
知っているとお得な「株主優待知識」をおさらい ! 全4選
落語で学ぶ「お金にまつわる」3つの教訓
富裕層が米ドルを選ぶ理由「殖やす」以上に大切なコト