人出が戻った10月、鵜飼の観覧船の乗客は前年比2割増
(鵜飼観覧船事務所「長良川鵜飼観覧船・乗船人員」)
三井住友DSアセットマネジメント 理事・チーフエコノミスト / 宅森 昭吉
週刊金融財政事情 2021年11月9日号
岐阜市の長良川の鵜飼(うかい)は、通常は毎年5月11日に始まる。今年は新型コロナウイルスの影響で、41日遅れの6月21日に開幕し、例年どおり10月15日に閉幕した。緊急事態宣言や大雨により、中止日数は昨年の55日を超え、過去最多の90日に及んだ。
鵜飼観覧船事務所によると、今年の観覧船の乗客数は昨年を下回り、過去最少の1万3,910人(前年比9.1%減)。定員を大幅に減らして運航したほか、5月と9月は全日で運航を中止したため、乗客はゼロだった。
ただ10月は、一昨年の水準は下回るものの、前年同月比は約2割増になった。これは、東京などで緊急事態宣言が解除された10月1日以降の「コロナ禍からの回復」の動きを確認できる指標の1つだといえる。
緊急事態宣言の解除などが進んだのは、足元で新型コロナの感染拡大が落ち着いてきたからだ。全国の新規感染者数は10月7日の972人以降、1,000人を下回っている。感染拡大の「第5波」では、8月13日から9月1日まで13回見られた2万人台に比べ、大幅に減少した状況が続いている。
減少の要因ははっきりしないようだが、順調なワクチン接種は主因の1つだろう。首相官邸によると、接種完了者が10月28日には70.9%と全人口の7割超になっている。
ワクチン接種が完了した割合をG7諸国と比較すると、9月22日にワクチン接種完了割合は米国を抜き、10月13日にドイツを超えた。さらに、17日に英国、19日にフランスを上回り、G7ではカナダ、イタリアに次いで日本は3位に浮上している(10月29日更新のNHKウェブサイトより)。
景気ウォッチャー調査でも、観光やレジャーに関する現状や先行きの判断が回復していることが分かる。サービス関連のうち「旅行・交通関連」の現状判断DIを見ると、6月の43.8、7月の46.7から、感染拡大で8月は22.9まで低下していた。それが9月には、37.8まで回復した。先行き判断DIは9月に67.4と過去最高水準に達している。
同様に「レジャー施設関連」の現状判断DIは、6月の44.0、7月の54.2から8月は28.7まで低下したが、9月には46.2まで回復した。9月の先行き判断DIは62.5で、2006年2、3月分に次ぐ過去3番目の水準だ。
ワクチン接種の状況や景気ウォッチャー調査の結果を見ても、10月の観光地やレジャー施設の人手に関するデータはポジティブなものとなりそうだ。鵜飼観覧船の乗客数と同様、コロナ禍からの回復を示すことになろう。
(提供:きんざいOnline)